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求めていたもの


 暴走したニコラさんをどうにか宥めた後、会長さんから誘われて少しお話しした。俺が魔道具の値段について調べている事を話すと、外部に知られても問題ないレベルの事を教えてくれた。

 大雑把に目星を付けるやり方として、原材料の値段と術の難易度、あとは類似品の有無に注目する。稀少な素材はそれだけで高くなるし、術の難易度は術師の数と反比例するものだ。そしてオリジナル性と有用性。ガラクタに大枚叩く物好きなどそうはいない、とのこと。

 なるほど、納得。その点を踏まえて例のブツに当て嵌めてみよう。素材は子供のお小遣いで買える物、術師は一人、類似品は見たこと無いな。だから作ろうと思った訳だし。実用性についてはマスターの反応で推して知るべし。

 こうして並べてみると極端だなー。需要と供給の観点から見てもバランスが崩壊してる。……あれ?どうしようコレ?製作者が俺ってバレたら、拉致監禁からの飼い殺し未来、待ったなし?





『……という訳なんだ』


『そんな無茶をする前に一言相談してくれれば良かったのに。私は別に急いでないのよ?』


 神殿までの帰り道。奉仕活動を終えた唯と偶然バッタリ道で出会い、肩を並べて歩きながら今日の出来事を話していく。話の内容を鑑みて日本語で遣り取りする。普段は外では自重するけどたまにはね?


『……取り敢えず、売ると決めたからには、口止め料を多く含んで黙ってもらうしかないわね。そうなると安く手放す事になりそうだけど……』


『それは別に問題ないし、俺もそれしかないと思う。材料費はタダ同然だからどれだけボられようが収支はプラス。マスターは情報を扱うプロで口の固さは折り紙付き。その上、仁義を重んじる人でもあるから、最初に筋を通しておけば滅多な事は起きないと思う』


『フフ。透さんの話を聞いていると、マスターと言うより親分さんね』


『はは、確かに。顔も厳つい事だしなー』


 緩やかな足取りで神殿の前に辿り着くとそこには、ちょっとぶりの面々が待ち構えていた。


「よう。や~っと帰って来やがったか」


「サニー?ソルにレイも。どうしたんだ?確かギルドの出した《指令》を受けていたんじゃなかったか」


「ああ、あれは大方終わった。後は騎士団の連中で十分手が回るそうだ。俺らはお役御免というヤツだ」


 おお、そいつは朗報。漸く騒動も終わりか。Gランクの俺達は殆ど蚊帳の外だったが、受付業務も指令関連を優先していたのでちょっと肩身が狭かったのだ。


「──でな。暇になった事だし、ちょいと遠方……つっても実は俺らの故郷行きの仕事を受けたんだが、お前達さえよかったらサポーターとして雇いたいと思ってな」


「遠方とはいえギルドより転移陣の許可は得ているから、行く道の安全は保証します。どうでしょうか?」


 はい、この時点で警戒心が一気にMAXです。


「……転移陣の許可が出たとか、只の依頼とは思えないんだけど。あと、着いた後の安全についてはどうなってんの?」


「それは着いてから詳しい説明があるそうよ。私達も聞いてないわ」


「概要を全く知らない事はないでしょう。向かう先があなた達の故郷なのだとしたら尚更よ。依頼内容についても聞きたいとこね」


「……ハア、だから言ったのに。何の説明もなく付いてくる筈ないじゃない……」


 唯の指摘も尤もだ。故郷なら詳しい様子を食い下がっても知りたがるのが普通だろう。聞いていないとか嘘臭い。

 この様子だと依頼内容を伝えなかったのもワザとだな。お断りする口実を与えないようにする為か。

 そもそもサポーターとして雇うなら何故ギルドを通さないのか。理由は一つだろう。──俺達のランクが足りないから。


「あのさ、話の持っていき方がちょっと強引じゃね?絶っ対何かあるだろ!主に危険な方向で!」


「わはは、バレたか。つってもお前らに危険な真似をさせるつもりはねえよ。単に俺がトオルの魔術に興味があるだけだ。ほれ、あん時、竜人に掛けたヤツ。あれを自分でも体感してえってのが理由の半分だ」


 悪びれず朗らかに言い放つサニー。……ああ、そういやこういう奴だった。アトラクション業の時も目を輝かせて楽しんでたっけな。術が切れたらすぐさま列に並び直して……、確か五回は飛ばしてやったと記憶している。


「ふうん。で、後の半分は?」


 何だかドッと疲れが押し寄せ、気の無い返事をしてしまう。


「……出来りゃあコイツは現地に着く迄は秘密にしときたいんだが……」


「じゃ、お疲れ様でした。俺らは部屋に帰りますね」


 この上でまだ秘密にするってんなら付き合ってられない。何気に疲れる人達との面談の帰りなのだ。


「分かった分かった話す話す!……チィッ、コイツを切りゃあ受けざるを得ないのは分かっちゃいるんだが、現地で驚く顔が見たかった……」


 さっさと踵を返す俺に本気の覚悟を見てとったか、一頻りブチブチ文句を垂れた後、纏う空気をガラリと変える。


「ならば問おう!──お前は米が食いたくはないか?」


「なん……だと!?」


 付き合いきれんと唯の肩を押し神殿の扉を潜ろうとしたところへ、この質問。瞬時に振り返りサニーを見つめる。ギロリと目付きが鋭くなっているのが自分でも分かる。


「……うわあ。トオルさんの目がマジだよ。初めて見たかも……」


「あの男にあのような顔を出来るとは……思いもよりませんでしたね」


「それだけじゃねえ。聞けば味噌や醤油も探しているそうじゃねえか」


「そんな、まさか……」


 愕然とする俺に、ニヤリと不敵な笑みを向けるサニー。


「ああ、あるぜ!俺達の故郷に行けば、たんまりとな!」


「……詳しい、話を聞きましょう。──構わないわね透さん?」


 隣に立ち同じく呆然としていた唯が先に我に返り、言葉を何とか振り絞る。俺はといえば、こちらの顔を窺いながら訊ねられた唯の言葉に、ただただ頷く事しか出来なかった。



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