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武具屋アイロン


「さて、漸く登録が済んだわけだが……装備をどうするかな?」


「うーん。トオルの能力を鑑みると、下手な物を着けちゃうとマイナスにしかならないからねぇ」


「重い装備は絶対無理ニャ。すぐにへばるのが目に浮かぶニャ」


 流石だ。皆解ってるぅ。つくづく冒険者に向いてないな、俺。

 取り敢えず現物を見てから判断しよう、と次は武具店に向かった。


 武具屋『アイロン』

 東区にある冒険者御用達の店。高価な武具こそ扱っていないが、確かな品質と店主の人柄が、初心者からベテランまで幅広い層に愛されている。


 頑丈な重い扉を開き、店内に足を踏み入れる。

 目に飛び込んできたのは、広い店内に所狭しと並べられた武具・防具と、それらを見つめる武装した者達。中には剣を鞘から抜き、感覚を確かめている者も居たが、その表情はまさに真剣そのもの。命を預ける相棒に妥協はしない、そんな意気込みを感じさせる光景だった。


「トオルさんは何か希望はありますか~」


 カウンター脇に立つクリスに声を掛けられ、現実に戻される。既に他の三人は、自分達の得物を見に行ったようだ。

 いかんいかん、この店に漂う空気に圧倒されていた。クリスの傍まで寄り、道中考えていた案を口にする。


「武器はメインは棍、サブでナイフ。防具は手足を保護する手甲と脛当て、あと指ぬきグローブが欲しい」

 刃物を持ち歩くのは抵抗があるので、まずはサブのナイフから慣らしていくつもりだ。だがやはりそんな注文は珍しいらしく店主の気を引いてしまい声を掛けられた。


「えらく貧弱な装備だな。大丈夫なのか?」


 店主は灰色の毛並みを纏う半獣人族で、スラリと伸びた細い手足に無駄のない筋肉、チラリと覗く鋭い牙に涼しい眼差し、流れる尻尾。野性味溢れる細マッチョだ。名前はウィルさん。


「能力的にも性格的にも前衛には立てないし、これ以上重くすると動きが鈍くなるから」


「おいおい!別の意味で大丈夫かよ!?」


 鼻先に皺を寄せ、傍に居るクリスに噛み付くように問い掛ける。


「はい~。私達も無理をさせるつもりはないので~、恐らく~きっと~大丈夫です~」


「……なぁ、本当に大丈夫、なのか?」


 耳を垂らしながら憐れんだ目を向けて聞いてくる。この人メッチャええ人や。……人、かな?

 安心させるつもりで目を合わせ、頷く。


「大丈夫だよ。無理強いされてる訳じゃないから。それで棍については、素材は軽さ重視で、両端を金具で補強したもの。金具は左右でやや重さを変えて重心を調整したい」


 支点を中央よりずらす事で、回転に必要な力を小さく出来ると聞いた事がある。その分、切り返しに必要な力は大きくなるそうだが、非力なこの身にはこういう小細工は必須だ。

 そこまで聞くと、心配そうな表情から一転、仕事の顔に切り替え、奥から木箱をガチャガチャ出してきた。


「棍はそこらに立て掛けてる物の中で、手に馴染む物を選べや。金具は実際に色々嵌めて、納得の出来る物を選ぶぞ」


 木箱の中身の金具を全て机の上にぶち撒け、空いた木箱を椅子にして最後まで面倒見てやるとばかりに、木槌片手に宣言した。


 (やだ……ウィルさん男前……!)


 そんなウィルさんと二人で微調整を繰り返す。軽すぎると威力が望めないし、重すぎると手首に負担が掛かってしまう。納得いく物に仕上げるまで小一時間ほど掛かった。


「トオルよ。本当にこれで良いのか?金具の重さに対して、棍の素材が木だから耐久性に、ちと不安があるんだが?下手をすると半ばで折れるぞ」


「ああ。それに関してはこちらで手を打てるから問題ない。ウィルさんのお陰でとても良い物になった。ありがとう」


 棍と防具の入った袋を抱え、握手を求める。笑顔で握手を交わしたが、人の手を握るなりウィルさんの眉間に皺が寄る。


「子供みたいに柔いだな。本当に扱えんのか?」


「心配性だなぁ、ウィルさんは。……これから頑張るんだよ」


 ええ、今まで扱った事などありませんよ。武器スキル獲得の為、中距離で振るえる打突武器を選んだだけです。

 俺の答えに牙を剥き出しにし唸るウィルさん。ゆるゆる息を吐き出して。


「……死ぬんじゃねえぞ」


 万感の想いを籠めた言葉を口に乗せる。

 そんな彼に「また来ます」と笑顔で約束し店を出た。



「無事に冒険者登録も済み、最低限の装備も整えた。なので早速明日からは、午前中は私達が日替りで訓練の相手を務め、午後から皆で町の外に出て依頼をこなす」


 成程、棍はケイから、ナイフはルーから学べという事か。……待て。明日からだと……?


「異議ありっ!!冒険者活動を始めるにあたり、準備期間として三日間の猶予を要求する!」


「却下だ」


 即答かよ!いやいやいやいや、ちょっと待って貰いたい。登録と装備で準備完了か?俺のステータスの低さ、ギルドで散々こき下ろしたくせに。せめて、切り札や奥の手の一つや二つや三つや四つ、準備するくらいは許して欲しい。

 その後も粘り強く交渉を重ねたが、こちらの提案が呑まれる事は無かった。


ウィルさん。ドンキで見かけた狼のマスクからキャラが生まれた。

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