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エレメント皇国物語  作者: rurata
第二章:魔法学校クーラン
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第八話

放課後。


バタン!!!


勢い良く医務室の扉が開き、息を荒くしたアクエリとラクが傾れ込む。すると、そこにはベッドで横になっているクウリとその側で静かに座っているケレイユが目に入る。先生はどうやら他のベッドに寝かされているらしい。


「ナージュ先生、クウリは!? 何があったの!!」


アクエリの焦燥感がこもった声に机で仕事していた保険医のナージュ先生が顔を上げる。


「ティアレイクさん、落ち着いて。ここには病人がいるのですから静かにしてもらわないと困るわよ。それと、弟には特に怪我らしいものなどありませんので心配はいらないわ。」


「うっ・・・ごめんなさい、先生。」


ばつが悪い顔をしてナージュに謝りつつクウリに近づき、その無事を確認して安堵するアクエリ。


「クウリ・・・」


クウリは静かに寝ていて、たった数時間前に命の危険に遭っていたなんて信じられない。


「あっ、アクエリさん・・・」


アクエリに気づいたケレイユがクウリから視線を外し、沈んだ声で会釈する。


「ケレイユ君。ずっとクウリに付いていてくれていたの?」


「ああ・・・」


空虚な目で返事して、何かを悩むような素振りを見せていきなり頭を下げた。


「アクエリさん、ごめんなさい。」


「えっ、なに?」


唐突に謝罪しだすケレイユに戸惑いを隠せないアクエリ達。


「俺はクウリの近くにいたのに何もできなかった・・・! それが悔しくて・・・」


無力な自分が悔しくてケレイユが自責の念で顔をしかめる。


「ケレイユ君・・・」


と、そこでケレイユの肩を叩く感じがして振り向くと重々しい顔をしたラクがいた。


「ケレイユ、その場にいなかった私が言うのもなんだが、先生でもあの通り命からがらで乗り切ったぐらいだ。口惜しいけど私やアクエリでもきっと何もできなかっただろう。ましてや君は今年入学したばかりの一年生。何もできないのは当たり前だ。それを悔やんでも仕方がない。」


「だが・・・」


「まあ、今すぐには納得できないだろう。だが頭の隅に置いておけ。」


「ああ・・・ありがとう・・・」


それから考え込み、立ち上がって部屋に戻ると二人に告げそのまま医務室を出て行った。


アクエリはケレイユに感謝して椅子に座り、そのままクウリの手を取った。


「あの、先生。具体的に何があったか教えてもらえませんでしょうか?」


「それならサンテアさんがいた時に話してもらえたら良かったわ。聞いた事しか話せないけどそれでもいいなら話すわ。」


「お願いします。」


「とりあえず、どこまで聞いているの?」


「あの、ただエレメント魔法の授業で魔法を暴走させたくらいしか。」


「ふむ、大体はその通りだな。その授業は初めての実践もありウォーターボールを発動させるだけの筈だったんだけどね・・・」


「はい、私も最初の授業の事は覚えています。」


「それで、まぁ、授業は順調に進んでいた訳で、クウリ君にも順番が回ってきた。」


早く何が起きたかを聞きたいアクエリにはナージュの話しは少しまどろっこしく感じたけど、“具体的に”と言ったのは自分だったし黙ったまま話の続きを促した。


「始めはうまく行っていたらしい。でも、それからすぐにクウリさんが苦しみだし、様子がおかしいと思ったサンテアさんが近づいて、クウリさんが魔法の制御ができなくなっていたとクウリさんから聞いたみたい。その後、近くにいた先生が皆を避難させてクウリさんを守る為にその場に残った。危なかったみたいけど、その先生のアイスシールドが間に合ったおかげで二人とも目立った怪我はないわ。」


「そうですか。説明してくださってありがとうございます。」


最初にも言われたけど、クウリが無事だと改めて聞いてすごく安心する。そしてナージュの話が終わったと感じ、アクエリはまだ眠るクウリを介抱しようとナージュから体を回転させるとまだ言い残したことがあったナージュが思い出したようにまた話しかけた。


「そう言えば、暴走したクウリさんの魔法、凄かったらしいわ。」


「すごかった・・・?」


「ええ、なんでも練習場一帯の空気中の水分を全て使い切ってなお魔力の余裕があったらしいのよ。」


それを聞いたアクエリとラクの反応は二通りだった。二人とも驚いていたようだけどラクの純粋な驚愕に対し、アクエリはクウリの潜在魔力がすごいのは知っていたけど暴走した魔法の規模が思っていたよりもさらに大きかったのに少なからず衝撃を受けた。


「クウリ君がそれほどとは・・・」


半ば放心しているラクは少し信じられなかったと言うように独り言をこぼす。アクエリにもクウリの才能について語られた事が度々あったけど、それは姉バカが入った誇張された物だと思っていた。しかし実際にはそれは誇張でもなんでもなく、それどころかクウリは素質だけで言えばここ数十年に類を見ないほどという。


(少し不謹慎だがクウリ君の将来が実に楽しみだ。)


口の端を少しだけあげてからクウリとアクエリの姿が目に入ると慌ててそれを消し、真剣な顔を浮かべて座っているアクエリの肩にそっと手を置いた。


「アクエリ、クウリ君が無事で良かったな。」


「うん・・・本当に良かったよ。前の時と違って今回はエレメント魔法の暴走だったからなおさら危険だったし。先生には感謝しきれないわ。」



「・・・うー・・・ん・・・」


しばらくの間、アクエリとラクがクウリを見守りつつ話しているとクウリのうめき声がしてきた。


「クウリ、起きたの?!」


「エリ、おねえちゃん・・・?」


薄目を開けながら掠れ声でクウリがアクエリの呼びかけに反応する。


「よかったぁ〜〜〜!」


ガバッとアクエリが空理に飛びついた。やっとクウリが気がついた事が嬉しかったからついやってしまったけど、しばらくして落ち着くとクウリと自分の状態に気づき、更に自分達の他にも人がいたのを思い出し途端に激しい恥ずかしさに襲われた。


ラクの方はまずクウリが起きた事に安堵と嬉しさを覚えたけどアクエリが慌てだすと場の空気が一気に軽くなる。そしてそんなアクエリがおかしくてついついラクの弄り癖がでてニヤニヤした笑顔をアクエリが向けた。


「うん? どうしたアクエリ? 私に構わず続けていいぞ。」


「あっ、私はそろそろ他の人の様子を見に行かなくちゃ。」


そしてナージュが(アクエリに取っては)余計な気遣いをする。


「うぅ〜〜・・・」


「まぁ、冗談はそこまでにして、起きたのなら保険医らしくちょっと診るわよ。」


と、ナージュが言って机から立ち上がりベッドに近づき、ラクもクウリの方に意識を促した(未だに顔はニヤついていたが)。


「ほらアクエリ、クウリ君、何がどうなっているか分からないような顔をしているぞ。アクエリに何か聞きたいんじゃないのか?」



クウリが起きて靄がかかった意識をゆっくりと覚醒していきながらアクエリが自分の事を呼ぶのを聞こえた。


「クウリ、身体はどう? どこか痛む?」


(痛む? そういえばここってどこだ? 寮の部屋じゃないみたいだけど・・・)


「身体は別に痛くないけど、なんだかだるい感じがする。」


「クウリ君、何があったかは覚えているかな?」


そこでアクエリの他に人が部屋にいるのに気づきクウリはそちらに視線を向ける。


「ラクさん、と・・・」


「保険医のナージュよ。」


この人は保険医らしい。とするとここは多分医務室・・・なぜ自分が医務室で寝ているのだろう・・・と考えていると授業の事を思い出す。


「そうだ、先生は・・・!ッつ」


自分を助けた先生が心配でいきなり動いてしまって傷が痛みうずくまった。するとアクエリは心配そうな顔でクウリを優しくクウリを寝かせた。


「クウリ、大丈夫? ちゃんと寝てて?」


「その様子なら事故の事は覚えているみたいね。クウリ君と一緒にいた先生なら大した怪我もなく他のベッドで寝ているわ。」


「よかった。」


緊張で止めていた息を吐き出すとともにそう呟くクウリ。それからナージュにいろいろ質問されては答え、身体を調べられ、ナージュが納得するとぽんぽんとクウリの足を叩いて笑う。


「ふむ、問題ないみたいね。一応、様子見がてら今夜はここで泊まってもらって、何もなければ明日退院できるわ。実習は多分無理だけど講義なら出てもいいわ。」


言い終わるとナージュは他の患者を見回る為にベッドの側から立った。


「あっ、ナージュ先生・・・」


ナージュが離れる前にクウリが呼びかけた。


「なにかしら?」


「いろいろ助けてくださってありがとうございます。」


「気にする事はないわ。私がやった事と言えば擦り傷の手当ぐらいよ。本当に感謝すべき人はあなたを助けた授業の先生だわ。」


「もちろん先生にもいっぱいお礼を言いますけどナージュ先生にも感謝していますから。」


「そう。なら、その感謝を素直に受ける事にするわ。」


「はい、素直に受けてください。」


最後だけ笑いながらクウリが言うと、ナージュは医務室の奥へと消えた。


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