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第十五話:肩書きと生き方

「大友くん、ちょっといいか?」


金曜の午後、会議後のオフィスでシニアマネージャーが声をかけてきた。


「最近、君の名前が市議会の議事録に出てるのを見たという声が社外から届いてね。

個人としての活動とはいえ、クライアントや業界内の印象に関わる可能性がある」


「ご心配をおかけして申し訳ありません。

副業申請と倫理規定には抵触しないよう確認しながら進めております」


「それでも、“君=我が社の顔”と見られるフェーズにきてる。

線引きを、少し明確にしてもらえないか」


「……分かりました。整理します」


帰宅後、大友は自室でノートを開いた。


【現在の肩書き】

・コンサルティング会社 マネージャー

・調布市 地域経済部会 協力員

・個人事業主(地場支援モデル運営)


肩書きが増えるごとに、“立場の矛盾”が濃くなっている。


土曜。

石倉と今村、そしてまどかも交えた定例の支援会議。


「会社、きつそうっすね」


「そろそろ潮時かもしれないな。

ただ、家計も、生活も、まだ“支援一本”に振り切る勇気はない」


今村が静かに言った。


「私も離婚後、子どもとの生活をどう守るかって悩んだけど……

“肩書き”じゃなくて、“日々の意味”で判断してよかったと思ってる」


石倉がニヤッと笑う。


「肩書きって、履歴書には載るけど、人生の満足度には載らねえからな」


その夜、大友は恵里と向き合って話した。


「今、会社を辞めると年収は半減する。

でも、支援側の収入がようやく月20万を超えてきた。

今後の拡張と補助金実務を含めれば、生活圏の維持は見込める」


「数字のことは、信じてる。

でも……“パパの顔”でいてくれる時間だけは、減らさないでね」


「もちろん。むしろ増やしたいくらいだよ」


日曜の朝。

大友は一枚の書類を印刷していた。


【退職願(未提出)】


そして、その隣にもう一枚。


【地域支援合同会社 設立準備メモ】


彼は、自分に問いかけるように、独りごちた。


「肩書きじゃなく、“生き方”として、どこに立つのか」

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