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Day Dream  作者: ユ・サド・クアザ


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第3夜 回想 

 自分が死ぬ夢を見る事はあるだろうか。

 夢占いでは「開運」の予兆として概ね良しとされている事が多いようだ。

 しかし、果たして本当にそうなのだろうか。


 初めて自分がその夢を見たときの事をハッキリと覚えている。

 

 幼稚園年長の時。

 前日から高熱を出してひたすらに寝続けていた。

 頭がボーっとしすぎて、目を覚ましてもそこが夢なのか現実なのか判別つかずとても不安になった。

 

 リビングに近いから看病が楽だったのだろう。

 具合が悪い時はいつも和室の客間に寝かされた。

 床の間には日本人形が飾られている。リビングに次いで広い和室。

 いつもと見える景色が違う上に目を覚ますと今にも動き出しそうな日本人形が目に入る。

 それがイヤでいつも駄々をこねたものだった。


 今思い返せば金縛りのような状態だったのかもしれない。

 その時は身体を動かそうと思わなかったので定かではないが、何しろうつろに目を覚ました状態で天井を見つめていた。

 遠くからたくさんの足音が聞こえる。

 近くに学校があるせいで足音そのものは不思議ではないが、その時に聞いた足音はいつもと様相が異なっていた。


 ザッザッザッ・・・

 行進よろしく規則正しく歩く複数の、いやとても大人数の足音が聞こえていた。

 怖さやイヤな感じは全くなく、規則的なリズムがそのまま睡眠を誘う。


 気が付くと、真っ暗な空間で目を覚ましていた。

 足音がどんどん近づいてくる。

 同時に、雑踏の中のざわめきのような音が聞こえてくる。

 足音が聞こえる事はあっても、都会の喧騒のような音が聞こえてくるのはおかしい。

 それは幼心にも充分に理解が出来ていた。


 少しずつ近づいてくる無数の音。

 とつぜん火の玉のようなものが燈りはじめる。

 すると、壁と思わしき部分に何やら文様が刻まれている。


 そこに入った事があるわけでもないのに、そこがお寺にある「鐘の中」だという事が解った。

 わかった瞬間に『ゴーンンンっっっ!』と、脳みそを揺さぶられる程大きな音が鳴る。

 

 丁度中央に位置している自分は身動きが取れない。

 ゴーンと言う音と共に周りの景色が変化していくのに気付く。

 良く見てみると、ズズズ・・・ズズズ・・・と天頂部分が下がってきている。

 どんどん大きくなる様々な音。

 人々のざわめきと思しき音が耳元で聞こえる位になったと同時に、天頂が自分を押しつぶした。


 大泣きして目を覚ました自分の元へ母親が何事かと駆けてくる。

 夢で見た出来事を詳細に伝える程の語彙力を、当時の自分が持ち合わせているわけがない。

 ただひたすらに「怖い夢を見た」と訴え続けていた。


 それから、体調を崩す度に自分が死ぬ夢を見た。

 その多くは幼少の頃に見た夢とそのまま同じものである事が多かったが、小学校5年生のある日は別のパターンで出現する。


 その時は通っていた小学校を「何か」からひたすらに逃げ回っていた。

 ガラス張りの渡り廊下で、その「何か」に追い詰められたとき、立ち上がろうにも立ち上がれなかった。

 腰が抜けるという経験をしたことがない筈なのに、腰が抜けて立つ事が叶わない。

 もうダメだ、そう思った瞬間、窓の外には巨大なロボットが中をのぞいていた。


 とても不思議な感覚だった。

 「何か」に追いつかれた瞬間にダメだった筈なのに、巨大なロボットが見えた瞬間にその「何か」が消え失せ、安堵したのだ。

 しかし、次の瞬間にはそのロボットが窓を破って中に手を差し入れ自分の体を掴む。

 絶望と安堵、そしてまた絶望と両極端な感情が一度に押し寄せた為か、感情が一切消え失せてしまったのだ。

 これはこのあとどうなるんだろう、純粋に感じた刹那


 ブチっっっ


 痛みを感じる間もなく自分の体は押しつぶされてしまった。


 思い返せばその頃から、このような夢を頻繁に見るようになったのかもしれない。

 中学も3年になると、ほぼ毎晩自分が死ぬ夢を見るようになっていた。


 毎朝、ただただ悪夢にうなされて目を覚ます。

 長い夢も短い夢も、最後は必ず自分が死ぬ。

 不思議なことに夢の中ではどんなに長く過ごしていても、逆に一瞬で終わることがあっても目が覚めると目覚ましが鳴る5分程前なのだ。

 当然、寝た気などしない。

 かといって昼間眠くなるような事があるかと言われると然程でもなく、昼寝をしたとしても夢を見る事はなかった。


 夢の中では様々な事柄がリアルだ。

 死ぬだけならまだしも、匂いや感触などは夢かと思うほど生々しい。

 特に痛覚は夢であって欲しいと本気で願うほどリアルだった。  


 しかし、味覚だけは夢の中では現実とは異なるように思えた。

 食べても食べても味もしなければ満腹にもならない。

 延々と食べ続ける夢を見たこともある。 

 

 何度も死ぬ夢を見続けていたある夜「死ななければ夢が終わらない」事に気付いた。

 転落や爆破など、一瞬で終わるような場合を除いて、死ぬにも順序がある。

 大抵の場合、恐怖や絶望がセットになっているので、死ねば終わるという事が解ってからは、積極的に死に向かっていくようにもなっていた。


 少なくともここ1年は毎夜何かしらで自分が死ぬという事を経験している。

 夢とはいえ物事がリアルであると感じる以上、それもまた経験値なのかもしれない。

巨大なロボットは某ジブリのあのデカいヤツを思い浮かべて頂ければと思います。

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