闇夜の篝火
先刻までの身勝手な行動は慎み、テオ達と足並みを揃え共に強敵に立ち向かうジュゲムの姿を見守りながら考える。
延長を掛けるか、離脱させるか。本音を言えばあまり無理はさせたくない。将来性豊かなルーキーをこんなところで使い潰すのは駄目だろう。
だが、今抜けられるとまた厳しくなるのも確か。何かこの状況を一押しする必要がある。
頭の中に幾つか考えだけはあるものの、実力不足だったり、条件が厳しすぎたり、なんか機会に恵まれなくてお蔵入りになっているアイデア達。これらがお役に立てないものか。
今さら自重とか「どの口が言うのか」てな状況だしなー。
「──よし」
考えが纏まったところでパチンと両手を打ち合わせ、リュックの中をゴソゴソと。
取り出したるは、槍【刻印・乾坤一擲】である。効果は投擲威力・大。但し一度使うと自壊するので槍自体は一山いくらの安物だったりする。
俺が投げても良いんだけどその場合、目標部位に上手く当たるか、ちと心配。下手したら力が足らずに弾かれる可能性もあるし、もし万が一上手くいったとしても俺にはレベルの恩恵が無いのだし、ここは素直に他人任せ一択で。丁度、高ステータスな上に槍の扱いに長けた方がいるじゃないか。
「アンジェ、協力をお願いしたい」
「それは、どのような、内容でしょうか!」
フヨフヨと空中から声を掛けると、戦いながらも律儀に返答してくれる。
「要望は一つ。この槍をぶん投げて奴さんの首に命中させて欲しいだけ」
手にした槍を指し示し伝えると、その位ならと力強く頷いてくれた。
刻んでいる言葉が言葉なので投げ渡す訳にもいかず、手渡しする為、少し離れて高度を落とす。途端放たれる焦ったようなテオの警戒の声。
「っ!?──すまん!抜かれた!」
振り返ると脇目も振らず猛スピードでこちらに突進してくる走竜。視線はガッチリ俺を捉えている。どうも予想以上にヘイトを稼ぎ過ぎていたらしい。俺を攻撃する機会を待ち望んでいたか!
くそう、俺みたいな雑魚ほっとけよ!デカい図体して器の小さい奴だな!
一旦アンジェとの合流を見送り、回避行動を選択。相手は平衡感覚を失っている身、くねくねと蛇行し転倒を誘ってみる。が、若干体勢を崩すも持ち堪え、バタつきながらも執拗に追って来る。
ならばと少しばかり速度を落としながら大きく弧を描くように飛翔する。少しずつ詰まる互いの距離。あと一息と見せかけたところで鋭く逆方向に転回。
急激な方向転換により遠心力が大きく働き、そのまま転倒するかのように見えたが、奴の執念を見くびっていた。
なんと無理な体勢から体を捩らせ変則的なボディプレスをかましてきやがった。咄嗟に最高速度までギアを替え回避に全神経を集中する。
ズズンと地響きを立てて倒れ込む走竜。奴の形振り構わぬ攻撃は間一髪避けられたものの、これには肝がヒヤリとした。
辺り一面に砂埃が舞い、視界と呼吸を阻害する。
「ゲホッ、ゴホ!……くっそビビった~」
小声で悪態を吐きながら周囲の気配を確認する。少し離れた所で地面を引っ掻く音がする。奴が態勢を立て直そうと足掻いているのだろう。
そちらに注意を払いながら、味方の気配を探る。視界が晴れる前に合流したい。と言うか、奴には金輪際近付きたくないので、さっさとアンジェにこの槍を預けて逃げ出したい。
幸い、比較的近くからアンジェの声が聞こえたので、そちらの方へソロソロと移動。
砂塵も薄れ始め、やや早足になったその時、夜空の一角に闇夜を焦がす大きな火柱が上がった。
「ふあっ!? ……っ!?」
漏れ出でた驚愕の声をどうにか押し込めながらも、ついついそちらの方向に目をやってしまい後悔した。闇夜に慣れた目にはその明かりは強すぎたのだ。
慌てて目を眇めたので、視界の一部がぼやけてしまう程度で済んだが、あのまま凝視していれば目は暫く使い物にならなかったであろう。
あの火柱、唯……だよな?何だってあんな目立つような真似を?……もしや、向こうで何か異変でも起こったのか!?
急ぎ懐から携帯【以心伝心】を取り出し、強く握り締める。
(唯!何かあったのか!)
{…………}
(……唯!? ──返事をしてくれ!)
何とも形容し難い不安が胸に込み上げる。自分を取り巻く一切の状況が頭から消え去り、今すぐ駆け付けるかと思考が及んだその時、漸く唯から返事があった。
{……透さん?}
(無事か!何があった!)
{……えと、その、ここからだと、透さんが潰されたように見えて……つい}
バツが悪いのか、切れ切れになりながらも言うことには。
俺が死んでしまったと思い込んだ唯は、……、詠唱を唱えてしまったらしい。
……途中何があった!?
〈その後あったかもしれない会話〉
透「最後何があったんですかね?」
唯「…………(フイッ)」
I「べっつにぃ~(ニヤニヤ)」
MY「なにも~(ニマニマ)」
ME「なかったよ~♪(ニヨニヨ)」




