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求めるもの


 話の先も気になるが、いつまでも玄関前で立ち話するのもなんなので、ひとまず俺の部屋に場所を移す。扉を開けてサニー達に入室を促し、次いで唯、俺が入る。その際後ろ手に【刻印・門外不出】を起動させ防音も完璧。全員で床に座り、話の続きを聞く事にした。

 さて、まずは無難なところから聞いてみよう。


「俺が米を探している事はどこから知った?」


「流通ギルドの親父だよ。俺らがオーマ領の出だと聞き及んだらしくてな。持っていたら買い取らせて欲しいと言ってきた」


 おやっさん、本当に探してくれてたんだ。そしてオーマ領、そこが米の産地か。

 クリスに教わった地理を頭に浮かべる。確か王国領の北の端、秘境の入口とも呼べる場所に位置していた筈。


「遠いな。米が流通に乗らないのも無理はないか」


 その言葉に三人が少し驚いた顔をする。オーマ領の場所を知っている事に驚いたらしい。

 が、俺達が地理を学んだこの神殿の役目を知っていればさして不思議でない。各地に巫女達を送り出すこの神殿にある地図は、市販の物と比べて精度も記載されている情報量もまるで違うからな。


「移動距離が増えるほど費用も危険も増すものね。王都に着く頃には庶民に手が出る物では無くなってるのではないかしら」


 元の世界じゃ胡椒一粒が黄金と等価値なんて時代があったそうだけど、こちらではお米一粒を金貨で扱うことになったりして。なんて流石にそれは言い過ぎか。

 しかし、米が手に入ると分かれば、毎日とは言わないが定期的に口にしたいもの。仕入れる量を考えたら、少しでも安く手に入れたいってのが本音だ。そうすると現地に買い付けに行けるサニーからの申し出は大変有り難いんだが。


「となるとやはり気になってくるのがサニー達が受けた依頼だな。Gランク二人を抱えて、果たせるものなのか?」


「只のGランクなら足を引っ張るだけだが、お前らに関しちゃ心配はしてねえ」


「あまり過大評価されても困るんだけどなあ」


「私達、自分で言うのも何だけど随分尖った能力だものねえ」


 唯と顔を見合わせ、困ったように苦笑する。どうしてこんなに買い被られているのか。その答えは不本意な気持ちを隠しもしないレイが教えてくれた。


「口に出して認めるのは癪だけれど、あなた達は決して無理な戦いを仕掛けないと理解しているからよ。いざとなったら逃げる事を念頭に置いて戦っているのが、見ていて分かる」


「そもそも俺らはお前らをサポーターとして雇うと決めたんだ。戦いは基本こっちでやるさ。ヤバいと思えば逃げ隠れしてくれていい」


「あ、それなら超得意」


ポロッと出た本音にレイが睨み付けてくるが、それが事実だと彼女も分かっているのだろう。面と向かって何か言われる事はなかった。

 俺に隠密行動のイロハを叩き込んでくれたのは、あのルーなんだぞ? そのルーですら訓練中での【自由自在】の使用を禁じてきた。お空に逃げられるとどうしようもないからね。


「……話を戻すわ。恐らくだけど、依頼内容は領内にある砦の防衛要員の穴埋めよ。今回の騒動でだいぶ人手を取られたでしょうから」


「交代要員の再編成が済むまでの期間は、多く見積もって一月程かと。里帰りはその後ですね。滞在期間は……どれくらいになるかな、兄さん?」


「田畑の収穫期にブチ当たると手伝いに駆り出されるからなあ。時期的に頃合いだし、こればかりは行ってみんと分からん。親父も歳だしなあ」


 難しそうに腕を組み、しみじみとそう言ったかと思えば、一転悪戯っぽく瞳を輝かせ笑い掛けてきた。


「良かったらお前らも手伝ってみるか? 労働後の飯は格別美味いぞ。ワハハハハ!」


 これはさてはあれですね? 農家の厳しさを知らない若者を騙くらかして労働力にしてしまおうとの腹積もりなんですね? 対価は美味い飯という現物支給な訳ですね?

 そんなもので俺が動くと思われていたようだ。──良く分かってるじゃないか!


「つっても農業はした事ないからな。こっちでも戦力にはならないと思うぞ?」


「そうね。私も家事手伝いくらいかしら?」


 そう自己申告をしてみるが、繁忙期は女手から子供の手までかき集め総出で取り掛かるもので、どんな手でも借りたい時期らしい。

 手作業のみと思われる現場でどれだけお役に立てるのか分からないが、美味い米と野菜にありつく為に、精一杯頑張る所存ではある。



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