待ち侘びた季節 その5
あれから、2時間。時計の針を睨みつけてみる。そんなことをしたって過ぎてしまった時は戻らない。それは分かっているけれど、どうしようもない衝動に駆られて、再び針を睨む。
床には、足の踏み場がないほどに服が散らばっている。あまりにもひどい有様に、目がチカチカして頭までクラクラしてくる。
どうしよう、明日の服。
いくら考えても正解が導き出せない。服をあらゆるパターンで組み合わせてみるけれど、どれもどこかしっくり来ない。思い返してみれば、今まで恰好がラフすぎた。前回だって、そう。彼に会えるかもしれない、そう思って家を飛び出したのに、スニーカーにジーンズって、どういうこと?考えるだけで、歯をグーッと食いしばってしまう。握り拳にもググッと力が入る。
・・・確実に会えると分かっていたら、もっと可愛い恰好をしたのに。
確実に。・・・確実に?
来週、この時間、また来ます。
もう数えきれないくらい頭の中で繰り返された、私の心を射抜いて離さないあの言葉が、またしても蘇ってくる。
そうだ。今回は今までとは違うんだ。確実に、彼に会える。彼と、私。二人だけの約束。
過ぎてしまったことでメソメソしている場合じゃない。過去のことより、未来のこと。そっちに目を向けた方が、確実に道は切り開かれる。そう、信じたい。
「ちょっと。何なの、この部屋」
「うわぁっ!!」
突然すぎるお母さんの登場に、悲鳴にも似た声が出る。
「ちょっ、びっくりするじゃない」
「それはこっちの台詞だよっ!ノックくらい、してよ・・・もう」
まだ心臓がバクバク言っている。体に悪すぎる。
「あれ、何しに来たんだっけ?まぁとにかく、もうすぐご飯だから。片付けときなさいよ、ここ」
「・・・はい」
諦めよう。お母さんに何かを求めるのは。
背中越しにパタパタと歩き去る音を聞きながら、一枚、一枚、服をたたんでいく。次のワンピースをひょいっと拾い上げる。
あ。・・・これ、いいかも。
自然と、彼の笑顔が浮かんでくる。二人で並んでいる姿を、簡単に想像できる。
悩みすぎると、出口のない迷宮に入り込んでしまうんだね。ありがとう。
そう言いたくなって、扉に近づく。開きっぱなしになっている扉から、お母さんの陽気な鼻歌が、香ばしい匂いに乗せられて舞い込む。
・・・生姜焼きだ。
匂いに導かれるまま、部屋の外へと歩き出す。まだ散らかったままの服。つけっぱなしの電気。何もかもを置き去りにして、ただひたすらに。光さす場所へと、歩き続ける。




