表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/83

69話 不完全なる王の証

 ひとまずの休息が訪れる。

「スズカ様、こちらを」

 ぬらりひょんがスズカへ歩み寄り、懐から一つの巻物を差し出した。


「百鬼夜行の巻物か」

 差し出された巻物をスズカが受け取った。

「それは王が持つべき物。スズカ様がお持ちください。本来であれば、大嶽丸様から正式に継承されるべきでしたが、このような形になり、申し訳ございませぬ」


「いや、構わん。……確かに、受け取った」

 スズカはジッと巻物を見つめ、懐へと仕舞い込んだ。

「スズカ様が百鬼夜行を行えるって事?」

 フェリスが首を傾げた。


 その問いに、静かにハクオウが頷く。

 赤い月の夜、魔力が活性化し妖怪が狂暴化する。その現象が百鬼夜行。遥か昔、その現象を封印したのが、百鬼夜行の巻物。

 言ってしまえば、アーティファクトみたいな物だろう。


 しかし、その様な現象を起こせる物は危険ではないだろうか。

「ご安心くだされ。アステル殿」

 アステルの不安を察知したのか、ハクオウが真っすぐと、アステルを見つめた。


「力がある者……王が扱えば、百鬼夜行で現れるのは、その者に従う者共です。王に力を貸し、王に忠誠を誓う者。それは、貴女様が扱う。召喚術と同じような物です」

「召喚術と同じ?」

 ハクオウが頷く。


 召喚術は異世界の生物と契約し、召喚することで力を借り受けられる。

 術者の肉体を強化、召喚獣の属性魔力を扱って魔術を撃つ事が出来る。

 しかし、それには無属性の魔力が必要であり。無属性の魔力を持たない、異世界の生物は召喚術を扱えない。

 百鬼夜行の巻物は同じ世界出身に限られるが、それを可能にする物という訳か。


「妾もぶわっと、アステルのように魔術を撃てるのか?」

「鬼属性はそもそも肉体強化に特化した属性魔力なので、魔術は厳しいと思います」

「なんだ、つまらんな……」

 アステルに否定され、不貞腐れるようにスズカが呟いた。


「魔術は扱えませぬが、儂の力を扱えるかと」

「ぬしの力をか!?」

「ええ。儂を貴女様の百鬼夜行と認めてくださるのであれば」

 不貞腐れていたスズカの表情が、一気に輝きを増した。


 ハクオウの力。ぬらりひょんの力は、認識疎外または認識改変。

 当たり前が当たり前じゃなくなり、当たり前じゃないものが当たり前になる。

 先のハクオウとの戦いで、その力が強力である物は知っている。


「もちろん、ぬしは妾の百鬼夜行だ! その力がなくともな」

 スズカは懐から巻物を取り出し、ぬはーと、掲げ見上げた。

「ありがたきお言葉でございます」

 ハクオウは頭を下げた。


「しかし、お気をつけくだされ。無限に力を貸し与える事は出来ませぬ。制限があることをお忘れなく」

「制限?」

 スズカが首を傾げた。


「その力に合うように身体が形成される。それが種族というものです。他種族の力を使いすぎるのは身を滅ぼすでしょう」

「……なるほどな。うむ、肝に銘じておこう」

「そして、その巻物は不完全なものです」


「不完全?」

 スズカが巻物を広げた。そこには、多種多様な妖怪が描かれている。しかし、その絵は途中で途切れ、紙が千切れていた。

「千切れた部分は茨木童子が持っております」

「茨木童子。……あのたわけか」


 その名を聞き、小さく舌打ちをした。

「完全な物にするには、そのたわけから奪い返してください」

「わかった」

 スズカは再び巻物を懐へと仕舞い込んだ。


 先ほどまでみんなの怪我の治療をしていたフェリスが、うへぇ。と、獣耳と尻尾を垂らしながらアステルの元へ近付いた。

「お疲れ様」

 アステルがフェリスの頭を優しく撫でた。


 垂れ下がった尻尾が緩やかに、左右へと揺れ動いた。

「うむ。行こう」

「申し訳ありませぬが、儂はここで一休みさせて頂きたく存じます」

「そうか?」


「ええ。見ての通り、老いぼれ。若さには勝てませんな。何かあれば、その巻物で呼び出してくだされ。すぐに馳せ参じましょう」

 うむ。と頷き、スズカが歩き出した。

 アステル達もその後ろを追って歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ