第十二話:逆流と証明
「……“町医者コンサル”だってさ」
金曜の夕方、社内のSlackにふと書き込まれたスレッドを、大友は黙って見つめていた。
誰かが匿名で書き込んだらしい社外ブログ。
そこには、彼の地場支援活動が揶揄される形で取り上げられていた。
『週末だけ町に顔を出して、データ分析っぽいことしてる“片手間コンサル”。
それが本当に価値なのか、自己満足ではないか——。』
「……そんなに目立ってきたか」
声に出さずに、PCの画面を閉じた。
同じ頃、会社でもざわつきが広がっていた。
社内の一部の中堅社員が上層部に「副業活動の明確な整理」を求める文書を出していたのだ。
形式的には「勤務時間外の活動」だが、
“社名や職業がクライアントに伝われば、企業イメージに影響する”というのが理由らしい。
日曜。
まどかの喫茶店に、新しく支援を始めた3店舗のオーナーたちが集まった。
「本当に効果あるんですね……。
SNSとLINEだけで、こんなに予約が動くなんて」
「売上、月ベースで15%伸びました」
今村沙知が、タブレットでFL比率の変化を見せる。
「食品原価が2割近く下がって、粗利率が7ポイント改善しています。
これ、地域平均では考えられない数値ですよ」
大友は、その様子を静かに眺めながら、ひとつのことを思っていた。
「見える。
言葉じゃなくて、数字で“結果”が語れるようになってきた」
その日の午後、彼は市議の鈴木と再び会った。
「大友くん、例のプロジェクト、議会でも注目されはじめてるよ。
“支援の見える化”が、行政側にとっても新しいんだ」
「中傷も出てきました。
でも、今は“成果報告書”として提出できる数字がいくつもあります」
「そのままいこう。“揶揄される”のは、変化の兆候だ」
夜、自宅で湊が眠ったあと、恵里が尋ねた。
「ねえ、あの記事……気にしてる?」
「……少しはね。でも、それより“証明できた”って気持ちの方が強い」
「あなたがやってること、少なくとも私はちゃんと見てる。
湊も、お店の人たちも。そこが本質じゃないかな」
「ありがとう」
その言葉が、何よりの支えになった。
PCの画面には、新たに開いたフォルダ。
【地場支援 実績報告 202X年上期】
├︎ 店舗別支援内容.pdf
├︎ KPI推移(売上・回転率・FL比).xlsx
└︎ 補助金連携状況レポート.docx
それは、誰に対する“報告”というより、
**未来の誰かが同じ挑戦をする時の「手引き」**のような気がしていた。




