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エレメント皇国物語  作者: rurata
第一章:エレメント皇国
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第七話

エーテルなるものが氣と同等の存在だと言う事に気がついてから数日がたった。依然としてその操作はままならないが、最近になって、薄々とだけど、周りにあるエーテルの存在が感じられるようになってきた。


「クウリ、今日もまた魔法の練習、したいの?」


「うん、アクィフォーレ。今日も、練習。」


「アタシはこれから仕事にでかけないといけないけど、アクエリは多分ずっと家にいるから、あの子に付き合ってもらって。」


「分かった。エリお姉ちゃんと話す。」


「そうしなさい。それじゃあ、アタシはそろそろ出ていくよ。」


それから家の奥の方に呼びかける。


「アクエリ〜! アタシ、仕事に行ってくるから、あとよろしく〜。それと、今日もクウリが魔法の練習がしたいって言ってるから、後で見てあげて〜!」


「分かった〜。いってらっしゃ〜い!」


「いってきま〜す!・・・じゃあ、クウリ、アタシ行ってくるよ。」


「うん、いってらっしゃい、アクィフォーレ。」


出て行くアクィフォーレを見送ってから、クウリは中に戻って、この後の練習に備えた。



「クウリ、今日も魔法の練習だっけ?」


昼食の後片付けが終わった後、アクエリが聞いてきた。


「うん、今日もお願い、エリお姉ちゃん。」


「分かったわ。これからすぐに始めたい?」


他に予定もないので頷く。


「だったら外に行きましょう。」


そういってアクエリは外に向かって、クウリもそれに続いた。



二人で家の前に立つと、アクエリが魔法の説明を始めた。


「クウリは魔法の一つ、外のエーテルを体に取り込んで、体を強くすることができる。でも、まだ体の外のエーテルを操って物を動かすことができない。そして今はまず、周りのエーテルを感じる事から始めている。ここまで、いい?」


「うん。」


「じゃあ、始めましょう。まずはいつものようにゆっくりとエーテルを集めてみて。それで、できるだけそのエーテルが集まる感じに集中して。」


「分かった。」


一度息を吐いてから、神経を集中させて、ゆっくりエーテルを集め始めた。


「・・・・・すぅ・・・・はぁ・・・・」


今までと同じように、氣を練る感じでそれをやると、体の中にエーテルが集まるのが分かってきた。意識を体の外に向けると、うっすらとそこに何かがあるのが分かる。


(これがエーテルなんだな・・・)


「・・・エリお姉ちゃん、エーテル、感じる。」


「そう。今は体の中のエーテル量が高まっているから感覚が敏感になっているのよ。いつでもエーテルの存在が感じられるようになるのが次の段階なの。その感じを掴んだまま、今度は体の中のエーテルをゆっくり解放していって。」


アクエリの言う通りに、息を吐き出すようにエーテルを解放させ始める。


「ふぅ〜〜〜〜〜〜・・・・」


周りのエーテルはまだ感じられるけど、どんどん弱くなっていく。


「エリお姉ちゃん、エーテル、弱くなっていく。」


「できるだけ長くその感じを離さないで。それをなくしちゃうと、また最初からやりなおしだよ。」


そういうが、その感覚はさらに弱くなってきていて、もうなくなる寸前なのだ。


「もう、だめ、エーテル、分からなくなる。」


そしてついに、ぎりぎり掴んでいたエーテルの感覚が手の指先から逃れる。


がっくりと肩を落として、ため息をつく。


「クウリ、すぐにまた始める? それとも少し休んでみる?」


「また、やる。」



練習は休憩をはさんで二時間に及んだ。クウリはさすがに疲れてきていて、今日の練習は次で終わりにしようと決めていた。


「エリお姉ちゃん、次で最後。」


「最後? あともう少しなのに?」


「でも、エリお姉ちゃん、つまらなくない?」


「私は大丈夫よ、気にしないで。」


「だったら、もうちょっと、やる。」


「うん、あともう少しだけがんばろう。」


「がんばる。エリお姉ちゃん、何か、助けになるもの、ない?」


「助け? そうねえ・・・クウリ、エーテルの事はどう思っているの?」


エーテルの事? ふむ・・・あまり考えた事はなかった。ただ漠然と、そこに存在しているとしか認識していない。氣と似ていることもあるけど、それは体の中にある時だけなのだ。


「よく、分からない。そこにある。頭で、分かるだけ。」


「やっぱり、そうなのね。多分、心のそこではまだ信じていなくて、それが邪魔をしているんだと思うの。クウリ、こういうふうに考えてみたら? 空気っていう物は目で見えないけど、どこにでもあるでしょう? エーテルも空気と同じと考えられないかしら?」


空気と同じ? 空気って実際に存在するものなんだって分かるけど、それって触感があることや、酸素や、窒素が物理的にあるからなのだ。しかし、エーテルっていうものはそれと全く違って、感触では分からないし、その影響だけが分かる物なのだ。でも、アクエリは空気と同じように思うに言ったので、彼女にはそう感じるのだろう。つまり、自分も触れるほどエーテルが確かにあるものなんだって信じる必要がある。


「エリお姉ちゃん、やってみる。」


「ええ、がんばって、クウリ。」


「・・・・・ふぅ・・・・・」


ゆっくりと息を吐いて、自分を落ち着かせる。


「すぅ〜〜〜〜〜・・・」


そして次にエーテルを集めるために息を吸い込む。しかし、今度は以前とは違い、エーテルを集める過程でも、それを意識的に感じる努力を試みる。


(エーテルは空気と同じように当たり前に存在する・・・)


アクエリが言ったように、そう信じようとがんばる。


そのおかげかどうかは分からないが、今回エーテルの存在を感じられるまでかかった時間が前回と比べてかなり短かった。


(掴んだ!)


いつもならここで体内のエーテルを減少させながらその感覚を保ち続けるためにがんばるのだけど、今度は違うことを試したい。この状態だと体の近くにあるエーテルがうっすらと分かるけど、もっと大きい範囲--世界全体--のことは考えていなかった。今度はこの感覚を広めてみたいと思っている。もしかしたら、エーテルが世界のどこにでもあるということを体で感じたら、それが感覚に残るかもしれない。そのために、体内のエーテルを減少させるのではなく、逆に増大させて感覚をさらに敏感にさせたい。その旨をアクエリに伝えて、彼女の反応を待つ。アクエリは少し考えてから--


「それはおもしろい考えね。うん、そうね、うまくいくかもしれない。だけど、エーテルを取り込みすぎたらこの間のようなことが起こるかもしれないから、私が危ないって判断したら止めてね。」


「分かった。」


アクエリの許可を得て、エーテルをさらに取り込む。


体の中のエーテル量が上昇するにつれて、クウリはエーテルの感覚範囲が徐々に広がるのを感じた。それが分かって、エーテルを集める速度を速める。まだアクエリが心配するような段階ではないけど、このまま行くとそう遠くないうちにそうなるのは明確だ。


「クウリ、もうちょっとで止めるべきだわ。いい?」


「分かった。」


一応アクエリに答えたけど、クウリはそれどころではなかった。当初のもくろみ通りに、クウリのエーテルの感覚範囲は劇的に広がっていた。


(はは、こりゃすごいや・・・)


確かにエーテルは空気のようにどこにも存在している。今ではそれがはっきりと分かる。それに、周りのエーテルの存在だけでなく、それの密度も分かる。それで分かった事はエーテルにはむらがあり、そして人間や植物などの生き物に集中している傾向がある。


出来るだけ長くその感覚に浸ってから、体内のエーテル量を減少させる準備に入る。


「アクエリ、エーテルのこと、よく分かった。これから、体の中のエーテル、減らせる。」


「分かったわ、クウリ。ちょっと心配していたわよ。とにかく、応援しているから。」


「ありがとう。」


ゆっくりとエーテルを解放させながら、その感覚をなくさないように努力する。やはりエーテルが少なくなっていくにつれて、その感覚も弱くなっていたけど、決して無くなる事はなかった。そして、ついに集めたエーテルを全て解放させた時、とても小さくだけど、その感覚がまだ残っていた。


「・・・・・ふぅ・・・」


息を吐いてから目を開けるとアクエリが声をかけた。


「どう、クウリ? 成功した?」


「うん、エリお姉ちゃん。少し、だけど、エーテル、分かる!」


それを聞いたアクエリはまるで自分のように喜んでクウリに駆け寄った。


「クウリ! やったね! これは大きな前進よ!」


クウリの手を取って上下に大きく振るアクエリ。


「あはは、エリお姉ちゃん。」


「次はその感じをもっと広げて、どうやってエーテルを操作したらいいのかを覚えたら、他の魔法も使えるようになるわ。」


「うん。」


「クウリ、今日はもう終わりにする? それとも、もっと練習を続けたい?」


せっかく掴んだ感覚をなくしたくないので、できるならば今からもっとそれに慣れたい。


「もっと、やりたい。忘れたくない。」


「分かったわ。でも、その前に少し休憩するべきだわ。ここで待っていて。すぐに水を持ってくるから。」


水を取りに行くアクエリを見ながら適当な場所で座った。


(・・・はは、やったぜ・・・それにしても、あのエーテルの感じはすごかった。これからは常時あの時の感じのままでいられるようにがんばらないと。そしたら俺はついに、ハリーポッターばりにホウキにまたがりながら空を飛ぶ魔法使いに仲間入りだ。)


そんなことを考えながらアクエリが戻るのを待つクウリであった。



数日後、エーテル感覚は順調に敏感になってきて、簡単なエーテル操作も行えるようになってきた。まだコップなどと言った小さなものを動かす程度だったけど、もっと大きな物も可能だと思っている。そして、今日はついに飛ぶ練習が許可された。


クウリは家の前で手にホウキを持ちながら、アクエリの説明を一言も聞き逃さないために集中して話を聞いていた。


「いい、クウリ。飛ぶ魔法自体はそんなに難しくないわ。原理は小さいものを動かす時と同じ。ただ、動かすものがもっと大きくて、それに乗りながらしないといけないだけ。飛んでいる時に気をつけないといけないことは主に二つあるわ。一つ目は、決して乗っているものを手放さない事。自分で自分の事は浮かせないから、空の上ではその手に持っているホウキだけが命を繋げている訳なのよ。二つ目の気をつけないといけないことは、飛んでいる間の姿勢。」


「姿勢?」


「そうよ。魔法で浮かしているのはあくまでホウキなのだから、姿勢を崩してしまうとホウキから滑り落ちる危険があるの。」


「一番、安全な、姿勢は?」


「手は体の前で少し離してホウキを持って。」


アクエリの言う通りにしてみる。


「こう?」


「そうよ。そして足でホウキを跨いで。そう。あとは足でバランスを取りながら、ホウキに座って。とにかく、飛んでいる時は手を離さない、姿勢に気をつける。この二つの事を忘れないで。そうすれば、エーテルの操作に集中できるから。」


足の間にホウキを置いて、魔法を使う準備に入る。


「それじゃあ、用意はいい? 他の物を動かす感覚と同じよ。違うのは自分がそれに乗りながらやっている事・・・・じゃあ、やってみて。」


一度頷いてから、感覚を澄ましてエーテルの操作に入る。



それにしても、クウリの上達のスピードに驚かされる。


たった数日でエーテルの事を感じられない状態からエーテルを使った魔法で物を動かし、もう飛んでもいいくらいまでに上達している。


そんなことを思いながら、クウリに視線を戻す。


そのクウリは今、目を閉じて、エーテルをホウキの周りに集中させ始めていた。それは目には見えなかったけど、感覚的では渦かなにかの中心にエーテルが吸い込まれて行くような感じだ。


「エリお姉ちゃん、用意、できた。」


「分かったわ。始めはただ浮く事に集中して。」



一度頷いてから深呼吸を数回。それからゆっくり目を開けて、意を決してから足を地面から離した。すると、支えも何もないのにホウキはそのまま落ちず、ただふわふわと漂う。


(はは、すげー、本当に浮いてるよ。)


「エリお姉ちゃん、やった! 浮いてる!」


嬉しさで顔いっぱいの笑顔をアクエリに向ける。


「あはは。うん、クウリ! 飛んでいるよ! 少しここを飛びまわってみたら? でも、まだあまり高く飛んだらだめだよ。」


「分かった、やってみるよ。」


集中して、ホウキを前に進ませようとエーテルを操作する。そしてゆっくりとだが、ホウキはゆらゆらと前進し始めた。


「・・・おっとっと・・・」


少しバランスを崩したけど、かろうじてホウキから落ちるのだけはまぬがれた。やっぱりエーテルの操作をしながらホウキの上でバランスを取るのは難しい。


(でも・・・楽しい! 俺は今、飛んでいるんだ!)


「クウリ、今度はこっちに来てみて。」


アクエリはクウリの左側に場所を変えている。その距離は大体10メートル。


最初の衝動は体を左に傾ける事だったけど、もちろんそれだけでホウキが曲がるはずがなく、クウリはホウキから滑り落ちた。


「わ、わ、わあああ。」


ドサッという音を立てて、クウリが地面にぶつかった。それから間もなく、コロンと音とともにホウキがクウリの横に転がった。


「クウリ、怪我はない?」


「エリお姉ちゃん、大丈夫。」


幸いな事に、落ちた高さはせいぜい一メートル程度で、怪我はおろか、かすり傷もなさそうだ。


体にかかった埃を払いながら立ち上がって、自重気味な顔で笑った。


「はは、転んじゃった・・・」


「大丈夫よ、クウリ。うまくなるための練習でしょう? 今ならいくら落ちても怪我をしないけど、もしもっと高い場所だったなら大変でしょう?」


水で濡らしたハンカチで顔に着いた泥を拭ってクウリのことを励まそうとする。


「さぁ、もう一度がんばろう? きっとクウリならすぐにうまくなるわ。」


そう言って地面に落ちたホウキを拾ってクウリに渡した。


まぁ、初めてはこんなものかな、などと納得もできるし、アクエリの応援にも答えたいので、素直にホウキをアクエリから受け取った。



そんな二人の様子を仕事から早く戻ってきたアクィフォーレが見ていた。


(ふふ、がんばってるね。)


このままのペースなら、クウリはきっと一週間後にはもう、一人でも飛べるようになるだろう。それでも危険はあるから、しばらくは誰かに付き添ってもらった方がいいのだろうけど。


それからもう一度二人の方に向いて、その微笑ましい姿を一瞥した後、背を向けて家の中に入った。そして、その長い金髪が風に靡かせながら、最後にクウリに心の声援を送った。


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