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62話 百鬼夜行

 森の中を歩き続ける。

 のっそのっそとレンガの力強い足音が聞こえる。

 グルルと喉を鳴らしながら、スズカの後ろ。最後尾を歩く。


「シリウスもあんな感じになれるの?」

 白い長髪、白い犬の耳。白いふわふわの尻尾が生える少女シリウスを見て、フェリスが聞いた。

「え、無理だよ」

 同じ犬系統とは言えど、レンガは送り犬。そして、シリウスは犬の亜人。種族が違う。


「そうなんだ」

 フェリスは歩き続けた。


 ガサガサと物音が響き、木々の間から付喪神達が姿を現した。

 アステル達が武器を手にしようとした時、のっそのっそと。後ろからレンガが間を縫うように、先頭へと出た。

「うむ、送り犬の力を見せてもらうとしよう」

「グルル……」


 スズカが腰に携える刀の柄から手を下した。

 それを見て、アステル達も手を下す。


 付喪神の群れとの戦闘は一方的なものだった。

 レンガの鋭い爪が切り裂き、薙ぎ払うように蹂躙していく。

 月の下では、鬼を凌駕する。以前、スズカが言った通り、その力は鬼よりも強く見える。


「いいねぇ、楽ちんだ」

 フェリスがご満悦気にその蹂躙を見届ける。

 そして、レンガが群れを片付け終えたのを確認し、ラセツが歩き出した。


「よくやった」

 通り過ぎ際に、ラセツが呟く。

「うむ、ご苦労。いい働きだったぞ」

 パシっと、スズカの小さな手が、硬い毛で覆われたレンガの腰を叩いた。


 そして、のっそのっそと。スズカの後ろを歩きだした。


 木々が生い茂る森の中、一つの建物へとたどり着く。

 崩れ落ち、蔦が絡まる。寺院のような廃墟。その前には、逆さまの鳥居が建っていた。

 その内側は、空間が歪み、どこかへと繋がっているように見える。


 「屋敷まで繋がっているかも知れない。入ってみよう」

 歪んだ内側を見て、ラセツがその中へと足を踏み入れる。

 その後に続き、アステル達も逆さまの鳥居を潜った。


 その場所は、さっきまでの森とは打って変わり、変哲もない平原。しかし、大地に端があり、そこから下を見ると、さっきまでそこに居たであろう森が見える。

 そして、アステル達が目指している空に浮かぶ屋敷は、平原の先。平原のその上に鎮座している。


 平原を歩いていく。土、石畳が混ざり合う道。頭上に浮かぶ、屋敷が大きくなっていく。

 歩き続けると、一人の老人が平原の中央に立っていた。

 後頭部が長く、一本の刀を腰に携えている。


「久しぶりだな。白翁……いや、ぬらりひょんよ」

「……」

 スズカが前へ歩き出し、その老人へと声を掛ける。

 しかし、聞こえているのか、いないのか。反応がない。


 おもむろに、身に纏う着物から、一本の古びた巻物を取り出した。

 その巻物が、重力に沿い、落ちるように開かれる。

 中には、沢山の生き物が描かれていた。


「……見ないと思ったが、まさかぬしがそれを持っていたか」

 ぬらりひょんの身体から朱色の魔力が漏れ、巻物へと移っていく。

 地面が揺れ、ぬらりひょんの背後に幾つもの逆さまの鳥居が生まれ、その先には禍々しい門がそそり立つ。


「なんか、やばい感じ?」

 フェリスが気だるげに言う。

「やばいだろうな。……あれは、百鬼夜行の巻物だ」

 静かにスズカが答える。


「百鬼夜行って……」

 月が赤くなり、魔力が活性化する夜。魔物達は狂暴化する夜。

「百鬼夜行はおとぎ話で語られる程大昔に起きたのが最後、その現象を巻物に封印し、代々王家が守ってきたものだ」


 重苦しい扉が、悲鳴をあげ開いていく。

 そして、その扉から姿を現す。

 魑魅魍魎の群れ。その中へ、ぬらりひょんは消えていく。

 百鬼夜行の雄たけびが、赤い夜に轟く。

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