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食の宝庫


 ハーピィ戦より数日後。砦に交代要員がやって来た。そして、引き継ぎの手続きを終えるなり、さっさと里帰りするサニー達に引っ付いて、開拓村までやって来ました。暫くお世話になる彼らのご両親にも大変温かく迎えられ、ほのぼのと田舎暮らしを満喫中。

 長閑な農村風景に包まれて、豊かな畑の実りを頂いていると、何故か郷愁の想いが湧いてくる。そこまで田舎の子だった覚えは無いのに不思議なもんだ。



「おーい、トオル。昼飯にしようやー」


「おー」


 サニーに返事を返しながら、農作業の合間、ずっと強いられていた中腰の姿勢から立ち上がり、背中をグーッと伸ばす。


「あだだ、あちこちバキバキだ」


 ぼやきながら固まっていた筋肉をほぐしつつ、歩みを進める。ここの食べ物はどれも美味しく、ついつい笑みが零れてしまう。

 開拓村到着からこのかた、鳥肉料理がメインを占めてるけど。砦で食べたハーピィ肉にとっても食感が似てるけど。


「食材がやたらと獲れ過ぎちゃってねえ。沢山食べてくれると嬉しいよ。特にアンタは年頃の男にしては細いんだから、しっかり食べないと駄目だよ」


 と、陽に灼けた逞しい腕で、バシンと背中をどやしつけてくるおっかさん。サニーの遠慮の無さはママン譲りか。

 だけどそんなにヒョロくないし、食が細いって訳でもないですよ?

 何度でも言うがここの飯は美味い。飽きがこぬようあの手この手で調理してくれる心尽くしの鳥料理。添えられるは穫れたて新鮮の旬の野菜。そして何より、待ち望んでいた白き至宝がここにある! そう、それは白米! これ一杯でおかず三皿はペロリと平らげられる!とばかりに、こちらに来てから一番の食欲を発揮しているというのに。


 目の前の料理をパクつきながら午後の自由時間の予定を唯と相談。このところ、周辺の家の手伝いをして、お礼に幾ばくかの米と野菜を貰う毎日を送っていたが、そろそろお休みらしいお休みを取ってみたい。

 無駄とは知りつつサニー達に観光名所を聞いてみたが、そのようなものは無く。その代わり俺達が喜びそうな情報をくれた。


「──海辺に村が?」


「ええ。主に漁で獲れた物や畑で穫れた物に、色々手を加えているの。海の傍だと塩が大量に手に入るから加工業が盛んなのよ。結構珍味もあるから、あなた達は喜ぶと思ったのだけど」


「それと醤油や味噌もそちらで作られています。蔵元は父の友人なので、名前を出してもらえば、何かと融通も……」


「「行きます!」」


 即答である。海の幸に味噌、醤油。さらに珍味もあるという。日本人なら行くしかあるまい! 探せば日本酒なんかもありそうだ。胸が高鳴るな。





「おいおいおいおい!? 兄ちゃん達、本気でソレ食うつもりかよ!? ゲテモノ食いにも程があるだろ!」


「蛸は割と身近な食材でしたよ?」


「この海鼠も貰っていいかしら? あ、そこの烏賊もお願い。下処理はこちらでやりますのでお構い無く」


 村の港に着いた途端、漁師達が漁獲したものを仕分けていた所に丁度出くわし、慌てて待ったをかけた。売り物にならない物をポイポイ海に投げ棄てていたからね。なんて勿体ない。

 「いやー」だの、「やめてー」だの、海の男が情けない声を出す。どうやらこちらでは軟体生物を食べる習慣が無いらしい。俺達からすれば虫を食べる方が抵抗あるんだが。


「はあー。長く海に携わってきたが、こんなもん食べようなんて気にはならなかったなあ。世の中広えなあ」


「島国出身ですから。海からの恵みは最大限の感謝を持って、有り難く享受いたしますとも」


「そういうもん、かねえ?」


 そういう事にしてくれ。あの国の食文化について語れば語る程、理解されない事は身に染みて学習してるんだ。



 買い取った魚や頂いたブツを持ち込み、加工場の一画をお借りして唯と二人、下処理に取り掛かる。俺の役目は蛸と烏賊のヌメり取りとなった。よーし頑張るぞ。

 内臓を抜いていったそれらのヌメりを取る為、塩を振って丁寧に揉む。このヌメりが生臭さの原因なので、足の一本一本までしっかりと揉み込まねば。そうして塩を真水で流れ落とし、目玉とくちばしを取り除く。

 蛸はそのままボイルした。赤く茹で上がった蛸の足をちょっとだけ切り落として味見。ついでに烏賊の刺身も一口もらう。ほ~、懐かしい味だ。海鼠は酢でやっつけたらしい。これも美味かった。

 出来上がったそれらを上機嫌で食材袋に入れる俺達を、漁師達が異様な眼で見ていた事など些細な事さ。


 その後、本命の味噌や醤油、魚の干物や海苔、わかめ。その他諸々の食材を詰め込み、意気揚々と帰路に着いた。──あ、日本酒モドキもちゃんとありました。



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