第四話
「牢の居心地はどうですか、ティアレイク『元』隊長?」
アクィフォーレがついさっき起きたと報告を受けたモエラは得意げな顔をして、傷の痛みでうめき声しか上がらない彼女を見下ろしながら言った。
「うっ・・・」
気を失ったアクィフォーレはそのまま牢屋に連れられ、翌日になるまで目を覚まさなかった。
アクィフォーレの傷は酷かったが、命に関わるほどでもなかったので傷の手当ては最低限の処置で済まされた。仮にも隊長に名を連ねているモエラだ。やりたければアクィフォーレの傷を回復魔法で彼女にもっとちゃんとした治療を施せただろう。敢えてそれをやらなかったのは、彼女が起きた時に暴れないようにともっともらしい理由を付けたが、本音はこのようにアクィフォーレが苦しむ姿を見たかっただけだ。
「起きたと聞いていたのですが、これでは会話はできませんね。まあ、いいでしょう。とりあえずは報告です。」
体を動かせないアクィフォーレは恨めしそうに視線だけモエラに向けて、その報告とやらに耳を傾ける。
「さて、今後の事ですが、あなたは王都へ護送されます。多分、その間にお子さん達も逮捕されるでしょう。」
「・・・」
「そんな恐い顔で睨まないで下さい。王都に着けばすぐにでも再会できますので。」
「くっ・・・・・・」
「いやいや、まさかあんな面白い物が見つけられるとはね。何も見つけられなければ証拠をでっち上げる覚悟だったのですが。いやはや、本当によかったですよ。」
アクィフォーレはそれを聞いて悔しそうに顔を歪めるが、声が出なくて、涙を零すだけだった。
モエラはそれを満足そうに見て話を続けた。
「とにかく、あと二、三日経てば護送の準備が整います。その時までゆっくりそこで休んでいて下さい。」
そしてモエラはくすくすと笑いながら牢の中で静かに涙するアクィフォーレを後にした。
** *
数日後、アクィフォーレを王都まで護送する準備ができて、今アクィフォーレは何人にも囲まれて護送車に連行されていた。
「いいですか、いくら手負いと言っても、彼女は隊長まで上り詰めたほどです。そして勿論、その実力もあります。油断していると、怪我ではすみませんよ。」
てきぱきと隊員に命令をして、モエラはアクィフォーレを逃がさないように注意を促す。モエラは王都で自分を待つ報償が待ち遠しく、できるだけ早く出発したい。
護送車に歩くアクィフォーレの目には光はなく、ただ促されるままに歩いた。アクエリやクウリがすでに捕まったと思っている彼女にはもはや希望すらない。だから、モエラの心配は杞憂でしかないのだが、それが全部演技かもしれないということも捨てきれないのでその過剰とも言えなくもない対応も仕方がない。
そして少しするとアクィフォーレは何事もなく護送用の馬車に乗せられた。馬車の扉がガシャリと鍵が閉められるのを確認したモエラは自分が他の馬車に乗り込む前に全隊に話しかける。
「これから異邦人の匿い、並びに警備隊への攻撃の罪で逮捕された罪人アクィフォーレ・ティアレイクを王都まで護送します。抵抗は予想されていませんが、くれぐれも油断しないで下さい。では、出発しましょう。」
「総員、馬車に乗り込め!」
「「「「了解!!」」」」
モエラは副隊長が命令を下している間に一番前の馬車に乗り込んだ。その後ろで隊員が命令を了承する声を聞いてほくそ笑む。
(それでは、行くとしましょうか。これで私も近衛ですか、ふふふ。早く王都に着きたいものです。)
** *
モエラ達によってティアレイク家が調べられている時、アクエリとクウリは実家で起きている事を知らずにいつも通り授業を受けていた。今はちょうどそれが終わり、アクエリとラクは帰る準備をしていた。
「アクエリ、今日もクウリ達の練習に参加するのか?」
アクエリが自分の荷物をまとめている時、ラクが彼女に声を掛けた。話しかけられたアクエリは顔を上げてラクに返事する。
「うん、そうね。一度、寮に戻って着替えてから行くよ。ラクは? 今日は行く?」
「そうだな、今日はお邪魔しようかな。久しぶりにクウリ君と剣の練習もしたいしね。」
決闘からしばらくして、クウリ達は練習のことをケレイユとラクに話した。いつまでも隠せるものでもなかったし、クウリとアクエリのおかげでルミヒアも二人に話す覚悟ができた。それに、アクエリにばれた時点でクウリと二人切りの練習がなくなった訳だから、今更二人増えても同じだろう。
そういうわけでケレイユとラクも時々クウリ達の練習に付き合っている。アクエリほどの頻度ではないが。
「そう。ラクはすぐに行く?」
「ああ、これから行くつもりだ。」
「分かったわ。じゃあ、先に行ってて。私も着替えたらすぐに行く。」
「分かった。では、また後で。」
「ええ。」
二人は笑顔で手を振りあって別れた。
ラクを見送った後、アクエリはいそいそと教科書などをまとめ、自分も教室を後にした。
(急がないと。ラクが行くから大丈夫だと思うけど、ルミヒアさんは油断がならないわ。)
アクエリがそんな考えをしながら寮まで急いでいると、校舎を出た時に気になる光景が目に入った。
(あれはネビア殿下・・・? あんな場所で何をしているのかしら?)
アクエリの視線の先にはネビアが数人の手下と話していた。場所は歩道から少し離れた林に入った場所で、ここからでは話の内容が聞けない。しかしその雰囲気は怪しく、決闘の日も同じように校舎から少し離れて集まっていたのだから、アクエリが気になるのも頷ける。
ネビア達が何を話しているのかを知りたくて、アクエリは足音を殺し、彼らに気づかれないようにそっと近づいた。
「・・・モ・・・ティノ・・・連絡・・・」
まだ離れすぎていて、話の全部が聞こえないアクエリは音を立てないように気をつけながら更に近づく。そして距離が話を聞こえるところまで近づくとアクエリは止まり、激しく動悸する胸を鎮めながらネビアの言葉を聞き取ろうと耳を立てる。
「殿下、バンティノはなんと?」
「ああ、近衛への推薦を餌にしたら阿呆みたいに喜んだよ。くくく。」
「そうですか。それはよかったです。これでティアレイクの奴も終わりですね。」
(なっ・・・!)
「ああ、今日にでも奴らの家に調査が入るだろう。」
「それで何か見つかれば、一週間後にはティアレイクの奴らを捕まえるようにと連絡が来ますね。」
「うむ。休まずにその報告が来れば四、五日後に着くかもしれん。」
「奴らの親が逮捕されたと聞いた時の顔、楽しみですね。」
(お母さん!!?)
「あははは、確かに楽しみだ。お前達がその場にいられないのが残念だが、俺がそれを見てお前達に確り報告しよう。」
「よろしくお願いします、殿下。」
それから彼らの話はしばらく続いたが、アクエリは聞いていなかった。母が逮捕されたと聞いた瞬間、雷に打たれたように体が膠着した。幸い、その動揺の所為で音を立てることなどで見つかる事はなく、ネビア達が帰る時までアクエリは隠れたままでいられた。
(お母さん・・・)
そしてネビア達が離れてから十分ほど経ってもアクエリはショックから立ち直る事はできず、ただ呆然と彼らがいた場所を見つめるだけだった。
(そう言えば、クウリとの練習があったんだ・・・早く行かないと・・・)
それでも頭は正常に戻っていなくて、ただ前からあった予定を機会のようになぞることしかできなかった。そしてアクエリは静かにその場を去った。
** *
(エリお姉ちゃん、遅いな。何やってるんだろう・・・?)
いつものように魔法の練習に来ているクウリとルミヒア。今日はその二人に加え、普段は一緒に練習しないケレイユとラクもいる。
練習場に着いた四人は準備運動を終えて今日の予定について話し合っていたが、クウリはいつもならすでに合流しているアクエリがいないことを心配していた。
しかし、アクエリは小さな子供ではない。だから、クウリはあまり心配するのも変かと思い、気になりつつも、その心配を頭の隅に追いやってラクに誘われている剣の相手をすることにした。
「じゃあ、いいかい、クウリ君?」
ラクに声をかけられてクウリははっとして、目の前の相手に集中する。
「はい、ラクさん。お願いします。」
その言葉とともに二人の間の空気に緊張が走る。
カチャ。
二人は剣を正眼に構え、ふぅー、と息を吐く。そして——
「「はぁっ!!!」」
同時に飛び出して、丁度中間辺りで相対する。
カキン!
二人の剣がぶつかり、甲高い音を立てる。
「ふっ。」
鍔迫り合いが少し続き、ふとラクがニヤリと不敵に笑い、それに釣られてクウリも笑う。そして離れては迫る、離れては迫る。そんな攻防が何度か続いた後、まるで打ち合わせたかのように離れたまま向き合う。
「流石はクウリ君、いつもながらいい腕だ。」
「あはは、ありがとうございます。ラクさんも相変わらずすごいですね。」
「ふっ、君ほどではない。君はまだ余裕があるのだろう?」
「まあ、練習ですからね。それに、ラクさんも同じでしょう?」
「くくく、まあ、そうだな。あまり本気を出してしまうと怪我をするかもしれないしな。これくらいが丁度いいだろう。」
「俺もそう思います。では、そろそろ再開しますか?」
「ああ。」
それから二人は剣の柄を握り直し、互いを見て相手がどう出るか注意深く探る。緊張が段々と高まって行き、最高潮に達し、二人の攻防が再開しようとした時、そこにアクエリが現れた。
クウリ達はアクエリの姿を認めると剣の構えを解き、改めてアクエリの方に向いた。
「エリお姉ちゃん、遅かったね。どうかした?」
「・・・」
「エリお姉ちゃん?」
「アクエリ?」
声を掛けてもアクエリは反応を示さず、二人は不思議に思って彼女の事をもっとよく見てみる。結局アクエリは寮には戻らずに練習場に来たので服装は制服のまま。それを見てクウリ達の困惑が増す。そしてその思いを更に拍車にかけたのはアクエリの状態だ。彼女はラクと別れたたった三十分かそこらで憔悴しきっていた。
「エリお姉ちゃん、どうしたの?」
心配そうにクウリはまたアクエリに話しかけながら彼女の肩を揺すった。するとアクエリはゆっくりと顔を上げるとそれを見たクウリとラクが驚いた。アクエリの顔は蒼白で、今にも泣き出しそうだった。
「ク、ウリ・・・?」
「エリお姉ちゃん、一体何があったの?!」
何があったのかはクウリ達には分からなかった、アクエリの様子からそれがただ事ではないことは察せた。
激しく肩を揺すられてアクエリはやっと正気に戻ってしっかりとクウリの目を見る。
「クウリ、ラク・・・」
「やっと正気に戻ったか、アクエリ。それで、何が・・・」
「クウリ、アクエリさんが来たのか?」
「あれ? アクエリさん着替えなかったの?」
ラクがどうしたのかとアクエリに聞こうした時、アクエリに気づいたケレイユとルミヒアが三人に近づいて彼女の様子がおかしい事に気づく。
「ちょっと、アクエリさん大丈夫? 顔色が悪いわよ?」
「ルミヒアさん、ケレイユ君・・・」
「エリお姉ちゃん、何があったか教えて?」
「クウリ、お母さん・・・お母さんが・・・」
「アクィフォーレに何かあったの!?」
(まさか、死・・・?)
「ねえ、エリお姉ちゃん! アクィフォーレはどうしたの?!」
アクィフォーレに何があったのかは分からなかったが、アクエリの様子からそれがいいことではないと言うことだけは予想できた。
それから場が落ち着くまでは少し時間がかかった。アクエリは泣いて、ただ『お母さん』と呟くだけだし、クウリは気が動転していてアクエリを落ち着かせるはずの人が逆に刺激しているし。
「落ち着いたか、アクエリ。」
「うん、ありがとう、ラク。」
「クウリ君も大丈夫か?」
「ああ、うん。ごめんなさい、取り乱しちゃって。」
「それじゃあ、アクエリ、何があったか話せるか?」
「ええ・・・」
アクエリは落ち着き、やっと話せる状態になったが、どうやって彼女が聞いたことを話せばいいのか分からなかった。だからアクエリは取り敢えず最初から何が起きたのかを説明することにした。
「あの、いきなり言っても分からないと思うからラクと別れた後から話すわ。ラクが帰った後、着替える為に帰ろうとしたわ。その途中でネビア達が何か企む様子で隠れて話してたのを発見したの。それで、前にも同じように隠れて話してたときは碌でもないことを計画してたから、また何か変な事を野郎としているのではと思って、あいつらに近づいてそれを盗み聞きした。」
「さっきの様子からだと、その心配は杞憂ではなかったようだな。」
「その通りよ、ラク。もし彼らが言ってた事が本当なら、とても悪くて大変よ。」
そしてクウリの方に向いて、真剣な顔をして続ける。
「クウリ、特にあなたは覚悟して聞いた方がいいわ。」
「まさか、アクィフォーレが亡くなったとでも言わないよね?」
最悪の事態を冗談風に言うが、それはそうでない事を祈る気持ちで溢れていた。
「そうじゃないけど、それと同じくらいに酷い事よ。」
「え・・・?」
「クウリ、聞く準備はできた?」
「聞きたくない気持ちもあるけど、流石にそう言うわけにはいかないでしょ?」
「そうね。これは絶対に伝えなければいけないことよ。」
「分かった。言って、エリお姉ちゃん。」
「ネビア達が言っていたことはね・・・」
ゴクリ。
「お母さんが捕まったって言う話よ。」
「「「「なっ!?」」」」
「そして、その報告がこちらに着けば私たちも捕まるとか言っていたわ。」
「「「「えっ?!」」」」
驚愕の話を聞かされて一同は言葉を失うが、少しの冷静さが残っていたケレイユはその話の矛盾に気がついた。
「ちょっと待って下さい、アクエリさん。どうしてあいつらはその報告が来る前にあなたの母が捕らえられたのを知っているのですか?」
ケレイユの指摘を聞いてルミヒア等もそれがおかしいと気づき、アクエリの方に顔を向ける。
「それは分からないけど、あいつらの話から彼らが何かの陰謀を働いている節が見られたわ。」
「陰謀、ですか?」
と、ルミヒアが聞く。
「ええ。どうも、彼らはうちの実家の街にいる誰かを買収してお母さんを捕らえる何かを探させた、もしくはでっち上げたようだったわ。」
「しかし、それなら捕まってもいずれは調査か何かでアクィフォーレさんの無実が証明されるのでは?」
必死にケレイユは何か希望になるものを探すが、それはアクエリの次の言葉で否定された。
「いいえ、仮にも王子が黒幕の陰謀よ。私たちとは力が違うわ。それに・・・」
そこで言葉を切ったアクエリはクウリの方を見て、それでクウリはアクエリの言いたい事が分かった。そして、今更隠していても仕様がないと思い、こくりと頭を頷かせる。
「それに、何だ? アクエリ。」
「それに、完全なでっち上げじゃない可能性もあるわ。」
「なに? それは、アクィフォーレさんが何か犯罪を侵したと言う事なのか?」
信じられないと言う風に聞くラク。
「犯罪、と言えば犯罪だわ。そして私も同罪よ。」
「なんだと?」
「あのね、皆。皆には言ってない事があるんだ。」
ラクの疑問に答えたのはアクエリではなく、クウリだった。それについては少し不思議に思っていたが、取り敢えずその話を聞いた。
「俺、記憶喪失って言ってたけど、実は違う。ちゃんと子供の頃から最近の記憶まで全部あるんだ。」
「なるほど。でも、それは罪にはならないだろう?」
「そうだけど、問題は記憶喪失と偽ってた理由なんだ。」
「理由?」
「実は俺、こことは違う世界から来たんだ。」
「「「はぁ・・・?」」」
あまりにも荒唐無稽な話でどう反応すればいいのか分からないルミヒア、ケレイユ、及びラク。
「だからね、俺は皇国に取っては異邦人なんだ。」
「「「!!!」」」
さすがに『異邦人』というキーワードが出てくれば、三人は事の大事さに気がつく。
「魔物に襲われている所を助けてもらったことなどは本当だよ。けど、アクィフォーレとエリお姉ちゃんに保護してもらった時に俺の存在の事も隠しててもらったんだ。」
「それは、確かに犯罪だな・・・」
と、ラクが静かに納得する。しかし、それでも納得出来ない人が一人いた。ルミヒアだ。
「でも、クウリ君は人間よ! 異邦人を政府に渡す決まりはエルフなどのような異種族のためにあるのでしょう? どうしてクウリ君たちが捕まらなければ行けないのよ?!」
「ルミヒア。確かにその決まりは主に異種族の人を無断で皇国内を行き来するのを防ぐ為にある。しかし、例えば皇国外で育った人間は異邦人にはならないのだろうか?」
「ケレイユ君、あなたはどっちの味方なの?!」
「もちろんクウリ達の味方だ。でも、こういう考え方もできると言っているだけだ。」
「うぅ・・・」
「アクエリさん。さっき言いかけた事と言うのはもしかして、クウリが異邦人だという証拠が残っているのか?」
「分からないわ。クウリの怪我が酷かったからすぐに服を着替えさせたけど、その後どうしたのかは知らないわ。けど、可能性がない訳でもない。」
「そうか・・・」
「クウリ、私たちは今すぐにでもここを離れるべきだわ。」
「!!」
アクエリのこの発言に驚いたのはルミヒアだけだった。ラクとケレイユはそれが一番確実の方法だと考えついていたし、クウリもなんとなくケレイユ達に自分の正体を話すときがあれば、それはもう会えなくなる時だけだと思っていた。
「お母さんを捕まえた人たちがなにも見つけられなかったこと、それか調査で無実だと証明されることに賭けるべきではないわ。前にも言った通り、相手は王族だし、もしかしたら本当に何か見つけたのかもしれない。」
「分かったよ、エリお姉ちゃん。みんなと別れるのは寂しいけど、きっとそれが一番だよね。」
「ええ・・・幸い、私が盗み聞きしていたことは知られていないわ。だから今は寮に戻り、度の荷物を作って夜になったらここを出ましょう。そうすれば、ネビア達には早くても明日の朝まで私たちがいなくなった事に気づかないわ。」
クウリにそう言ってからアクエリは他の三人に話しかける。
「悪いけど、みんなには残ってもらうわよ。これは私たち、ティアレイクの問題よ。あなた達を巻き込みたくないわ。」
「ああ、分かっているよ、アクエリ。けど、せめて見送りする事くらいは大目に見てくれ。親友との一生のお別れだ。ここで『はい、さよなら』は寂しすぎる。」
「ふふ、もちろん構わないわ。そちらの二人もいい?」
「「はい・・・」」
こちらの二人、特にルミヒア、はラクほど物わかりがいいようではなく、納得していないようだったけど、一応頷いた。
「じゃあ、寮に戻りましょう。クウリ、持って行くのは本当に最低限のものにして。あまりかさばると逃げるのに邪魔になるだけよ。」
「分かった。」
クウリが頷くと、五人は各々違う表情を浮かべてゆっくりと寮に帰った。あるものは逃げ切る決意と不安。あるものは友との別れを悲しむ感情。そして、あるものは・・・




