第十四話:制度の入口
市役所・議会棟の三階。
案内された会議室には、市議の鈴木と数名の議会事務局員が待っていた。
「今回はあくまで“協力員”という形です。
正式な議員や職員とは異なり、支援者としての立場を保ちながら
地域経済政策の提案・助言をしていただく立場になります」
「分かりました。責任の範囲も含めて整理して進めたいと思います」
大友は、そう静かに答えた。
“支援者”から“制度の翻訳者”へ
それが、彼の新しい肩書だった。
初回の部会では、やや緊張も走った。
「地場支援モデルって、結局、外注コンサルと何が違うんですか?」
「それ、制度化したら予算がつり上がるだけじゃ?」
議員たちの声は厳しくもあったが、大友は数字で応えた。
「対象店舗の売上平均伸長率は14%。
補助金額に対する“税収回収率”で見ると、十分に投資回収可能です」
「なるほど……“支援のリターン”を示すロジックね」
「はい。行政施策としての“費用対効果”を、住民目線と事業者目線の両方で提示できます」
部会の空気が、少しずつ変わっていくのが分かった。
部会終了後、鈴木が声をかけてきた。
「いい入り方だったよ。
こっちは“民間から入ってくるロジックの人”を探してた」
「ありがとうございます。
ただ、僕の活動は“現場から政策へ”を試す一例です。
これが制度として通用するには、検証が必要です」
「それでいい。時間はかかる。
でも、制度ってのは、最初は“人”から始まるんだよ」
夜。
帰宅すると、湊が折り紙で作った“まちの地図”を持ってきた。
「パパ、今度はこっちのパン屋さんも“よくなった”って!」
「そうか、それは良かったな」
「ねぇ、パパって“おしごとふたつ”あるの?」
「うん。でも、どっちも“まちをよくする仕事”だよ」
湊は「へぇー」と言って、満足そうに笑った。
リビングで資料をまとめながら、大友はふと思った。
——制度は人に始まり、人でつながる。
今、ようやくその“入口”に立てた気がする。
手元のノートに「制度支援構造・試案 ver0.1」と書き加えた。




