第十七話:芽吹きの証明
調布市・地域振興課の中会議室。
大友は、市職員とともに「ことまちラボ 第1期成果報告会」を開いていた。
壁には、5店舗のKPI一覧が貼られていた。
■ 喫茶まどか
回転率 +1.4倍 / 客単価 +22% / リピート率 41→61%
■ 山下パン店
廃棄ロス削減 -38% / FL比率 62→54%
■ 美容室ルクア
予約LINE導入 / 稼働率 +25% / 月額サブスク導入
■ 雑貨カフェフクモリ
ワークショップ連動イベントで地域流入+15%
■ 移動式カレー屋ミズカミ号
出店先データ化で効率最適化/客数1.6倍
数字だけでなく、写真やSNS投稿、住民アンケートの声も添えられていた。
「毎週楽しみが増えた」
「“この街も悪くない”と思えるようになった」
行政職員の一人が、ぽつりとつぶやいた。
「支援って、“店”だけじゃなくて“住民”にも届くんですね……」
同じ日、調布市議会・地域経済委員会では、ある議題が上がっていた。
「“ことまちラボ”を、202X年度のモデル事業として予算化すべきでは?」
鈴木議員が手を挙げて発言した。
「成果指標が明確。行政単独ではできない伴走支援が、すでに数字として現れている。
この仕組みは、民間と行政の協働モデルとして他自治体にも転用可能です」
答弁に立った担当課長も頷く。
「制度化に向け、条例の範囲内での予算措置を検討します」
翌週、まどかの喫茶店には「ことまちラボ参加店」の小さなシールが貼られていた。
「これ、常連さんが“あのラボの店なんだね”って言ってくれて」
「地域で“見える”ようになってきたってことですね」
今村も加わり、軽く乾杯を交わす。
「“地元のいい話”って、意外と伝播するんです。
特に“誰かの頑張り”じゃなく“仕組みで変えた”ってなると、共感されやすい」
「ようやく、“再現性”って言葉が現実になってきました」
その夜、大友は市から届いた一通の文書を開いた。
『ことまちラボ支援事業』モデル化に向けた協定書(草案)
そこには、「公民連携」「制度実装」「地域貢献型補助」といった文言が並んでいた。
——これはもう、“試み”ではない。
“制度”としての息吹を持ち始めた。
帰宅すると、恵里が言った。
「今日は、湊の保育園でも“パパの出てた新聞”が貼ってあったらしいよ」
「……もう、隠しきれないな」
「隠す必要、ないでしょ。
大事なのは、“どんな名前”より“どんなこと”をやってるか、だもん」
「そうだね。“何をしたか”は、たぶん、街が覚えててくれる」




