第七話:商店街を地図にする
「こっから先は、“店”じゃなくて“まち”を見る段階だと思うんです」
日曜の午後。
いつもの喫茶店で、大友はホワイトボードに簡易地図を描いていた。
「この道沿い、店が並んでるようで、情報が共有されてない。
通りの“断絶”が利益構造にも影響してる気がします」
「でも、データって、どこから拾うんですか?」
まどかの質問に、大友は笑った。
「拾えないなら、描けばいいんです。紙とペンで」
石倉が持ってきたのは、A3の白地図。
そこに商店街の全店舗を手書きでプロットしていく。
どの時間帯に開いているか
主な商品と価格帯
客層(高齢/ファミリー/学生)
定休日、臨時営業日
外から見た“入りやすさ”
「……こんな地味な作業、地味すぎてやらんかったわ」
まどかが笑う。
「けど、こうやって見ると、通りごとの“空気の質”が見えるね」
今村も地図をのぞき込む。
石倉は、Googleマイマップと連携させた地図アプリを作り始めていた。
「スマホで確認できるようにしとく。
口コミや写真もリンクで飛べるようにすれば、他所の人間にも見える地図になる」
「紙と泥臭さから始めて、デジタルに橋渡しするんですね」
大友は、手描きの地図をしばらく眺めていた。
「これが、“まちの資源”ってやつか……」
その夜、大友のスマホが鳴った。
表示された名前に、少し驚く。
【調布市議会議員鈴木圭一】
会社の仕事で過去に一度だけ関わった人物だ。
「久しぶり。噂、聞いたよ。地場でなんか面白いことやってるって?」
「……いえ、ただ週末にちょっと手伝ってるだけです」
「今度、話聞かせてくれない?実は、商工振興で予算の相談があってさ」
「……はい、もちろん」
大友は、どこかでこの連絡が来る気がしていた。
その晩、彼はもう一度、紙の地図を見つめた。
印をつけた小さな店ひとつひとつが、未来の点に見えた。
それぞれが、光を持っている。




