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Day Dream  作者: ユ・サド・クアザ


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第4夜 試行-前半-

 血塗られた、とは大げさであろうが。

 胸元が血に染まった体操服を見て、母親はそれなりにショックを受けたようだ。


 「あんたが・・・ケンカねぇ。」

 担任からの連絡を受け血相を変えた母親が到着したのは30分程前。


 田辺は嘘偽りなく担任へ報告したようで、自分が担任から事情聴取を受ける事はなく、事実確認だけで済んだ。

 もっとも、自分からけしかけたケンカで自分が怪我をしたとあっては、どう繕っても不名誉には変わりがない。

 たまたま運が悪かったのだ、自分にも周りにもそう信じ込ませるために、やった事を素直に報告した方が後々自分へのダメージも少なくなると判断したのだろう。


 「あの、あんたが・・・ねぇ。」 

 繰り返しため息をつく母親の感想は、至極真っ当なものであると自分も思う。

 それほどまでに、中学3年間はケンカはおろか争い事やトラブルとは無縁、おとなしい生徒代表のような学校生活を送ってきたのだ。

 そんな目立たない生徒に怪我を負わされたとあっては、田辺も面目が立たないであろう。


 「まぁともかく、相手も自分が悪いとハッキリ言ってますし、國井君には気の毒でしたが、なんの責任もありませんので。」

 川田の対応は普段生徒にしているそれとはハッキリと異なる。

 保護者とのやりとりも事が事だけに大変であろうと勝手に心中を察してしまう。


 「そうですか、でも相手の子は怪我されてるんでしょう?」

 そう聞く母親に、心配ないですと言うように大きく手を振りながら答える

 「まぁ、脱臼か骨折かって所でしょうが、本人も向こうの親御さんも自分たちよりも國井君の方を心配してるんで、ね。この後何か言われることはないと思いますよ。」

 何か言われたらすぐにご連絡ください、とも言われ母親も少しは安心したようだ。

 相手の親から何か言われるかもしれないという不安も親と言う立場からは当然なのかもしれない。

 

 午後の授業を待たずして、早退することになった。

 荷物を取りに戻った教室で蕪木に声をかけられる。


 「くにーちゃん大丈夫?かばってくれてありがとうね。」

 今にも泣きだしそうな顔で言う。

 「田辺からさ、アイツなんかやってたんか?って聞かれたけど、ずっと文化部だったんだよね?」

 自分が3年間ブラスバンド部に所属していたことは同じ学校である田辺もよく知っている筈だが、余程納得がいかなかったと見える。

 夢の中でたくさん死んでるからかな?とも言いにくいので、その場は笑ってごまかし母親の車で帰路につく。


 車だと2分ほどで到着する我が家へ戻ると、いつもより少々早いがいつもと変わらぬ日常を過ごす。

 夕方過ぎには帰宅した父親へ母親が今日あったことを少し誇張して報告していた。

 夕食の時はもっぱらその話題で持ちきりだったが、友人をかばってみたものの自分が要らぬ怪我をしたという点においては褒められると同時に叱られもした。

 良い事をしたのに叱られなければならないのはいささか納得がいかなかったが、親心ってヤツなのだろう。

 特に反論もせず、適当に相槌を打ってその場をしまう。


 自室にもどり、昼間反芻していたことを思い返していた。

 物事に対する感じ方は数年前と比べだいぶ変わっているような気がする。

 小学生の頃、叱られてもやめないほどに熱中していたゲームも今はほとんどやらない。

 巷ではゾンビを攻撃しながら進めていくゲームが、ホラー映画さながらの演出でスリルがあると評判だが、実際にプレイしてみると夢の中で化け物に追いかけられる恐怖にはかなわない。

 愉快痛快な格闘アクションゲームも、殴る殴られるというのが実際に感じているかのような痛みを伴う夢の中にいると、現実でプレイしてみようという気が起きない。


 すると、今日ほとんど怖いと感じなかった要因はやはり夢の中にあるのではないだろうか。

 

 「ふぅ・・・」

 声を出して息を吐く。

 何かをしようという時には出てしまうようで、すっかりと癖になっていた。


 さぁ、寝よう。

 いつもよりは若干前向きな気持ちでベッドにもぐりこむ。


 死ななければ目覚めない。

 憂鬱である事には変わりないが、どうせ死ぬしかないのであれば試してみたい事があった。


 タイマーで勝手に消えるように設定していた電気がふっと消える。

 瞼を透過して届く光がなくなり、程なくして眠りにつく。

 いざ、夢の世界へ。

ホラー映画さながらの演出のゲームってのは、バイオ的なアレですよ。映画にもなったヤツ。

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