村での活動
村に来て一週間が経過した。
その間、壊れた家を片付けたり、資材を調達したりするお手伝いに従事し、合間を縫っては子供達と一緒に遊んだりして交流を深めた。
始めは大人の背に隠れていた子供達だが、根気強く話し掛けた努力が実を結び、一人、また一人と次第に集まるようになったのは嬉しかった。
鬼ごっこや縄跳びといった身体を動かす遊びやら、しりとりやなぞなぞといった頭を使う遊び。時には端材を使って工作をしたり、またある時は簡単な算数を教えたりと、俺自身も楽しく過ごした。今では子供達から「ワタリの兄ちゃん」と慕われている。
また老若男女問わず好んだのが物語だった。
まあ分からんでもない。外界から情報が遮断された閉鎖的な環境では娯楽が無いのだ、はっきり言って。奥様方の会話も「○○さん家のヤギが仔を産んだ」とか、そんなんばっかだし。
ワタリの話が百年も語り継がれた理由はここら辺に関係あるんじゃないかな?
ふとそんな考えが頭をよぎりちょっと想像してみた。物語をせがむ子供達に毎夜語られるは百年前に現れた悪逆非道な男の話。……俺ならやだな、そんな寝物語。
という訳で、この一週間、余所者に対する拒絶反応を払拭する為、そして新たな物語を提供する為、日々あちこちで物語を語り歩いた。
カリナさんとも話をした。あの人は村で唯一ワタリと直接会った事がある生き証人なのに、ワタリに対する感情が村の人達とは違うのが気になっていたからだ。もしかしたら伝えられている程、悪い人間ではなかったのか?と思いストレートに聞いてみたところ。
「概ね事実だよ。アタシもね、ワタリが村を襲った事は許せないけど、恥ずかしながらワタリはアタシの初恋の相手でもあるんだ。なのでどうしても憎め切れないトコロがあるんだよね」
え?カリナさん、こんなに美人なのに男の趣味が悪いの?マダオが好み?
「いやだね、若気の至りだよぅ。当時は150歳の小娘だったんだ。あんな男でも良い男に見えちまったんだね。あ~恥ずかしいね」
頬を染めながらそんな反応に困る事を零されても。……150歳が小娘?正しく桁違いですね!
……いかん。先程から失礼なコメントしか思い浮かばない。ちゃんとオブラートに包めているかな?
どうも詳しく話を聞いてみると、ワタリという奴は、悪逆非道というより小悪党レベルなんですね、実際のところ。襲撃の際も下っ端扱いだったらしいし。だけどこれを正直に子供達に話すと「つまんない」と不評だった為、最近では話す事も無くなったらしい。
それに男衆には迷惑を掛けまくっていたが、ええかっこしぃな所もあるようで、特に若い女の前では気を張っていた印象を受けた。カリナさんにも何度か大法螺を吹いていたようで、男衆から話を聞くまでワタリの話を鵜呑みにしていたそうだ。
齢150歳で悪い男に騙されないで下さい。エルフ族の知的なイメージが崩れてしまいます。
そんなこんなで一週間を過ごし、漸くおつかいの品である工芸品を受け取る事が出来た。
残念ながら賊共の襲撃で注文の品が火に巻かれてしまったのもあるが、詫び状と共に代替品を用意して包んだ。手工芸品は完成までに時間が掛かるので、これは致し方ないと思う。注文主が納得してくれるのを願うばかりだ。
「そしてこれがギルドに対しての手紙です。此度の襲撃の被害や皆様方の尽力もしたためていますので合わせてお渡し下さい」
「承った」
村長が差し出す手紙を代表してリオが受け取りそのまま懐に仕舞い込む。
これでこの村での用事は終わりだ。別れを惜しむ子供達に、また遊びに来ると約束して村を後にした。




