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ギルドにて


「もうさぁ、ホントさぁ、何て言うかさぁ、アンタさぁ……!!」


 拳をフルフル握り締めたまま疲れた様子で言葉を振り絞るケイ。次いでクリスも癇癪を爆発させた。


「どうして常識をすっ飛ばすんですか~!」


 (こちらの)常識を知らないからです。今度は俺、何やらかした?

 二人の剣幕に、話し込んでいたリオ達もこちらに意識を向けてきた。


「どうした?」


「トオルのスキル欄がスキルの見本市になってる」


「は?どういう……っ!?」


 端的なケイの言葉に、怪訝そうに首を傾げ、俺の手元を覗き息を呑むヒューイ。


「ちょ、ちょっと見せてくれ!……あっ」


 ヒューイがカードを引ったくると、表示されていた文字が消えた。慌てて操作すると白文字化したスキルのみが表示された。

 ほう、これはシンプルで見易い。一番高いスキルは算術でレベルは5か。確かスキルの最高レベルは10だっけ?


「十段階評価の五。つまり可もなく不可もなく、か?」


 ポツリと呟く俺の視線の先を捉え、拳骨が落とされた。


「違う!算術レベル5といえば充分優秀なんだ!……もうコイツ無茶苦茶じゃないか……!!」


 後半の台詞はリオに向けた愚痴である。若干言葉が崩れてきている。


「そうだ。だから相談したんだ。教育係は一人でも多く居た方が良いと思ってな」


 ポンポンと肩を叩き宥めつつ、逃がさぬとばかりに退路を塞いでいる。

 御愁傷様、と眺めていたらルーが自らのカードを差し出してきた。


「トール、ウチのスキル欄を出してみてくれニャいか?」


 カードを受け取り、操作する。すると先程のようにスキルがズラリと並んでいた。その内、白文字化したものだけを目で拾ってゆく。

 ほほう、短剣術に双剣術、隠行、偵察、闇魔術もあるのか。闇の加護とは何だろう?他にも暗視、投擲術など、なかなか多芸だな。つーか暗殺者スタイル?


「決まりニャ。トールが扱えば修得・未修得限らず、全てのスキルが熟練度まで見れるニャ。これは秘匿すべきかニャ?」


「秘匿するべきだろう。大々的に知れたら、引き抜きや口封じに走る者が出そうだ。実際、うちに欲しいくらいだしな」


 難しい顔で腕を組み、物騒な事を口走るヒューイ。


「いやいや。口封じって何だよ?」


「知られたくない事や知らなくていい事、本人すら知らない情報まで知ってしまうのが問題なんだ。俺達がカードを弄っても、この○○の加護なんてスキルは出てこないぞ。他にも、ギルド職員の俺ですら見た事のないスキルが沢山ある。中でも厄介なのが犯罪系だな」


 うわぁ、マジかい。そういや悪食のスキルもヒューイが弄った時には表示されなかったな。……悪食?俺の手料理の事か?

 納得がいかず首を傾げる俺に、身を乗り出して勧誘してくるヒューイ。


「どうだろう?冒険者になるより、うちの職員になってみないか?君のスキル構成ならどこの部署でもやっていける。文字を書く能力は課題だが、一週間でそこまで書けるのなら上達は早いだろう。君の秘密を個人で抱え込むのは危険だし、何よりレベルに依る能力強化を見込めない君が冒険者になるのは自殺行為だ」


 彼が俺の能力を買ってくれているのは分かる。心配してくれている事も、町の中での仕事なら危険度が低い事も分かる。


「申し出は嬉しいが、リオ達が付いてくれる期間は、サポーターとして働きたいんだ」


 俺一人で町の外に出れば自殺行為だが、ここまで俺を連れてきた実績のある彼女達と行動を共に出来るならば、そこまで危険とは思わない。

 レベルが上がらないなら、せめてスキルを上げなければならない。

 恐らくだが、俺のINTが高いのはスキルが関係している。

 算術を筆頭に「異界の知識《○○学》」(言語、歴史、地理など)といった知識系のスキルを多く保有していたのだ。(勿論、隠れスキルだ)

 つまりスキルを磨く事は能力の底上げに繋がる。現在の俺のステータスは、INTを除き十歳の子供と変わらない。もうこれは戦闘が苦手など言ってられない。一つでも多くの戦闘系スキルを身に付ける必要がある。でないと俺は本当にお荷物になる。

 幸い俺の魔術は支援に向いている。冒険者にはなれなくても、彼らを支えるサポーターにはなれるかもしれない。

 リオ達が示してくれた可能性。身体能力の乏しい俺にどこまで出来るか分からないが、何もしない内からその可能性を俺自身が否定してはならない。


 俺の決意を見て取ったのだろう。ヒューイはフウと溜め息を吐きつつ、乗り出していた身体を元の位置に戻す。


「そうか。君自身がそう決めたのなら俺からは何も言えないな。気持ちが変わったらいつでも言ってくれ。ギルドは君を歓迎しよう」


「ありがとう」


 最後に握手を交わし、俺達はギルドを後にした。

あまり詳しい設定は考えていません。

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