VSゴブリンメイジ
「グォギガギギャ!」
ゴブリンメイジの奇声と共に魔術が放たれた。ハンドボール大の水球が続け様に襲い掛かり、地面を抉り飛ばしていく。
思っていた以上の破壊力。水球というより水で出来た砲丸だな。まともに食らえば骨折は免れんだろう。
しかぁし!当たらねばどうという事はない!
水球の速度は人が投げる程度のものだし、直線的にしか飛んでこない。この程度ならわざわざ魔術で底上げするまでもない、とドッジボールの感覚で右に左にとヒョイヒョイ避ける。フハハ。緩い!緩すぎるわ!
──コケッ。って、しまったぁぁっ!?調子に乗って足場が悪い事すっかり失念してたぁっ!
思考より速く肉体が反応し、その場をゴロゴロ転がり避ける。今まで顔があった場所に水球がドカドカ降り注ぐ。
ひいぃっ!?間近で見ると怖っ!頭はヤバい!食らったら死ぬ!食らったら死ぬ!
転がる勢いを利用して立ち上がり、また逃げる避けるを繰り返す。そしてこれ以上は無意味と悟ったのか遂にメイジの攻撃が止んだ。
ふい~。死ぬかと思った。あまりのスリルに心臓はバクバク言ってるし、皮膚もザワザワ落ち着かない。ついでにゴツゴツした地面を転がったもんだから腕とか背中がちょっと痛い。
うぉのれメイジ、許すまじ。この借りは万倍にして返してやらあ!
「それにしても……」
と、独りごちてみる。
出来ればメイジの傍からホブゴブ達を引っ剥がしたかったんだけど全然釣れないでやんの。さっきコケた時もちっとも動かなかったし。いや、あれはあれで助かったんですけどね。つーか参戦されてたらヤバかった。逆に言えば、連中は千載一遇のチャンスを逃してしまったと言える。
だがこれで分かった。統率されているのか、ただ融通が利かんのかは知らないが、アレは自分達の射程内である近距離に入らない限り木偶の坊であるお邪魔キャラ、肉盾1号2号でしかない。
結論・アイツラなんか飾りだ。
……お?おお?という事は?……難易度下がった?コレ実質1対1と変わりないじゃないですかヤター♪
最悪、1対3で三方向から囲まれる状況を想定してたのにぃ。お馬鹿さん達に感謝感謝だ。
とは言え油断は禁物。先程の失態を繰り返すまいと【臨機応変】【危機一髪】のコンボ自動回避でドーピング。今度はこちらの番だ、こんにゃろう。
懐から石を取り出し【一触即発】、大きさはスーパーで売ってる鶏卵サイズだ。ポイポイっと連中の足元目掛けて次々投げると、メイジを庇う為に前に出た1号2号がまともに食らう。
とは言え威力はガラス瓶が破裂した程度。足を吹き飛ばすまでには至らず、爪先から脛辺りまでを砕けた石の破片が突き刺さるぐらいだ。
膝をついてこちらを睨んでくる1号2号。しかし彼らは自らの役目を果たしたと言える。
彼らの働きのお陰で、僅かに朱が走る程度の掠り傷で済んだメイジが、詠唱を終え新たな魔術を発動する。
虚空に浮かぶ氷の槍。凶悪なまでに尖り切った穂先が高速で襲い掛かって来る。狙いは喉元。
それに対してこちらは盾を翳すのみ。
──勝った。そう思ったのだろう、メイジの顔が喜色に歪む。
本来、このような粗末な盾など、あの氷の槍はあっさりと貫いてくるだろう。だけどこれは普通の盾じゃない。【刻印】付きである。刻んだ言葉は……。
「【因果応報】」
槍が盾に触れた瞬間ぐるんと反転し、そっくりそのまま魔術が返される。槍は真っ直ぐな軌跡を描き、勝ちを確信していたメイジの喉元に吸い込まれていった。
っしゃあっ!!ゴブリンメイジ、討ち取ったりィ~!
その後、下を片付けて登って来た唯達と協力して、残る二匹をボコった。




