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エレメント皇国物語  作者: rurata
第二章:魔法学校クーラン
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第十五話

ルミヒアとの喧嘩から数日、授業は終了してクウリ達生徒は教室で帰宅の準備をしていた。


「クウリ、そろそろ帰るか?」


いつものようにケレイユはクウリに近づいて、一緒に帰ろうと誘いにきた。


ケレイユの接近に気づいたクウリは少しだけ気まずい顔をして断った。


「ごめん、今日もダメ。」


「今日もか? 最近クウリはいつも忙しいみたいだが何かを始めたのか?」


ルミヒアはまだ魔法の練習を誰にも知られたくなくて、クウリもケレイユやアクエリを含め、誰にも言っていなかった。けど、数日も放課後にどこかへ消えていたら親しい人には怪しまれる。


そろそろ誤摩化しきれないと感じてきているクウリはちょっと考えてから、ルミヒアの事を避けつつ、何をしていたかを話すことにした。


「この前の魔法実習で先生から一人で練習する許可をもらったことは覚えている?」


「ああ、そういえば聞いてたな。」


「あれからずっと放課後の時間を使って魔法の練習をしてたんだ。」


「魔法の練習。一人でか?」


「あ、うん、一人で。」


クウリはどもりつつ答えた。ルミヒアもいるので一人じゃないけど、ルミヒアは知られたくないのでクウリは仕方なく嘘をついた。


ケレイユはクウリの答え方で何かがあると感づいたが、あえてそれを追求することはしなかった。クウリのことを信用していたし、先生の許可も取ってあるので危険なことにはならないだろうと考えた。


「そうか。まあ、そういうことなら仕方がない。でもアクエリさんにはなんて言うんだ?」


いくら毎日迎えに来ていないと言っても、クウリがずっと放課後の練習を続けていたらいずれ何かが変だと気がつくだろう。それに、アクエリは少々過保護なたちがあるので一人で魔法の練習するのには反対すると思われる。


「うん・・・エリお姉ちゃんは心配性だからできれば秘密にしたいんだけど・・・」


クウリはアクエリに秘密する事に罪悪感を覚えていた。しかし、アクエリに言ってしまったら練習についてくると言うことは目に見えていた。けれど、そんなことになればルミヒアのことも必然的に知られてしまう。アクエリなら知られても馬鹿にはしないだろうとクウリも確信していたが、それでもルミヒアは傷つくかもしれない。それならばルミヒアに許可を得るまで誰にも話さない方がいいとクウリは思った。


「ふむ。まあ、しばらくの間なら俺が誤摩化してみよう。」


クウリが考え込んでいるとケレイユがそう言ってきた。


「えっ?」


言われたクウリは目をぱちくりと瞬きさせてから微笑してケレイユに感謝した。


「ありがとう、ケレイユ。」


「気にするな。だが、これは一時しのぎでしかないぞ?」


「うん、分かってる。できるだけ早くエリお姉ちゃんに言うよ。」


「そうか、まあ、分かっているならいい。」


「ありがとう。」


「いいさ。さあ、早く行ったらどうだ? 相手を待たせているんだろう?」


「うん、もう行くよ・・・っ!」


ケレイユの誘導尋問に引っかかったと気づいたクウリはそそくさとその場を後にし、ケレイユは『くっくっくっ』と満足げに笑っていた。



** *



「あははは、それはケレイユ君らしいね。」


ケレイユと何があったかをクウリがルミヒアに説明したらそう反応した。


「多分、一緒に練習しているのがルミって事は分かってないと思うけど・・・」


「きっとうすうす感づいているよね、ケレイユ君のことだから。」


ルミヒアの言葉にクウリが同意する。


「まあ、ケレイユ君なら大丈夫でしょ?」


「俺もそう思うけど、ルミはいいの?」


「うーん、やっぱりあまり練習のことを知られたくはないけどケレイユ君なら別にいいかな。クウリ君こそ、ケレイユ君が言っていたみたいだけど、アクエリさんにはいつ練習のことを話すの? アタシの事なら気にしないでいいよ。アタシの家の事情を話さなくても練習のことは言えるし。」


「ありがとう、ルミ。でも、まだエリお姉ちゃんにはいいづらいんだよね〜。」


「なんで?」


不思議そうな顔をしてルミヒアが聞く。


「言っちゃったらエリお姉ちゃん、心配して練習を止めさせられるか、それか一緒に練習をするって言い出しそうだから。」


「そっか、それは困るよね。」


(それに、折角クウリ君と二人きりで練習できているのに、他の人に邪魔をされたくないし。)


実は二人きりになれないかもしれない事の方が気になるルミヒア。クウリとの一件以来、クウリの事が前にも増して気になり始めていた。まだ恋と言えるほどのものに成長してはいないが、それでも本気になるかもしれない相手との二人の時間は減らしたくない。


「まあ、それは追々考えておくと言う事で。今は今日の練習について話し合おう?」


「うん、そうだね。」


アクエリの問題については後でゆっくりと考えると決めるクウリ。とすると、今の問題はこれからどんな練習をするかだ。


練習について考え始めたクウリはここ数日のことを思い返していた。その練習は初日とはそれほど変わっていなかった。そしてクウリはあまり手応えを感じていなく、練習方法を変えた方が良いと思っていた。


「ルミ、俺は今みたいなただ魔法を繰り返して発動させる練習は俺たちにはあんまり効果がないと思うんだ。ルミは限界ギリギリまでエレメント魔法を扱えるし、俺の使える魔法はあまりにも小さくて、少しずつ上手になってもそれは根本的な解決にならないと思う。」


「アタシも分かっているんだけど、他の練習は思いつかないし・・・クウリ君は何かいい案ある?」


「うーん、効果があるかは分からないけど、俺の実家で習った練習があるんだ。」


「実家?」


「うん、俺の実家はエーテルが希薄な地域にあって、この練習法を使ってエーテルを多く集めようとしていたんだ。」


クウリが話していたのは土神流の氣を練る練習法。クウリは自分の魔力の高さはこれのおかげだと思っていた。エーテルが少ない地球で氣を使うことに慣れ、そしてエーテルが多いこの世界に来てその能力が増幅されたと考えている。マラソンランナーやスポーツ選手が高地で訓練し、血に酸素を多く取り込めるようになることに似ている。ここはエーテルが豊富なので同じような結果は望めないだろうが、クウリが知っている地球での練習法ならばもしかしてちょっとは魔力を高くすることができるかもしれない。


「なるほど・・・それは興味深いね。」


「あと考えつくのはエレメント魔法の応用にうまくなることかな。」


「応用?」


ルミヒアが聞き返す。


「うん。優秀な魔導士は氷とかを操れるんでしょう? あとは・・・水を他の物に変えるとか?」


「確かにそれは優秀な魔導士の証だけど、アタシにできるかな?」


クウリの言う通り、下級生の内に氷の魔法が使えるようになれば優秀な魔導士と思われるかもしれない。しかし、ルミヒアの知る限りでは氷が使える魔導士は皆魔力が高い。まして、変化の魔法ともなると、本当に一握りの魔導士しか使えない。そしてその魔導士は一人残らず魔力が誰よりも高い。


「俺は他の人の事はよく分からないけど、この前のアクオスの本を読んだ限り、多分できると思う。最初の内は難しいかもしれないけど、俺もできるだけ分かり易いように説明するし、一緒に頑張ろう!」


クウリから励ましをもらい、ルミヒアはやる気になった。


「うん、頑張ろう!・・・ちょうど今までのままじゃダメだと思っていたし、とりあえずクウリの言う練習法を試すのに賛成するよ。」


「そっか。じゃあ、どっちの練習にする?」


「うーん、両方に興味があるけど、まずはエーテルを集めるやつかな。」


ルミヒアは頭を傾け、少し考えてから魔力を上げる可能性がある方を選んだ。


「分かった。それじゃあまずは・・・」


クウリは立ち上がり、練習法を説明する為にルミヒアに近づいた。そしてその日の練習は基本的な説明や手本で費やされた。



** *



「またクウリがいないの? もう、最近いつもいないわね・・・一体何をしているのかしら?」


クウリを迎えに来たアクエリは目的の人物がまた見つからなくて愚痴をこぼした。


「最近はいつも一人で何かしているようだが、多分どこかの部活にでも入ったんだろう。」


とアクエリの近くに座っていたケレイユが言う。


「ケレイユ君にも言っていないの?」


ルームメイトのケレイユが知らない事を疑問に思うアクエリ。


「何かをやっていると聞いてはいるが、それが何なのかは聞いていないな。まあ、クウリの事なら大丈夫だろう。」


「そう・・・」


ケレイユはクウリとの約束通りに適当に誤摩化したが、それでアクエリが納得していないのはその顔から見て取れた。


「まあ、これからは毎日同じ事で忙しくなるみたいだな。もし放課後の用事があれば事前に言うほかないだろう。」


ケレイユの話を聞くとアクエリは『むう』と唸りながら不満顔をした。


そしてケレイユが席を立つと、アクエリは肩を落としてとぼとぼと教室を後にした。



(もう、クウリのバカ! どこに行ったのよ!)


教室から出てアクエリがしばらく歩いていると、アクエリの落胆はおさまり、苛立ちに変わっていた。ゆっくりとした歩きのペースも、時間が経過していくとともに段々速くなり、今ではずんずんと前に進んでいた。


アクエリがそのまま歩き続き、やがて校舎の玄関に差し掛かり探していた人物を見つけた。


「クウリ!」


先ほどの怒りはどこに行ったのか、アクエリは嬉しそうな顔をする。しかし、声を出してクウリを呼んでも聞こえた様子はなく、クウリはそのままそそくさと早歩きでどこかに向かった。


「クウリ・・・」


アクエリはしゅんとして一瞬落ち込んだが、それも直ぐに鳴りを潜め、さっきの怒りが再び湧いて来た。


(う〜、クウリのやつ! 私に気づきなさいよ! こうなったら一体何をやっているのかを後をつけて暴いてやる。)


自分にそう言い聞かせ、アクエリは『むんっ!』と力を入れて真剣な顔でクウリの後を付いて行った。


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