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7.鎖につながれた白いライオン

  挿絵(By みてみん)



(――希少《きしょう》な白変種《はくへんしゅ》で……しかもオッドアイだって……?)



 毛並《けな》みの良《よ》い白《しろ》いたてがみがいっそう威圧感《いあつかん》をかもしだしている。雄々(おお)しいライオンの背中《せなか》には、不自然《ふしぜん》にも巨大《きょだい》な鷲《わし》の翼《つばさ》が生《は》えていた。



 それはあきらかに異様《いよう》な姿《すがた》だった──



 あんな生《い》き物《もの》が店《みせ》の外《そと》につながれているだけで、営業妨害《えいぎょうぼうがい》もはなはだしいものがある。店員《てんいん》の狼狽《ろうばい》ぶりはもっともなことであった。



 しかし飼《か》い主《ぬし》はなれたもので、不遜《ふそん》な態度《たいど》のまま言《い》い分《ぶん》をゆずらない。これまでも権力《けんりょく》を盾《たて》にして横暴《おうぼう》なふるまいを通《とお》してきたのだろう。



「支配人《しはいにん》を呼《よ》べっ!」



 貴族《きぞく》の怒鳴《どな》り声が響《ひび》き、店員《てんいん》があわてて厨房《ちゅうぼう》の奥《おく》へとすっとんでいった。



「従業員《じゅうぎょういん》も気《き》の毒《どく》に。最近《さいきん》、富裕層《ふゆうそう》の一風変(いっぷうか)わったお遊《あそ》びで、猛獣飼《もうじゅうか》いならすのがはやってるらしいけど、俺《おれ》は感心《かんしん》しないね」


 

 旺盛《おうせい》な食事《しょくじ》の手をわざわざ休《やす》め、軽蔑《けいべつ》しきった冷《さ》めた口調《くちょう》でラグシードが言った。



「まったくその通《とお》りさ。僕《ぼく》もラグの意見《いけん》に同意《どうい》するよ。それに……」



「貴族連中《きぞくれんちゅう》は自分勝手《じぶんかって》にやりたい放題《ほうだい》でたまらねえなぁ」



「金《かね》が余《あま》って余《あま》ってしょうがないんだったら、俺《おれ》たちにまわしてくれってんだ」



 近隣《きんりん》の席《せき》から貴族《きぞく》に対《たい》する不平不満《ふへいふまん》の声がもれ聞《き》こえてくる。



「……たしかに、まったくその通《とお》りだよね」



 ロジオンは侮蔑《ぶべつ》するような一瞥《いちべつ》を貴族《きぞく》にくれてやりながらも、なにやらすっきりしないような表情《ひょうじょう》で物思《ものおも》いに沈《しず》んでいった。



 ラグシードがすごいスピードで皿《さら》を平《たい》らげていくのを横目《よこめ》で見ながら、彼《かれ》は目の前《まえ》にある料理《りょうり》に黙々(もくもく)と手《て》をつけていった。



 しばらくして、彼らは店内《てんない》のかなり奥《おく》まった座席《ざせき》で食事《しょくじ》をしていたのだが。入口《いりぐち》に背《せ》を向けているロジオンに対《たい》し、ラグシードはなにかに気づいたようだった。



「おい、飼《か》い主《ぬし》はまったく気《き》づいてないようだが、なんかヤバそうだぜ」



 やむなく食事《しょくじ》を中断《ちゅうだん》して背後《はいご》を見ると、鎖《くさり》につながれた合成獣《キメラ》が牙《きば》をむき出しにして低《ひく》くうめいている。殺気立《さっきだ》っているのは彼《かれ》らの目《め》にもあきらかだった。



「話《はな》し合《あ》いに夢中《むちゅう》で誰《だれ》も気《き》がついてないようだね……このままだとマズイかも」



 その時《とき》、酔《よ》っぱらった客《きゃく》が店《みせ》を出《で》ようとして、玄関脇《げんかんわき》のテーブルの上《うえ》に倒《たお》れこみ、皿《さら》の割《わ》れるけたたましい音《おと》が店中《みせじゅう》に響《ひび》きわたった。



 ――それが合図《あいず》だった。



 騒音《そうおん》に刺激《しげき》されたのか、合成獣《キメラ》は頑丈《がんじょう》な鎖《くさり》を引《ひ》きちぎり店内《てんない》に躍《おど》り出《で》た。



 あちらこちらでわき起《お》こる悲鳴《ひめい》、叫《さけ》び。

 あたりは騒然《そうぜん》となった。



 あわてて店《みせ》の外《そと》へ逃《に》げ出《だ》す者《もの》、腰《こし》を抜《ぬ》かして仲間《なかま》に引《ひ》きずられて運《はこ》ばれていく者《もの》もいる。



 野性《やせい》をむき出しにした猛獣《もうじゅう》が鋭《するど》い爪《つめ》をふりかざした。

 早《はや》くも負傷《ふしょう》して血《ち》を流《なが》している人《ひと》もいる。



「悪《わる》い予感《よかん》が的中《てきちゅう》だ……」



 うんざりしたようにロジオンはつぶやくと、迷《まよ》わず背中《せなか》のロッドに手《て》を伸《の》ばした。ラグシードも腰《こし》のさやからすでに剣《けん》を抜《ぬ》き放《はな》っている。



「ぐるるるるるるるるっ!!」



 白《しろ》いたてがみを逆立《さかだ》ててライオンと大鷲《おおわし》が合成《ごうせい》された肉食獣《にくしょくじゅう》が、距離《きょり》を縮《ちぢ》めて二人《ふたり》ににじり寄《よ》ってくる。



 その眼光《がんこう》は獲物《えもの》を発見《はっけん》したよろこびで鋭《するど》く光《ひか》っていた──




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