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術式開発


《魔術訓練中。決して扉を開けないで下さい》


 何処ぞの鶴よろしく、扉に貼り紙を張り付け、更に錠部分に【刻印・門外不出】を使い、部屋に引き籠る。そんな生活をここ何日も続けている。

 そうまでして何をしているかといえば、新たな術式理論の確立と、それを用いた自作魔道具の開発である。なので一応、万が一の保険として、唯にだけは【門戸開放】を刻んだ鍵を渡している。魔力暴発や魔力涸渇の可能性だってあるからね。


 きっかけは最近気付いたんだけど、あの【以心伝心】シリーズに用いている同時掛けの技術って【即席】や【刻印】とはまた違った手応えがあるような気がするのだ。なので他の事に使えないかなー?と思ったんだ。

 例えば、【鏡花水月】をスクリーン用の布に、適当な物をカメラに見立てて【飛耳長目】。それらを【天網恢々】で繋いだら、あら不思議!LIVE映像ゲットだぜ!とか。


「いけるかな?いけるだろ?……いけそうな気がしてきた!だって魔術だし!!」


 と、例によって例の如く、根拠の無い魔術万能説を持ち出し、ちょっと真面目に理屈と魔力を捏ね捏ね、頑張っている訳だ。


「うーんと、えーと、今度はこう、して、と。……むぐぐ、駄目だー。また失敗かぁ」


 慎重に、繊細に、魔力を操り注いでいく。が、【即席】を籠めたAとBを、繋ぎ合わせようとCの魔力を編み上げていくと、フッと全ての魔力が霧散する。もう幾度目の失敗になるだろうか。手に持っていた物を放り出し、身体を倒し大の字になる。度重なる失敗に「俺って才能無いなあ」と一人ごちてみては右にゴロゴロ、「いやいや、落ち込むにはまだ早い」と気を取り直しては左にゴロゴロ。この繰り返しの毎日だ。


「何が駄目なんだろ?理屈?魔力?全部消えるって事は反発しちゃってるんだろうか?……やっぱり机上の空論に過ぎないのかなぁ……いや!諦めるのはいつでも出来る!まずは思い付くのを片っ端からやってからだ!今は魔力の扱い方が間違っていると仮定してこのまま突き進む!」


 ガバリと勢い良く身体を跳ね上げ、今一度魔力を練り上げるのだった。





(ん? こ、この感じ……!! いける!いけるぞ! 今ならはっきりと解る……!! ようし、最後まで気を抜くな、集中っ……!!)


 今までに無い手応えを感じ、ドキドキと高鳴る胸に期待を乗せて、最後の仕上げに取り掛かる。

 今までならここまでの段階で魔力が散り散りになり悔しい思いをしたのだが、今回は魔力同士が反発する事なく纏まっている。仕上げを終えて見守る中、少しの揺らぎを見せていた魔力がゆっくりと静かに定着していった。


「……で、できたーー!! ──ッシャア!やったやった!」


 思わずガッツポーズをして、年甲斐も無くはしゃいでしまう。

 長く孤独な戦いだった。正しいアプローチ方法があるかどうかも分からない中、手探り状態で結果だけを求め、ただひたすら総当たりで試す日々。

 三日目あたりで魔力欠乏状態がピークに達し、まともな思考回路が出来なくなって、遂には自分で禁呪指定した【精力絶倫】にまで手を出す始末。流石に危険度は理解していたのか、ティースプーン一杯分の用量に対しコップ一杯分の水で薄める工夫をするだけの知性は残っていた模様。お陰で多少体が熱を持つ程度の症状で済んだ。

 そんな我が身を犠牲にまでした努力が実を結び、晴れて今!こうして新たな術式が陽の目を見る事になったのだ!

 よし!新たな術式に名前を付けよう!シンプルに【同調】でいいか。

 コツは掴んだ。これなら数回の練習で【刻印】でも上手くいくだろう。他には何が出来るかな?当分は辞典とにらめっこだな。






 はあ。早く家が欲しい。誰に見咎められる事の無い、自分達だけの自由空間。

 全く!工事関係者共め!何処から噂を聞き付けたんだ。

 なかなか工事終わんないな~やっぱ重機無いと厳しいんかな~?と、のんびり姿勢で待ってたら、奴ら化け猫屋敷の噂を聞いてボイコットしていやがった。

 まあ、これは鼠ちゃん達を追い出す為とはいえ、派手にやり過ぎたのが原因だったかもしんない。だもんで、庭先に招き猫の像を作ってやった。

 それを見た建築ギルドの職員が顔を引き攣らせていたのが印象的だった。ええ、ボイコットの理由も暈しまくってくれたものね貴方。こちらからは声を掛けない事で一切の弁明を封じ、素知らぬ顔のポーカーフェイスを貫いた。


「これは俺の国に伝わるもので、守り神の一種。朝夕の仕事始めと終わりに手を合わせれば大丈夫だから、安心して仕事に励んでほしい」


 と説き伏せ、仕事を再開してもらった。

 ……本当は守り神じゃなくて只の縁起物だけど。御利益も福を招くもので、邪を祓う効果は無いけど。

 まあ、化け猫騒動からして嘘を塗り固めたものだし、気休め程度で問題ない。気持ち良く仕事をしてもらう為の方便だ。これ位の嘘なら許してもらえるだろう。

 最後に手本として、彼らの目の前で手を合わし屋敷を後にした。

 ──幸せこいこい、お金こいこい。




幸せこいこい、お金こいこい(割と切実 人( ̄ω ̄)

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