37話 雪と桜の報せ
河童の里を出てから数日、ナガレに言われた東に進んだ先にある人里を目指し、紅葉生い茂る道を歩き続けていた。
依然、シリウスとカインを見つけることは出来ていなかった。
「シリウス達見つからないねぇ」
落ち葉を踏みしめながら、フェリスがぼやいた。
「うん、カインがちゃんとシリウスの事召喚してればいいけど」
この世界に来てから数日経っている、召喚していないなんて事なければいいが、確認する事が出来ない。
「シリウス呼んでみたら?」
「んー……。それで、カインがシリウス呼び戻さなかったらって考えるとね」
「カインの事信用してないねぇ」
あははとフェリスが笑った。
しかし、その提案はなしではない。
シリウスならば、召喚される際にカインに再び召喚する様に伝える筈。
この世界に来て、数日。互いの情報を交換する為に召喚すべきかも知れない。
「シリウス呼んでみようか」
「はぁい」
アステル達は歩む足を止めた。
そして、アステルがローブの胸元を、ギュッと握る。
「……おいで」
アステルが静かに呟くと、目の前に緑色の魔法陣が出現し光り輝く。
光の中に、白い長髪に犬耳が生えた少女が現れ、輝きは収まっていく。
「久しぶり」
「アステル、フェリスも元気そうでよかった」
シリウスが二人を見て、微笑み、そう口にした。
ワンッと鳴く、シルヴィを見て。「シルヴィもね」と付け足した。
「そっちこそ元気そうでよかったよ」
フェリスがシリウスに近寄り言った。
数日振りに並ぶ二人を見た。たかが数日だが、やはり二人並んでいる姿が一番落ち着く。
「カインは?」
「昨日召喚してくれたよ。暫くしたらまた召喚するように言っておいた」
「昨日って……」
フェリスが呆れたような声音で言い、アステルとシリウスが苦笑いした。
しかし、ちゃんとカインがシリウスを召喚したようで安心した。
「取り合えず、歩きながら情報交換しようか」
アステルがそういうと、二人が頷き。そして、三人は歩き出した。
「それで、二人は今どういう状況なの?」
「私達との距離は大分離れてる……かな?」
シリウスが周囲を見渡しながら、アステルの質問に答えた。
「わかるの?」
「景色が全然違うから、向こうは雪と桜だったから」
「ええ……雪? こっちでよかったぁ」
「雪と桜……」
紅葉の森と、落ち葉で紅色に染められた地面。ここの景色も、綺麗だが。白い雪とピンク色の桜の景色もきっと綺麗なんだろう。
しかし、雪と考えるならばカイン達は北側にいるのだろうか。
「ここの世界がどこかは把握しているの?」
「うん、雪の里に居た。雪乃さんに教えてもらったよ」
「ユキノ?」
「雪女のユキノさん」
河童の里の長、ナガレと同様にカグラの統治者に名を付けられた。長を務めるネームドだろう。
「そっか、合流できそうな情報ってある?」
「私達が居る雪の里からは、大きな桜の木があって、そこの麓にこのカグラの都があるらしいよ」
「大きな木……。世界樹かな?」
アステル達の世界フォレスティにも、世界の中心に世界樹と呼ばれる大木がある。
しかし、ここからはその世界樹が見えない。そう考えると、かなり遠いらしい。
今アステル達が目指している人里で情報を掴めるといいが。
「アステル達は?」
一通り話終えたシリウスが、首を傾げ、今度はこちら側の状況を聞いてきた。
「私達は河童の里を数日前に出て、今は人里を目指してるんだ」
「河童?」
「うん、新しい仲間もできたから紹介するよ」
アステルが懐から甲羅の欠片を取り出し、黎明色の魔力を込めた。アステルの目の前に、朱色の魔法陣が現れ、光り輝く。やがて、小さな河童の子供。ヒスイが現れキュッ?と鳴いた。
トテトテとアステルに歩み寄り、そして、コテッと転ぶ。
「相変わらず、鈍臭いねぇ……」
フェリスが苦笑いした横で、アステルが優しく抱え上げる。
「この子は?」
アステルの腕の中にいる、ヒスイを覗き込みながらシリウスが尋ねた。
「河童の子供。ヒスイって言うんだ」
「へえ……。よろしくね」
シリウスがヒスイの頭を優しく撫でると、キュッと鳴いた。
そして、シリウスの身体が徐々に光り始める。
「カインが私を呼んでるみたい」
「そっか、都で会おうってカインに伝えといて」
「わかった。アステルをお願いね」
アステルの言葉に頷き、フェリスに顔を向けて言った。
「そっちこそね」
二人は微笑み、やがて。シリウスが光の中へと消えて行った。
静かに風が吹き、木々が揺れる。
名残惜しいが、都に行けば再び合流できる。
その為には、人里で情報を得なければならない。
アステルはヒスイを優しく降ろし、頭を撫でた。
「ナガレさんによろしく伝えといてね」
キュッ!と鳴き、小さな手を掲げた。そして、光の中へ消え、里へと帰った。
「行こうか」
「はぁい」
二人と一匹は再び、紅く染められた大地を踏み出し始めた。




