第六話:数字と直感のあいだで
翌週。
商店街の一角にある会議室に、まどか・大友・石倉・今村が集まっていた。
「なんか……ほんとにチームみたいですね」
まどかの言葉に、今村が笑う。
「まあ、元帳とにらめっこしてるより健康的よ。
うちの子もこの近くの学童行ってるし、夕方までなら手伝える」
今村沙知はシングルマザーである。
時間にも制限があるが、そのぶん「一発で成果を出す」ことに慣れていた。
「じゃあ、今日の議題は“収益の平準化”だな」
石倉がホワイトボードに書き出す。
・午後チケット → 単発型
・今後 → 月定額型も導入?
「サブスクって、うちみたいな個人店でも成立しますか?」
まどかが恐る恐る聞く。
「成立します。ただし、設計が命です」
今村がすぐに応じた。
「たとえば、
月1,800円で、午後ドリンク月5杯まで
1杯360円換算
実際の利用率は平均3.5杯 → 原価800円以下
→ 利益率:60%以上、月収安定」
「なるほど……買ってくれる人は、元を取らなくても“常連感”に価値を感じてるわけですね」
「そう。サブスクって、“合理性”より“感情”で売れるものなのよ」
大友は、PCでキャッシュフロー表を確認しながら口を開いた。
「この仕組みがうまく機能すれば、月5万円以上の安定収益が見込める。
FL比率もさらに抑えられるし、将来的には設備投資にも回せます」
「やるじゃん、元・大企業コンサル」
石倉が茶化すように言い、まどかがくすりと笑った。
その夜、大友は妻の恵里に話した。
「メンバーが揃ってきた。税理士、プログラマー、マーケター。
こんな地場チーム、ないかもしれない」
「でも、それってあなたの持ち出しじゃないの?」
「土日の一部だけだし、生活は維持できるよ。
それに、……何より、今までになかった手応えがある」
「……なら、応援する」
恵里の言葉に、大友は静かにうなずいた。
その晩、彼はまた“予感”を感じていた。
数字の先に、なにか大きな波がくる気がする。
まだ、ぼんやりとだが。
「直感は、いつも理由をあとから教えてくれる。
だけど今回は、“数字”も並んで見えている」
それはきっと、過去にはなかった感覚だった。




