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エレメント皇国物語  作者: rurata
第一章:エレメント皇国
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第六話

感想が全然来なくて少し寂しい今日この頃。

ある朝、起きてきたら、アクィフォーレはすでに起きていてキッチンで鼻歌を歌いながら料理をしている途中だった。今日は休みの日で、アクィフォーレは朝からご飯を作ってくれるみたいだ。アクエリの料理もおいしいけど、アクィフォーレの料理はそれよりもさらに美味いからとても楽しみだ。


「アクィフォーレ、おはよう。」


挨拶をするとアクィフォーレはクウリに気づいて、手を止めずに挨拶を返した。


「あらクウリ、おはよう。これから走りに?」


「うん、ちょっと。」


「ご飯は30分ぐらいで出来ると思うよ。熱い内に食べたければあまり長く走るんじゃないよ。」


「うん、分かった。すぐ、戻る。」


「了解。じゃあ、待ってるよ。」


「アクィフォーレ、後で、お願い、ある。」


「お願い? 何か大事な事?」


「大事じゃない。小さい、お願い。」


「うん、とにかくお願いがあるんだね。分かったよ、ご飯の後で時間を作るよ。」


「ありがとう。」


「じゃあ、走りに行っておいで。」


「うん、いってきます。」


そういって、家を出る。


頼みたいことというのは、剣を借りることである。体力も少し戻ってきたし、全力でやれなくても、ゆっくりと形をなぞるだけでも良い練習になる。とにかく、ご飯の後にお願いして剣を借りよう。



ランニングから戻って、汗を拭いてからダイニングに入ってきた時、朝食はもうできていてテーブルの上で配膳されていた。今日はオムレツとパンみたい。食べ物からはできたての湯気があがっていて、香ばしい匂いとともに食欲をそそった。


テーブルにはアクエリとアクィフォーレがもう座って、クウリの事を待っていた。


「クウリ! おはよう。ちょうどご飯の用意が終わったところよ。」


「あっ、クウリ、戻ってきた? あともう少しで勝手に始めるところだったよ。」


アクィフォーレはいたずらっ子のように笑って、それが冗談だと告げたが、ちょっと悪い事をしたかも、と思った。


「ごめんなさい。遅かった。」


「気にしなくていいのよ、クウリ。本当に、ちょうど今準備が終わったところなのよ。お母さんが意地悪くなってるだけ。」


母に怒り顔を送ってから、クウリに元気付けの言葉をあげた。


「ううん、待たせた、本当。ごめんなさい。」


「クウリ・・・」


目を潤ませながらクウリに何かをしようとしているアクエリの横から、パンパン、と手を叩く音がする。


「はいは〜い、そこまで。クウリ、本当に気にしなくていいよ。アタシは少しくらい待つのは全然かまわないんだから。それより、せっかくご飯が暖かいんだから、熱い内に食べましょう。」


誰のせいなのよ! とでも言いたげな顔でアクィフォーレを睨むアクエリだったけど、今更なにか言っても朝食が遅くなるだけだと知っているので黙ったまま席に座った。


「・・・ふぅ、そうね。クウリも座ったら?」


「うん、ありがとう、エリお姉ちゃん。」


そう言って、クウリも席に着く。それからアクィフォーレが食前の祈りの音頭をとって、他の二人もそれに続いた。



祈りが終わって、皆が食べ始めてから少しするとアクィフォーレがクウリに話しかけた。


「それでクウリ、お願いって言うのはなんなの?」


「お母さん、お願いって?」


そんな話を初めて聞いたアクエリが母にどういう事なのかを聞く。


「今朝、出かける前にクウリがそんな話をしてたから、今聞こうとしているのよ。」


「そう・・・」


そしてクウリがアクィフォーレの質問に答える。


「えっと・・・剣を、貸して欲しい。」


一瞬、何を言われたのかが分からなくて目を瞬かせるが、頭が追いつくと、今度は不思議そうな顔でクウリを見る。


「剣? 剣って敵をばっさばっさと切る、剣のことだよね?」


いいながら手で何かを払う動作をする。それに頷きながら答える。


「うん、その剣。」


「ふむ・・・それはまた唐突だね。どうして剣を貸して欲しいのかを聞いてもいい?」


「いい。」


少し間を開けて言葉を続けるクウリ。


「俺、家で、剣、習っている。でも、ずっと、練習、していない。」


クウリの答えを受けて、アクィフォーレがその意味を吟味する。


「つまりこういう事? クウリは向こうの世界で剣を習っているけど、こっちに来てからずっと練習していない。でも、腕を鈍らせたくないからこっちでも練習がしたい。そのために剣を貸して欲しいわけ?」


その通りである。そして、その考えがあっているのを教えるために首を縦に振る。


そのとき、それまで静かに聞いていたアクエリが話に割り込んだ。


「私は賛同しかねるわ。だって、剣を振り回すのなんて危険じゃない。」


「せめてお母さんがクウリの腕を見極めてからいいじゃない。それまでは木剣を持たせて、危険じゃないと判断したら本物を貸したらいいと思う。」


「うん、そうだね。アタシもその方が安全だと思うよ。」


そういって、アクィフォーレがクウリの方に向く。


「というわけなんだけど、クウリ。とりあえずは木剣を使ってもらっていい?」


別にどうしても真剣を使いたい訳でもないし、ここにはきっと刀のような剣などないと思うので、アクィフォーレに頷く。


「そう。だったら朝食の後に木剣を出しておくから、練習したくなったらアタシを呼んで。」


「分かった。ありがとう、アクィフォーレ。」



朝ご飯の後はアクエリと言葉の勉強が数時間続いた。そして今は昼ご飯の後の一休みだ。


いつもならこの後は言葉の勉強がさらに続くのだが、今日は遠慮させてもらった。約束通り、アクィフォーレは朝食の後に木剣を出してくれたので、それを使って剣の練習をするつもりなのだ。


「アクィフォーレ、今から、剣の練習、いい?」


居間に続くドアからアクィフォーレを呼ぶ。


ソファーで本を読んでいたアクィフォーレが顔を上げ、クウリの言葉に反応する。


「クウリか。今から? うん、いいよ。ちょうど切りのいいところまで読んだし。では、外に出るとしますか。」


“よいしょっ”とかけ声と共に立つアクィフォーレ。こちらの方へと歩いて、距離が一メートルぐらいになると一旦止まる。


「剣は・・・持ったみたいだね。どこでやる? 家の前?」


「うん、家の前でいい。」


「はいよ・・・アクエリ〜! これからクウリの剣の練習を見るんだけど、あんたも見る?」


自分の部屋にいるアクエリに聞こえるように声量をあげて呼ぶアクィフォーレ。


やや遅れて、家の奥からアクエリの返事が聞こえてくる。


「私も見る〜! でも、私はもう少し時間がかかるから先にやっていていいわよ〜!」


「というわけみたいだよ。先に外に出ていようか。」


「うん、分かった。」


と返事をして、二人で家を出る。



ティアレイク家は街の外れにいて、周りには他の家はあまりいない。アクィフォーレは街の警備隊の隊長なのに街から離れているのを不思議に思ってなぜと聞くと、この家は親の代から住んでいて愛着があるかららしい。そういうわけで、剣の練習をするには充分に開けた場所である。


外に出たらクウリは家からある程度離れて立って、アクィフォーレが近くの石に腰をかけた。


「じゃあ、アタシはここで見てるよ。クウリは自由に練習してていいよ。」


一度頷いてから練習を始める。


まずは準備運動と剣に慣れるために素振りをする。


「ふっ・・・ふっ・・・ふっ・・・ふっ・・・」


クウリの素振りを見物していたアクィフォーレが感心した。クウリの太刀筋は堂々としていて、全くと言っていいほど乱れない。それを見ただけでもクウリの技量のほどが分かる。


素振りを二十分ぐらいやって、体が充分に暖まったら型の練習に入った。最初は全力ではなく、三割程度の力で体を動かす。


上段からの振り下しから始まって、突きに続いて、横払い。そして横払いの力を逃さないために、体を低くしながら回転して、剣を頭上に構えてまた正面に向く。


土神流にはこういった風に飛んだり、回ったりするのでよく踊っているように見えると言われる。そのためか他の剣士に軽く見られがちだけど、決して弱い訳ではない。本来なら、こういった動きは何倍もの速さで行うものなのである。なので、技の終わりではかなりの慣性が着いていてそれを止めるだけでも一苦労になる。それに余計な力を奪われないための回転、または跳躍なのだ。


土神家は特にこの剣術に適している。土神家の人間は代々普通の人より氣の扱いが優れていて、それを極めていけば体の動き、剣の太刀筋などが数段速く、力強くなって先に述べたような問題にあたる。余談であるが、このために普通の人が土神流を習ってもただの派手な剣術になりやすい。今では命をかける戦いもないので、門下生にそのまま教えてもそれでいいのだけど、昔は弟子を土神家以外の人間は取らない主義のようだった。



「ふぅ・・・・・・・」


(結構、体の調子がいいな。技の切れもいいし、これはもう少し本気でやっても大丈夫かも?)


アクィフォーレはクウリが練習している様をずっとその横で座りながら見ていた。そしてクウリがすばらしい剣の腕を持っているという考えは変わらなかった。むしろ、それは良い方に塗り替えられていった。しかし、同時にある疑問が頭の隅で引っかかっていた。


(うーん、どこかで見た事があるような・・・)


だけど、いくら記憶の中を探っても思い出せなかった。それに、異世界から来たクウリの剣術を知っているのは考えられない事だ。きっとただの思い過ごしだと結論して、またクウリの練習へと視線を戻した。


そのクウリといえば、動きを止めていた。


「クウリ、もう練習は終わり?」


と聞くアクィフォーレ。


「ちょっと、休憩。後で、続ける。」


「そう。こっちに水があるけど、飲む?」


「うん、飲む。ありがとう。」


「いえいえ。」


と言って、アクィフォーレが水の入ったコップを差し出す。クウリはそれをもらって、ゆっくりと飲み干す。アクィフォーレはおかわりを注ごうとしたけど、クウリは首を振って断ると、辺りを見回した。何を探しているのかを分かったアクィフォーレが声をあげた。


「そういえば、アクエリは遅いね。何に時間をかけているんだろう。このままじゃあ、クウリの練習終わっちゃうよ。」


それに反応して、後ろからアクエリの声がしてきた。


「ちょっと勉強していただけよ。」


「あら、遅かったじゃない? それで、勉強をしていたって? それって学校の? どうしてまた。今は休みでしょう?」


「最近はいろいろと忙しかったからあんまり勉強する時間がなかったのよ。だからちょっとだけ復習とかしていたのよ。それに、休みでも少しぐらい勉強をしないと、学校に戻ったら困るじゃない。」


「さすがはミスト一の魔法学校、クーランの学年主席は違うね〜。」


「なに言ってるのよ、お母さんこそ主席で卒業したのでしょう?」


「アタシ、そんな昔の事は憶えていません〜。」


と子供のように反論する母に少し、あきれるアクエリ。


「はぁ・・・もう、お母さんったら・・・それで、クウリの練習はもう終わっているの?」


と話題を変えて、クウリに話しかける。


「ううん、まだ。ちょっと、休憩。でも、休憩、終わり。また練習、始める。」


「そうなの。今度は私も見ているけど、大丈夫?」


アクエリに頷いてから、剣を手に取り、さっきの場所まで歩く。



数回、深呼吸をしてから、剣を中段に構える。


(さっきの、うまくいった事だし、今度は本気でやってみるか。)


と思い、決定して、剣の柄を握り直す。


この場合の本気とは氣を練って、身体能力を上げてから動く時の事を指す。だから、クウリは氣を練るために目を閉じて精神を集中させてから、土神流独特の呼吸方法で氣を集め始める。



その様子を少し離れた場所で見ていたアクィフォーレとアクエリが驚きと動揺で目を見開いた。


「ちょっと、お母さん、これって・・・・」


「うん、それにこの量は・・・」


「止めなくてもいいの? 私から見ても、危険だと思うわよ。」


「でも今止めても、それもまずいよ。とりあえず見守るしかないよ。」


「お母さん・・・」


「クウリも落ち着いているみたいだし、きっと大丈夫だよ。」


もう、見守る事しかできないということを歯痒く感じながら、娘に気休めの言葉を贈る。



(ふぅ・・・よし、行くぞ!)


氣を充分に集めたクウリが先ほどの一連の動きの初動に入る。


ぶん!!!!!!!!


剣を振ったクウリが一番驚くような大きな風切り音が聞こえてくる。


(なっ、なんだ!?)


この剣速はあきらかにおかしい。速すぎる。しかし、同時に、止められない。無理に止めでもしたら、きっと怪我をするだろう。そのために、初撃に続く連撃を継続させた。


ぶん!! ぶん!! ぶん!!!


幸いな事に、土神流は速くて、重い攻撃のための流派である。攻撃の慣性を円の動きで力の方向を変えて、逆らわないため、この異常に速い剣速にもなんとか対応できる。


数秒後、型の動作を全て終え、砂塵の中でクウリが動きを止めた。そして大きく安堵のため息を吐き出して、腰の力が抜けたのか、そのまま地面に座り込んだ。


「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・」


「「クウリ!!!」」


心配顔でアクエリとアクィフォーレがクウリの側まで駆け寄る。


「クウリ! 大丈夫!?」


最初に駆けつけたアクエリがクウリに声をかけた。


「エリお姉ちゃん・・・はは」


力弱く笑って大丈夫だと教えようとする。


「クウリ! よかった!」


「それにしても、さっきの、凄かったね〜。」


クウリが無事だと確認できて一安心したためか、気楽な声で感想を告げるアクィフォーレ。


「クウリ、立てる?」


聞かれて、立とうとするけど、まだ腰が抜けていてうまく立てない。それを見て、アクィフォーレが少し笑った。


「ふふ、まだみたいだね。アクエリ、クウリを居間まで運ぶよ。手伝って。」


「分かったわ。いい、クウリ?」


「うん。ありがとう。」


それから二人の助けを借りて、家の中まで歩いた。



居間に入ってからまずはクウリを座らせて、そのあとに他の二人も席を取った。


「クウリ、一応聞いておくけど、剣の練習っていつもあんな感じなの?」


違うとは思っていたけど、その可能性があったのでアクィフォーレが聞いた。


「違う。」


と首を横に振りながら否定する。


「やっぱり。それとクウリ、どうしてああなったのかは分かる?」


また首を横に振る。いつものように練習していたはずだけど、それであんな事になるはずがない。確かに氣を練っていたので、多少は身体能力が上昇する予定だったがあれははっきりと言って異常な上昇ぶりだった。


今度はアクエリが答えた。


「あれはね、エーテルの影響なのよ。」


「エーテル?」


「そう。つまりは魔法よ。」


「魔法? でも、魔法、飛ぶ、物、動かすだけ、じゃない?」


「確かに、物を動かすためや、飛ぶために魔法を使えるわ。でも、エーテルを直接体に取り込んで、体を強くすることもできるの。」


魔法だったのか? 自分にはいつもと同じ“氣”と感じていたけど。アクエリはそれをエーテルと呼んだ。


「クウリ、魔法は使えなかったよね?」


「うん、でも・・・」


「でも?」


「もしかして、エーテル、知ってるかもしれない。」


二人はこれに明確な興味を示した。


「俺の剣、体を強くする、方法、使う。」


「それをさっき使ったのね?」


「うん。それ、周りから力、集めて、自分の物にする。それがエーテル?」


「お母さん、どう思う?」


「状況から判断しても、多分エーテルだと思うよ。」


やはり、氣はエーテルと同じだった。それなら、もしかして・・・


「俺、他の魔法、使えるかもしれない?」


「そうね。魔力--エーテルを操れる総量の事ね--はとても大きいみたいだし、後はそれを感じ取り、操作できるようになれば、飛ぶ事や物を動かす事ができるようになるよ。」


「俺、なりたい。アクィフォーレ、教えてくれる?」


「アタシはいつでもいいけど、普段は仕事で家にいないからね・・・そのときはアクエリに頼むといいよ。アクエリも魔法は得意だからね。」


そう聞いてアクエリの方にむく。


「ええ、私も協力するわ。だから、いつでも頼みにきて。」


「エリお姉ちゃん、アクィフォーレ、ありがとう!」


「でも、一つだけ約束して。」


「何?」


「一人で練習しない事。エーテルの暴走は危ない事だから、側に私かお母さんがいる時だけ練習すると約束して。」


確かに、それは怖い。今日は暴走した訳ではないけど、もしあれほどの力を制御できなくなったら、ぞっとする。


「分かった。約束する。」


「だったら、私から他に言う事はないわ。お母さんからは?」


「アタシも特に付け足すようなことはないよ。」



その話し合いが解散した後、クウリはそのまま居間で休憩した。剣の練習での出来事がまだ後を引いていて、気力が回復していなかった。それでも、得るものはあった。今まで“氣”と思っていたものがエーテルと同じ存在であることと、自分も魔法が使える見込みがあるみたいということだ。


(よし、がんばって、俺も空を飛んでやる!)


という決意をしてから少しの間、眠りにつく。


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