第十話:支援を、仕事にするか
「大友さん……相談があって」
ある日、まどかが少し声を落として切り出した。
「隣のパン屋さん、“閉めるかも”って言ってて……。
でも、味は本当に良くて。ただ、販促とか、まったくやってないんです」
「紹介してもらえますか。話を聞くだけでも」
「え、でも……お金とか、払えないと思うんです」
その一言に、大友は、しばし考え込んだ。
その夜。
ノートに、これまで支援してきた店の名前をひとつずつ書き出していた。
喫茶店:午後チケットとサブスク設計
豆腐屋:請求管理とLINE通知
化粧品店:在庫管理の簡素化
理髪店:口コミ導線の設計
そして、つぶやいた。
「これは、もう“ただの相談”じゃない。支援=価値提供になっている」
数日後、石倉・今村とともに、パン屋の店主・山下に会った。
年配の男性で、寡黙ながら職人気質がにじむ。
「別に、儲けたいってわけじゃないんです。
ただ……うちの味を“知られないまま終わる”のが、悔しい」
大友は、丁寧にうなずいた。
「少し、試させてもらえますか。
この味なら、届ける方法があると思います」
帰り道、石倉が言った。
「そろそろ、金の話も整理しとけよ。
こういうのが積もると、立派な“事業”になる」
「……だな」
大友は、胸ポケットから取り出したメモに
“地場支援サービスパッケージ案”と書いた。
店舗調査・現状分析
デジタル導入の簡易設計
補助金・助成金のマッチング
月1万円〜3万円の定額制(支援範囲に応じて)
「これなら、商店街側にも導入できるし、自分の労働対価にもなる」
「やっと、“お前の本業”っぽくなってきたな」
週末。
恵里に手書きの提案メモを見せながら、大友は言った。
「少しずつ、“事業化”していこうと思う。
最初は副業扱いでも、いずれ軸になる可能性がある」
「いいじゃない。応援する。
でも、会社との調整だけは慎重にね」
「もちろん。覚悟は、決めてるつもり」
そのとき、恵里がにっこり笑って言った。
「パパ、会社のコンサルと、まちのコンサル、どっちが楽しい?」
「……まちの方が、ちゃんと“ありがとう”が聞こえるな」




