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再会の季節 その2

 コンビニに行くだけだし、上着は要らないか。4月も下旬になると、服装に悩む日が増えてくる。午前中はまだ風が冷たく感じる時もあるけれど、日中は長袖の袖をまくりたくなる時もある。今日は夕方から雨だから既に曇っているけれど、コンビニに行って帰ってくるだけならそれほど時間はかからないし、上着がなくても困らないだろう。お母さんから預けられたハガキがちゃんとポシェットの中にあるのを確認してから家を出る。

 コンビニまでは徒歩7分といったところで、住宅街の角を曲がって大通りに出る。あとはひたすらまっすぐ歩けば、右手にコンビニが見えてくる。この辺りは車通りは多いけれど、歩いていて人とすれ違うことは少ない気がする。犬を散歩させている人には時々会うけれど、車があるなら車移動が断然便利な場所だ。

 そうだ、せっかくだから美幸と話してたくじを見てみよう。たしかあのコンビニでも取り扱いがあったはず。

 そんなことを考えながら通りを進んでいると、少し離れた先に人が歩いているのが見える。白いシャツの背中の左右から何か細いものが見え隠れしている。距離が縮まっていき、より鮮明に見えてくる。無地のシャツだと思っていたけれど、淡いグレーのストライプ柄だった。そして、その人の左右から見えていた細いものの正体は、杖だった。杖を肩幅より少し広い範囲で左右に振りながら歩いている。たしかあれは「白杖」と言って、目が見えにくい人が歩く時に使うものだ。

 私の歩く速度がとりわけ速いのではなくて、きっとその人の歩き方がゆっくりなのだろう。どんどん距離は縮まっていく。たぶん男性だろうけれど、私と10センチくらいしか背丈が変わらない。

 どうしようかな。

 声をかけるか一瞬迷ったけれど、後ろから急に声をかけて驚かせてしまったら危ないし、歩道は広めで人が二人並んでもぶつかる心配はない。杖の動きに注意しながら、その人の脇を通り過ぎる。

 ふと、その人の左腕が目に留まる。ピシッと前に伸ばされた腕が力強く杖を動かし、決まった速度で繰り返し地面に弧を描く。杖に添わされた人差し指も爪の先までまっすぐ伸びている。整えられた爪が日光に照らされて、柔らかな光を帯びている。

 目が見えにくい人って、こんなに美しく歩くんだ。

 無事に通り過ぎることができた安心感よりも、初めて見たその光景に心を奪われたドキドキ感の方が強かった。思わず振り返りそうになったけれど、そんなことをしたらこの人が驚いてしまうかもしれない。そう自分に言い聞かせて、まだ落ち着かない心をごまかすように早歩きで先を急いだ。

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