表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/82

67話 仇を越え、忠を継ぐ

 シリウスは逆手で持つ鞘でぬらりひょんの脇腹を強打し、腹部へと蹴りを入れた。

 強い衝撃を受け、大きく後退りをする。

 立て続けにスズカが迫り、刀を振り下ろした。しかし、その刃はすり抜けていく。

「だろうなぁ!」


 振り下ろした勢いそのまま、スズカは身体を回し蹴りを入れる。その蹴りは透過することなく、胸部へと当たり、その老体を後方へと吹き飛ばす。

 フェリスが数発、風の刃を撃つ。その刃は数発すり抜け、数発ぬらりひょんの身体を傷つける。


 ぬらりひょんの存在は認識する事が出来た。姿を見る事が出来、攻撃や防御と言った物理的干渉が可能になった。しかし、それはアステル達の認識。

 ぬらりひょんの認識がまだ生きている。


「年寄り相手に……手加減がないですのう」

 ぬらりひょんは真っすぐ、態勢を立て直した。

「なんだ? 手加減してやろうか?」

「ふっ……御冗談を、頼んでもしないでしょうに」


 スズカの軽口にぬらりひょんが返す。

「どうだろうな」

 静かに、ぬらりひょんを見捉える。


 シリウスがぬらりひょんへと斬りかかった。

 一振り目は身体をすり抜け、二振り目は刀で受け止める。力と力がぶつかり合い、刃を押し付け合う。

「小娘よ。なぜ、儂を感知できた?」


 正しく認識する前から、シリウスはある程度は感知出来ていた。

 何もない空間からの朧気な斬撃。それを察知することが出来ていた。


「迷いがあるから」

「迷い……?」


 シリウスの言葉に、ぬらりひょんが困惑を浮かべる。

「あなたは強い人。私なんかよりも遥かに強い」

「買い被り過ぎじゃ。透過が無ければとっくの昔に斬られている」

「そうじゃないよ。あなたの心は強い。……幻術は既に解けているんでしょ?」


 シリウスは力を緩め、押し合う刀を下した。

 ぬらりひょんは斬りかかる事なく、刀を下す。


「いつから、気付いておった?」

「気付いてないよ。ただ、そう感じただけ」

「どういう事だ?」

 スズカが首を傾げた。


「スズカ様に斬られる為?」

「妾に?」

 シリウスの言葉に、スズカが目を見開く。


 しかし、その考えは間違いではないのかも知れない。

 幻術のせいとは言え、前王であり、スズカの父を斬った。仇なのだから。


「ええ? だったら、透過とかめんどくさいことしないでよ」

 フェリスが肩を落とした。

「すまんな。それが妖怪の性なのじゃ」

「妖怪の性?」


 アステルが首を傾げた。そして、ぬらりひょんが頷いた。


「妖怪は自身より強き者を見定める。敬愛する主君と言えど、それは変わらない」

「妾を見定めたという訳か?」

「ええ。ご無礼をお許しください。そして、その刀で儂を斬ってください。貴女様にはその権利がある」

 静かに、ぬらりひょんがスズカを見つめた。


 静寂。先ほどまでの喧騒が嘘だったかのように、静まり返る。

「罪の意識があるというのなら、生きて償うべきだよ」

 静寂を切り裂くように、シリウスが口を開いた。そして、自身の手を見つめる。


「大切な主君を自身で斬るという事は、耐えがたいものだと思う」

 見つめた手をギュッと握り、アステルを見つめる。そして、ぬらりひょんへ視線を移した。

「斬りたくて斬ったわけじゃない。私達はそれを知っている。それなら、生きて償い。大切な主君が残したものを支えるべきだと思う」


 ぬらりひょんは一瞬俯き、スズカを見つめる。

「しかし、それでスズカ様は納得するのでしょうか?」

 その言葉に、スズカはぬはは。と笑った


「なんだ? もう老化が始まっているのか? 妾は確かに言ったぞ。妾の元へ戻ってくる気はないかと」

「よろしい、のでしょうか?」

「うむ。ぬしの煩い小言はうんざりだが、ぬしの力が妾には必要だからな。ぬらりひょん……いや、白翁よ。この名を返そう。そして、妾の元へ来い。その老体が朽ちるまでカグラの為に働け。それが、妾が求める懺悔だ」

 

「老体が朽ちるまで……これは、手厳しいですな……ですが、その名を拝命致しましょう。この白翁、貴女様を主君として認め、この老体が朽ち果てるその時まで、貴女様とカグラの為に身を費やしましょう」


 ぬらりひょん改め、白翁は静かにその頭を下げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ