第十三話:議会という現場
六月、調布市議会・第二委員会室。
傍聴席の一角に、大友泰斗の姿があった。
「本日は、地域経済活性化に関連する報告として、
民間による地場支援実証プロジェクトの概要が提出されています」
市職員の報告が静かに読み上げられていく。
そこには、彼が手がけた10店舗以上のFL比率、回転率、売上推移が記録されていた。
『1年間で平均FL比率が3.8pt改善。
回転率も1.2倍に上昇。リピート率は42%から56%へ。』
議員たちは、真剣な表情で資料をめくっていた。
「……この支援モデル、他の自治体にとっても参考になりますよ」
会議後、控室で声をかけてきたのは、あるベテラン議員だった。
「“行政だけではできない支援”の補完線として、制度化できる可能性がある。
あなた自身が、もう一歩前に出てくれれば、モデルが定着する」
「……“もう一歩”とは、どこまでを想定してますか?」
「例えば——アドバイザーとしての政策参与。
もしくは、議会内の経済部会の外部協力員として関わる形もある」
週末。
まどかの喫茶店で開かれた、小さな“支援報告会”。
商店主たちが自主的に集まり、事例と学びを持ち寄っていた。
「大友さん、ほんとに市の人になったみたいですね」
「いえ、ただの通りすがりの民間人です」
そう笑って返しながら、大友は感じていた。
支援が“個別”から“仕組み”へ変わりつつある。
その夜。
恵里とリビングで話していると、彼女が切り出した。
「どうするの?もし“関わってほしい”って正式に言われたら」
「正直……悩んでる」
「会社、辞める?」
「いや、まだそこまでは。でも、並走ももう限界かもしれない」
「だったら、“どこに立ちたいか”じゃない?
ただの支援者でいるのか、制度をつくる側にいくのか」
大友は黙って頷いた。
月曜の朝。
彼はスーツ姿で市役所を訪れ、議会事務局の部屋をノックした。
「先日のお話、少しだけ詳しくお聞かせいただけますか?」




