建築ギルド
依頼の報告に建築ギルドに向かい、担当者に会って調査結果を伝える。
伝える内容は簡潔に、
「不法侵入者が居ましたよー。不審な声は連中の仕業でしたよー。きちんと全員追い出しましたよー」
とだけ報告し、どのように追い出したかはお口にチャック。
担当者も、まさかそんな子供の悪戯レベルの問題を外部に依頼してしまったのかと恥じ入って、詳細を聞こうとしなかった。
なので後は侵入ルートの情報を渡すだけで、あっさり報酬を貰う事が出来た。
「では、確かに。……それはそうと、あの家の取り壊しは決定なのか?丁度、ここにいるトオルが家を探していて、あれを気に入ったらしいんだ」
俺だといまいち迫力に欠けると言われ、交渉の席にはリオに横に座ってもらい睨みを利かす役どころを。事務職にはさぞかし辛かろう。
「いえっ!まだはっきり言える段階ではなくてですね、そのー、前向きに善処したい所存ではありますが、素人さんの見立てでは大丈夫でも、我々の目でまず確認しないと……後々何か問題が起きたらお互い困りますでしょう?」
「ふむ。ならば確認はいつになる?なるべく早くがいいのだが。今日、明日中には答えが聞けると思って構わないか?こちらも予定があるのでな」
ごり押しですなー。担当の人、顔引き攣ってるよ。何て言うかマジごめんね。この人達ってニュートラルの状態でこれなの。俺による、俺の為の意識改革もうまくいった試しがないの。似た者同士が集まっているからか、自分達基準の考えが染み付いちゃってて、それがどんなにズレちゃってるのか分かってないの。
その証拠に俺、今回の依頼で漸く、初めて!貢献ポイント入るんだぜ?いくらなんでもすっ飛ばし過ぎだろ、色々と。
でもまあ、そんな人達に鍛えられた俺もやはりどっかズレてるわけで。リュックの中から紙を二枚取り出し、テーブルにまず一枚置く。
「これは……例の物件の間取り図ですか?ここらでは見ない書き方ですな」
「うちの故郷の書き方なんですよ。とはいえ、これは素人の書いた物ですし、細かい所はだいぶ違うと思います。幅も歩数や目測による大雑把な物と思って下さい」
あれですよ。住宅展示場のチラシとかに載っている間取り図。改装案を突き詰める為に、うろ覚えの記憶を唯と二人がかりで何とか掘り起こし形にしてみせたのがこれ。
興味をそそられた様子で手に取りそれを眺める担当者。
「ほうほう。……ふむふむ。いやいや、なかなか良く出来てますな。冒険者の方は多芸でいらっしゃる。それで、これをどうなさるのですか?」
その質問を受けて、もう一枚を横に並べる。一枚目の写しだ。だがこちらにはあれこれ書き足している。
「その△の印が声の出所です。なので斜線の入った区画には手を入れず、他の場所に風呂を作りたい。排水の関係もあるので玄人の意見をと思いまして。あと南側のこっちかこっちを減築して小さな畑を作りたい。それと台所も大幅に作り替えますが、まだ案を詰めている途中なので出来上がり次第お持ちします。取り敢えずは確認の際に風呂を作れる場所の下見をお願いします。あ、その紙は差し上げますんで、下見の時、参考に使って下さい」
今決まっている改装案をぶちまける。それを受けて担当者の顔は更に引き攣った。
ええやないのー。前向きに善処する言うたやないのー。どっちにも取れる言葉ってのは便利かもしれないが、相手次第な時もあるんだぜ?
素直に「貧乏人はすっこんでろ」って言ってた方が良かったかもなー。リオの眼を見てそれが言えるなら、こっちも諦めたんだけどなー。
「いえ、あの、ですからまだ何とも」
「ええ、ええ。確認が先だと仰りたいのでしょう?でも時間は有限ですからね。賢く使っていきましょうよ。一度で済むものを二度手間にするなんて時間の無駄です」
どうせ入念に調査されるのですし、頭のどっかに置いといて下さい、とニッコリ。
担当者はオロオロと助けを求めるように視線をさ迷わせるが、残念でした。この中では俺が一番チョロいんだ。その俺が退かないのに彼女達から助け船が出る訳ないじゃないか。
「先程も言ったように、台所に関しての資料は出来上がり次第お持ちします。その時に調査結果をお聞きしますので、見積りはその後、という事で」
「…………はい」
がっくりと項垂れた担当者に笑顔で手を差し出す。力の無い目でソレを見て、緩々と握り返す担当者。
よっしゃ!優先交渉権ゲット!!
多少強引だったのは認めよう。強面用意して言うこと聞かす、なんて遣り方が褒められない事も理解している。
だが後悔や反省は微塵もしない。




