第十八話:選ばれる声
「ことまちラボさん、長野県の自治体職員研修で講演お願いできませんか?」
「府中市から“制度導入のアドバイスがほしい”という相談が来ています」
「経産省主催の“地域連携コンソーシアム”で、登壇候補に推薦したいと考えています」
6月後半、大友の元に立て続けに届く依頼の数々。
気づけば、“調布市内の実証モデル”だった取り組みは、他地域の目に留まり、広がりはじめていた。
その日、久々に石倉とランチをとった。
「もはや“地場支援”じゃなく、“地域政策”になってきたな」
「想定よりずっと早い展開だ。
でも、“支援モデル”を他所に持っていくって、慎重にやらなきゃならない」
「まあな。
でも逆に言うと、“お前じゃないと成立しない”って意味でもあるぜ」
同じ頃、議員の鈴木からも一本の電話があった。
「ちょっと驚かないでほしいんだが、
党の関係者から、“大友くんって出馬の意思ないのか”って聞かれたんだよ」
「出馬、ですか……?」
「もちろんまだ正式な話じゃない。
でも、“市民から選ばれた支援者”として、
そのまま制度の側に来てくれたらって考える人もいるんだろう」
「……少し考えさせてください」
夜。
自宅で書斎にこもった大友は、一枚の紙に2つの項目を書いた。
【支援者として拡げる】
・地域間連携
・仕組みの標準化
・個別最適から集合知へ
【政治家として担う】
・制度実装の当事者
・予算と政策の入口へ
・責任のありかが変わる
「……これが“違う仕事”になるのか、続きなのか」
まどかの喫茶店で定例の作戦会議。
今村が言った。
「仮に立候補ってことになったら、“支援の中立性”はどう保ちます?」
「そこなんだよ。
店や人を“票”で扱いたくない。でも、制度を動かすには、仕組みの中に入る必要がある」
石倉がコーヒーをすすって笑う。
「だったら、“議員になっても現場に立ち続ける奴”っての、見てみたいけどな」
その夜、恵里が静かに言った。
「……“選ばれる”って、今までと違う種類の覚悟が要るよ」
「わかってる。
これまでの“応援”とは違う。“期待”と“批判”が一緒に来る」
「それでも、あなたが行きたいなら、私は応援する。
ただし、“家庭”っていう現場からは絶対に逃げないこと」
「もちろん。それは、政治でも制度でも超えちゃいけないラインだと思ってる」




