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サクラスイレンプロトタイプ、番外編集  作者: 水沢里穂
記憶のない黒猫~ゴリラ事件
2/4

ロリのプライド

今回はキーツ(一樹)とヒロインであるテマリの出会いです。

これも改変した本編に入れられなさそうなので、供養です。それでもこの設定を元に、今書き直しのストーリー進めているので、頭の片隅にでもという事で、本編出来てないのでここに載せました。

プロトタイプですが栄養になるのでブクマ感想あると大変喜びます。次の話で一旦プロトタイプの更新は止まりますが、出して問題ないと思った話はこの先も載せると思うので、よろしくお願いします。

 キーツが森の奥深くに行くと、泉があった。


 だが彼は、一瞬で顔色を変えた。


 ローブーツだけがあって、泉から空気泡が浮かんできたからだ。


(身投げ!?)


 キーツは慌てて水の中に飛び込んだ。


 水底の方に誰かいる。


 彼はその人影に、懸命に手を伸ばした。


(よし!)


 捕まえた腕は力を入れたら簡単に折れてしまいそうなぐらい、とてもほっそりした華奢な腕だ。


 キーツはその身体を引き寄せると、右腕でしっかり抱きしめた。


 抱きしめると余計に感じるが、本当に華奢な身体だ。


(こんな幼い子が身投げするなんて!)


 絶望すればそういう事もある。


 この世界は決して弱者に優しいわけではない。


 大人だって生きることだって大変だ。幼い子供なら、庇護者がなかったら飢えて死ぬことだってあるのだ。


(死なせない!)


 キーツは水面に向かって急浮上する。水面は間もなくだ。


 岸辺に上がった彼は、すぐにその子を岸に引きずりあげた。そして大きく息をついて、身投げした子供に振り返り、そして瞬間見とれた。


 髪の先から水を滴らせた子供が、可愛らしい可憐な美少女だったからだ。


 だけど見とれてる場合じゃない。すぐに頭を切り替える。


「大丈夫?何があったの、キ……」

「なにすんのよ!」


 だが返ってきたのは威勢のいい声。


 しかもその瞳に悲しみなどはない。あるのは純粋な怒りの感情だけだ。どう見ても世を儚んだようには見えない。


「身投げ、したんじゃ……」

「誰が綺麗に服脱いで身投げすると思ってんのよ、バカ!!」

「え?」


 改めてキーツは目の前の少女を再度見た。確かに彼女は下着一つ身にまとってない全裸だ。


「あたしは修行の為に、水浴びついでに潜水してたの!何邪魔してくれるのよ!」

「修行?」

「そうよ」


 キーツは驚きだ。まさか修行など思ってもみなかったのだ。


 だが確かに彼女は全裸だ。服をわざわざ脱いで身投げするもの好きは、ほとんどいない。ならば彼女が修行していたというのも、嘘ではないだろう。


「全く修行の邪魔した挙句、マジマジ乙女の裸見て……何この変態ドスケベ!」

「あぁ、そっか。確かに早く服着ないと風邪引くよね」


 キーツは頭を切り替えた。修行というならそうであろう。彼女がそう言い張るならそれでも構わない。

 だけど彼女は水に濡れての全裸だ。それをこのままにはしておけない。


「えーと……服はここにあるこれだね?タオルは……うん、ボクのを貸すね!」


 とびっきりの笑顔に、少女は面食らったようだ。無反応なことをいいことに、キーツはさっさと手首の格納石からタオルを出すと少女の胸からバサっとかけてあげて、更にはもう一枚タオルを出して彼女の背中からもかけてあげた。


「ほら、早く身体拭いて。風邪ひくよ?」

「ねぇ、アンタ。『セ・ク・ハ・ラ』って知ってる?」

「え?」


 キーツは思わずきょとんとしてしまった。


(確かに言われればそうかも?)


 裸の少女と居合わせてしまった自分。普通に考えてセクハラと言われてしまう状況かもしれない。


(でもね……)


 キーツは思わずため息つき、そのまま言ってしまった。


「ボクロリコンじゃない」


 ピシッ。

 少女の表情が固まった。


「裸でいたのはキミでしょ?見ちゃったのは悪かったけど、ボクどうせなら、グラマラスなオネーサンの方が好みだなぁ……」


 キーツがロリコンならご褒美のラッキースケベだ。だけどあいにくそんな趣味はない。


「さぁ、ここは魔獣もでるからさ。一人で危ないからね?早く保護者見つけないとね」

「保護者って……」

「いる筈でしょ?こんなちっちゃい子が一人で修業なんておかしいよ。それとも迷子になったから、気分転換に修行してたの?」

「迷子……ちっちゃい子……」


 その瞬間だった。


「ふっ・ざっ・けっ・んっ・なぁーーーっっ!」


 素早いパンチが繰り出された。ともかくスピードのある、キレのいいパンチだ。


 それをキーツは何とかかわした。それもこれもガルーダとの鍛錬で身についたものだろう。かろうじてのところで勢いよく繰り出されるパンチをかいくぐる。


「ご、ごめん?何か気に障った?」


 少女は完全に怒りの形相だ。


(ボク、何か地雷踏んだかもしれません!)


 連続パンチが更に繰り出される。速度は結構なものだから、当たったらダメージが大きいだろう。

 更にだった。


「このクソネコオォッ!」


 聞きたくない声が聞こえてきた。


 スーッとキーツの頭から血の気が引くのが分かる。


 ガルーダだ。


 彼が何故、ここまで自分を探しに来たのか、うっすら心当たりがある。


(もしかして『アレ』バレた?)


 だとすると、こうしている場合ではない。さっきから掠める少女のパンチの風圧が、キーツの頬に切り傷を作っていく。


(舐めてはいけませんでした!)


 華奢な体躯とは裏腹に、彼女本人は相当強いのかもしれない。だから一人で修業していたのか。


「ごめんなさいっ!」


 キーツは勢い良く叫ぶと、バックステップに逃げ道を探した。


 ガルーダの声はどんどん近付いてくる。それでも泉から距離を取れば、少女は全裸なのもあってそれ以上追ってこないようだったから、キーツはそこからはひたすら逃げにかかる。


(ガルーダの拳骨ヤです!)


 今日の追いかけっこはどこまで続くかわからない。だけど今はガルーダに見つかるのが怖い。


 キーツはひたすら、ガルーダの声がする方向の逆の方向目指して走り続けた。


※※※



「どうしたの?テマリ」


 ふつふつとした怒りを胸の内にぐるぐるさせていた少女は、かけられた声に振り返った。


 森の奥のから現れたのは、自分とは全く違うスタイルの良い長身の美女だ。緩いウェーブがかった髪をサイドポニーテールに結い上げており、テマリとしても非の打ち所のない。


 だけど今はそれがたまらなく悔しい。


「く・や・し・いーーーっっ!」


 テマリは思いっきり絶叫した。


 叫ぶだけ叫ぶと、彼女は現れた美女にビシィッと指を突きつけた。


「アタシだって、リファみたいなスタイルとナイスバディ欲しかったの!なのにアイツったら!あのクソガキったら!アイツめーっ!アイツアイツアイツーーっっ!!」

「え、えぇえぇえぇぇっっ!ちょ、ちょっと落ち着いて!落ち着くのテマリ!!」


 破裂したテマリの癇癪に、リファは一瞬戸惑ったようだった。だが彼女は裸のテマリの胸を見て落ち着き、そして「うん」と頷いた。


「大丈夫。私はテマリの可愛さ、とっても大好きだから!」

「アンタは少年趣味(ショタコン)でしょうがっ!少女趣味(ロリコン)じゃない癖にっ!!」

「でもテマリは特別よ。テマリ可愛いから私だーいすき!」

「ア、アタシは確かに……か、可愛いんだけど、ね……」


 そこは事実だ。


 テマリは自分の可愛さを自覚している。だからこそ、それで仕事もしているわけだ。


(だけど、それとこれは違う!)


 食べていくためには、ある程度の事は飲み込まないといけない。理想と現実は違う。それは自分がよく知っている。


「だけど悔しいの!好きでこんな身体に生まれたわけじゃない!!」

「それはそうね」


 昔からある事ではあったのだ。


 自分はいつも幼女扱い。


 どんなに頑張っても一人前の女として見られていないこの悔しさは、一体どこに持っていけば良いのであろう。


 プライドはズタボロのガタガタ。


 あの黒髪の少年もまた、ナチュラルにテマリを幼女扱いしていった。


 自分のファンがロリコンばかりなのは知ってる。そういう外見だし、だから割り切って公称13歳にしてるのだ。その方が『売れる』から、あくまで13歳設定だ。


 本当は13歳ではない。それなりの妙齢の乙女であるのに、初対面ではナチュラルに幼女扱い。


 悔しい。


 もっと地団駄踏んで暴れたい。


 更には自分は相当に小柄で貧乳だ。


(確かにツルペタ・ナイチチ・洗濯板だの、本っ当ーにいろいろ言われてきけどねっ!)


 いつも「つるぺた」「ナイチチ」「洗濯板」と言われては怒りを抑えてるわけで、抑えてるだけだ。なのに弄るやつは弄る。平然とこっちのコンプレックスを土足で踏みにじってくる。


 あの少年だけではない。その後走り抜けていったガルーダも、裸のテマリにはお構いなしだ。


(なんだろ、この理不尽感……)


 二人の共通点は、どっちも彼女の裸にはこれっぽっちも意識がないところだ。


 因みにタオルは巻いていない。


 立派に裸だ。


 だがどちらも目もくれなかった。


 本当に見事なまでに女として意識されてない。


 一応自分は年頃の乙女の筈だ。


 そうじゃないのか。


 なのにきれいにスルーされた。


 カケラも意識もへったくれもない。


 完全にただの路傍の石扱いだったのだ。


 大体、自分は普通の娘ではないのだ。


 なのにあの二人は、これっぽっちも見向きもしなかった。


「ね?今は落ち着きましょ?」

「う……」


 リファは穏やかに微笑んでくれる。


 優しい彼女はテマリの癒しだ。


 だからこそ、一匹狼だったはずのテマリが一緒にパートナーを組んでいる。


 そのリファが格納石からベリーナの果実を取り出すと、テマリの口にそれを放り込んでくれた。甘酸っぱい果実の甘みと香りが口内に広がっていく。


「ベリーナでアタシの機嫌、取れると思ってる?」

「取られてくれないんですか?」

「……」


 まるで自分が、優しい母親にあやされている駄々っ子のようだ。


(こういうところ、リファ上手いのよ)


 あやされると、怒ってても仕方ないと思えてくる。テマリがどんなに駄々をこねても、リファは聖母のように優しい。


(だから手放せない)


 リファは穏やかに言葉を続けた。


「明後日はイズシュ公演ですわよね?頑張りましょ!」

「うん……」


 そうだ。


 明後日の昼、テマリはイズシュの街の劇場で公演を控えている踊り子だ。それも踊り子の中ではかなり有名な踊り子でもあって、簡単にはお近づきにすらなれない。


(そのアタシの裸見たのに、アイツ顔すら赤くならなかった)


 一瞬見とれていたようだが、それは当然だ。自分に見とれない方がおかしいのだ。


(でも、アタシは『一人前の女』じゃない)


 別に女でいたいわけではない。だけどあの反応では、女としての自分を全否定されたかのようにも感じる。


(一人前に恋をしたい)


 おとぎ話ような、燃え上がる情熱的な恋に身を焦がしてみたい。


『テマリが恋をするのは怖いわね』


 かつてそう目を細めて言ってくれた恩師の笑顔が頭をよぎる。


(そうだ。先生の為にも、無様な舞台をするわけにはいかない!)


「イズシュの舞台、張り切っていくか!」


 テマリはようやく振り切ると、元気に顔をあげた。


「昼は劇場、夜はいつも通り酒場ね!」


 ウィンクして見せると、リファも楽しそうに弾んだ声を上げる。


「ウンっと儲けましょ!」

「じゃあ、リハ行こうか!」

「ええ!」


(アタシは一流の踊り子!)


 恩師はテマリをかばって、凶刃に倒れた。


 だから恩師の技は自分が継ぐ。


 明後日はイズシュの街の公演。


 絶対に無様な舞台にはしない。


 それを胸に、テマリは泉のほとりで背筋を伸ばした。

第一話に続いてお読みいただき、本当にありがとうございます。

読んでいただけただけでも、心の栄養になっております。

アカウント持っているのがpixivとここだけなので、気が向いたときに小ネタ更新できたらと思います。

本当の本編は最後まで無事に書き上げてから、載せていこうと思います。

更新はXかブルスカ(Xの方が早い)に載せていきますので、良かったらフォローお願いします。フォロバは状況次第になりますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

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