嫌悪感
ある日、学校の集まりの帰り、母が何気ない様子で言った。
「〇〇くんのお母さんから聞いたんやけど、あんたのこと好きなんやって。可愛いって言っとったらしいよ」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がざわついた。
その子は、みんなから距離を置かれていた。
面白がって近づくか、気味悪がって避けるか――
周りは、だいたいそのどちらかだった。
「……気持ち悪い」
思わず、そう口にしていた。
母は、どこか面白がるようにニヤニヤ笑った。
「何でよ。仲良くしてあげればいいやん」
絶対に、嫌だった。
転校してきたばかりの頃は、その子にも普通に接していた。
教科書を忘れていれば、一緒に見せたりもした。
けれど、いじめが始まってからは違う。
少し関わるだけで、すぐに噂にされる。
「〇〇くんのこと好きなんだって」
そんな言葉が、簡単に広がっていく。
それが怖かった。
でも、それ以上に受け入れられなかったのは、
その気持ちを、当たり前のように親に話していることだった。
そして、それをまた別の親に伝えて、
まるで面白い話のように口にする大人たちの無神経さ。
どこまで広がっていくのかもわからないその軽さが、
どうしようもなく気持ち悪かった。
私は、その日から露骨に避けるようになった。
けれど、周りはそれを許さなかった。
わざと隣の席をくっつけられ、
校外学習では無理やり隣を歩かされる。
少しでも距離を取ろうとすると、すぐに気づかれて、
露骨に不機嫌な声が飛んできた。
逃げようとするたびに、回り込まれまた隣に行かせようとする。
まるで、逃げる事を許されないみたいに。
建物の中を、二人だけで行けと言われた。
まるで、からかうためのデートみたいに。
私は首を横に振った。
それでも、片足をどんどんさせながら
「なんでなん?!はよ行きーや」
「私ら次の行く場所、確認しとくから」
私を含む女の子三人と、男の子が二人。
本当は、みんなで行けばいいだけのことなのに。
それでも、わざと私とあの子を残そうとする。
「おもんないわ」
「はよしてや」
拒む私に、容赦なく言葉が投げつけられる。
別の男の子は、ただもういいだろと言う様な様子で苦笑いを浮かべていた。
何分経ったのか、もうわからなかった。
その場に立たされているだけで、息が詰まりそうだった。
――そのとき、先生が来た。
私は咄嗟に目を向けた。
言葉にはできず、ただ視線で助けを求める。
「何しとるんや。早よ全員で行きなさい」
その一言で、空気が途切れた。
女の子たちは舌打ちをして、
不満そうにその場を離れていった。




