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お喋りな口紅  作者: はる
13/19

第13話

「でも課長は、口紅の事は何も否定してなかったのに」


「八つ当たりですね」


「八つ当たり……」


「とにかく、あなたは口紅を怒らせてしまったんですよ」


「どうしたらいいんですか?」


「うーん」


「このままじゃ、先輩にフラれてしまいます。会社にも居づらくなるし」



 夕夏は、泣きたくなる気持ちを必死で抑え込み、三上に縋った。三上が夕夏の唇をチラッと見てから言った。



「まあ確かに、会社にその色はまずいですよね」


「でも、塗らないと元の私に戻ってしまうし、もうどうしたらいいか……」



 夕夏は頭を抱えた。



「同じ効力で、ピンクの口紅がありますよ」



 三上が、不自然なぐらい明るい声で囁いた。



「え?あるんですか?」


「最近、発売されたとこだから、なかなか手に入らない商品で、まあ少しお高いんですけどね」


「ぜひ私に売ってください。お願いします」



 夕夏は口紅が手に入るのなら、土下座してもいいとまで思った。


「わかりました。あなただけ特別に」



 三上が救世主に思えた。



「ありがとうございます」



 夕夏は三上に何度も頭を下げた。


 三上から言われた金額は、今までと違いとんでもなく高額であったが、夕夏は全く気にならなかった。


 すぐにコンビニに走り、通帳の残金を全ておろし、三上に手渡した。



 これで、全てが上手くいくはずだ。



 夕夏は、救世主を見るような目で、三上を見つめた。




 部屋の中には、紙袋が所狭しと置かれてある。


 その中の一つから、夕夏は口紅を取り出した。先程、三上から売ってもらったピンクの口紅だ。


 夕夏は、鏡を見ながらピンクの口紅を塗ってみた。


 この色も似合っている。


 夕夏は満足げに鏡を見つめながら、微笑んでみた。少し顔色が悪く見えたが仕方がない。この色なら、矢崎も許してくれるだろう。


 夕夏はうっとりと、鏡の中の唇を見つめた。


 夕夏の足元には、カード会社からの督促状が山のように落ちていたが、封も開けていなかった。




 翌日、夕夏はピンクの口紅を塗り、会社に出社した。


 矢崎がまだ来ていなかったので、夕夏は緊張したように席に座って待っていた。


 矢崎が出勤してきた。部屋に入ってきた矢崎の視界の中に夕夏が入った。夕夏は不安な気持ちを押し隠し、矢崎に微笑みかけた。すると矢崎が満面の笑顔になり、指で丸を作ってみせてくれた。



 許された。



 夕夏は、また矢崎と仲良くなれるのだと期待した。


 矢崎の元に行こうと立ち上がりかけたその時、田辺と光仲が部屋に入ってきた。


 二人の後から、一人の女性がついて入ってきた。女性はまだ十代に見えた。清楚で可愛らしく、髪が長く顔が整っていた。



 嫌な予感がした。



 



                    つづく

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