第十一話:地場の連鎖
「この“あん食パン”、週末限定で出しませんか?
SNSとチラシで“午前10本限定”って打ち出せば、話題になります」
パン屋の山下は、困ったように笑った。
「そんな大それたこと、やったことなくてね……」
「今なら、まどかさんの店にも置いてもらえます。
“喫茶+パン”で回遊性もつくれます」
まどかは頷いた。
「うちの午後の時間、パンだけ目当ての人が来てもいい。
むしろ、ありがたいくらいです」
その週末、“地場連携”第1号キャンペーンがスタートした。
午前:山下パンの数量限定販売
午後:まどかの喫茶でパン付きセット販売
同時にInstagramでキャンペーン投稿
Googleマップ口コミ誘導とLINE登録特典あり
想像以上の反響だった。
朝8時半にはパン屋に列ができ、喫茶店にも午後から立ち寄る客が次々と入ってきた。
翌日、大友のもとに別の店から連絡が入った。
「美容室なんですが、うちでも“何か”やれませんか?」
「そちらはリピーター比率、どれくらいですか?」
「3割くらいですかね……」
「それなら、月額サブスクや、LINEでの予約自動化もご提案できます。
紙の台帳をアプリに移すだけでも、お客様の来店リズムが変わります」
夜、大友はPCに向かっていた。
「地場支援モデル(試作版)」というタイトルのスライドが開かれていた。
■ 支援内容
来店データの見える化
回遊導線の設計
事業主の意識変容(数字・継続・記録)
■ 月額費用
単店支援:¥10,000〜
商店街単位での包括契約も可
■ 特徴
補助金申請支援含む
“市内連携”による相乗効果
「これは、もう“モデル”として提示できるな……」
その日の夕方、大友は市役所の一室を訪れていた。
「行政と、地場と、支援と。
点を線にする取り組みとして、正式に“実証枠”で申請できますか?」
担当課長は頷いた。
「補助金じゃなく、“連携実証枠”での扱いにしましょう。
一部実費が出ますが、その分、成果は“見える化”が求められます」
「はい。すでに、記録とレポートは残しています」
帰宅後、恵里に一通の封筒を見せた。
「これ、なに?」
「開業届。とりあえず、個人事業主として登録しようと思って」
「ついに、両足で踏み出すのね」
「まだ会社は辞めない。しばらくは“並走”する。
でも、自分の意思で立てる旗を、ちゃんと掲げたいと思った」




