再会の季節 その4
一歩外へ出てみると、店内で冷やされた体が少しずつ温かさを取り戻していく。空を見上げると、雲は多いものの、柔らかな陽射しを感じることができた。
頼まれていたスイーツも買えたし、くじを引くこともできた。私はウキウキした気分で手提げ袋を軽く持ち上げる。スイーツはコンビニでもらった手提げ袋に。クマのストラップはポシェットに仕舞ってある。まさかこんなにいい賞が当たるなんて。次に美幸に会ったら報告しよう。
ストラップ、何につけようかなあ。バッグもいいけれど、やっぱり携帯かな。でも、ウサギもつけてるし、かさばるかなあ。
ん?。
そこまで考えて、立ち止まる。
携帯。……携帯?何かが頭をよぎる。
とりあえずポシェットから携帯を取り出してみる。濃いピンク色の携帯には特に変わった様子はない。携帯にぶら下がっている白いウサギもいつも通り可愛らしい。お腹の辺りを人差し指でちょんと押して揺らしてみる。
……あっ。
指だ。そうだ、指。あの整えられた爪。それに、あの後ろ姿。
さっきの杖を使って歩いていた人と、前にお城で偶然出会った彼が重なる。
でも、どうして。たしかによく似ているけれど、お城で出会った彼は杖を使わずに歩いていた。「普通」という言葉が正しいのかは分からないけれど、彼は一人で普通に歩いていたんだと思う。それに彼の方から声をかけてくれたのだから、目が見えにくいとは考えにくい。
やっぱり、別人なのかな。
結局自分では答えに辿り着けないまま、帰り道を進んでいく。なんやかんやで帰りが遅くなってしまった。お母さんが待っている。
あれ?
頭の中を整理しきれないまま歩いていると、遠くに一人で歩いている人が見える。
さっきのあの人だ!
遠くてはっきりとは見えないけれど、服装は同じに見えるし、細いものが、たぶん杖が動いているのも微かに捉えられる。
どうしてまだこんなところにいるのだろう。私があの人とさっき会ってから、もう20分は経過しているはず。道に迷ってしまったのかな。大丈夫なのだろうか。
心配する気持ちは決して嘘じゃない。なのに。それなのに。それよりも。
どうしても、答えが知りたい。
その一心で、私は走り出していた。
「あのっ!すみませんっ」
必死な思いでその人に追いついて、息も整わないうちに言葉を続ける。
「何か、お困り、ですかっ?さっき、も……この辺りで、お見かけっ、したので」
全速力で走ったせいで、なかなか息が整わない。膝の辺りに手をやり、前のめりな体勢で何度も大きく深呼吸する。え?と呟きながら、その人がこちらを振り返る気配を感じる。
「えっと、ちょっと道を歩く練習をしていただけなので大丈夫です。ありがとう、ございます」
この声。やっぱり。
やっと息を整えてゆっくりと顔を上げると、目の前にいるのは。まぎれもなく。
あの日、満開の桜の前で出会った彼だった。




