眩しすぎる夏 その6
夕日で真っ赤になった空を背に、カラスが2羽、並んで飛んでいく。少し涼しくなった風が、私の髪の束をスッとさらっていく。
「今日はありがとう」
前を向いたまま、彼がポツリと呟く。スーッ、スーッと、杖が滑らかに弧を描く。
「私こそっ、ありがとう、ございます」
私も前を向いたまま、答える。
「・・・今度は」
風でどこかへ運ばれてしまいそうな小さな声で、彼が続ける。
「今度は君と、映画、観たい」
その言葉に、胸があったかくなる。その温かさが外に溶け出さないように、そっと胸の辺りを手で押さえる。
「・・・私も、です」
夕日と同じくらい真っ赤になった頬。涼しい風が当たって、ひんやりと心地いい。・・・でも、何か足りない。
私の左手がほんの少し、前へと伸びる。その先にある、彼の右手を追い求めて。あと少し。でも、やっぱり・・・。
「・・・繋ぐ?」
「えっ」
気付いたら、彼がこちらを振り向いている。歩く速度を緩めて、静かに立ち止まる。
「どうする?」
頬が、もう夕日では隠しきれないほどに赤く染まる。二人の手の間に、熱を帯びた風が舞う。
「・・・いい、んですかっ」
彼の顔を直視できずに、俯いてしまう。
「うん。いいよ、勿論」
そう言われた途端、ドクドクと熱いものが、心臓から指先まで一気に流れていく。
「・・・」
少し震える手を、彼の方へと伸ばしていく。そーっと柔らかく握った彼の手は、ひんやりと冷たくて。私のおかしすぎる熱が伝わってしまう。そう思って、すぐに離そうとしたけれど、キュッと彼に握られる。そのまま、ゆっくりと歩き出す。
「夕日が、綺麗だ」
彼の言葉が、ヒュッと風のように耳の奥へと入り込む。くすぐったさに、思わず身震いをする。
歩き続ける私たち。手のひらで溶け合った体温が一つになって、お互いの体へと流れていく。せっかちな星たちが、遠くの空で囁くように瞬いていた。




