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ダーラムシアの王都、ダーラム。
姫さんにとっては敵国のど真ん中だ。
冒険者証を見せて南門から中に入った姫さんは、その大きさに目を見張る。
大きく広がる平民街の真ん中を、目の届く限りに伸びる、馬車数台も並んで走れる大通り。
森のように深い木立があちこちに残され、建物はだんだん高くなっていって、貴族街へと続くようだ。
「奥のほうには大きな湖があってね。
王宮と周辺の建物は湖の周りに建っているの」
忙しそうに行きかう人々。すれ違う馬車と荷車。売り子の呼び声。
質実剛健なローランディア辺境伯領の石造りの館と、ダンスクのひなびた別荘地しか知らない姫さんは、大都会の喧騒に、もう驚くことばかり。
「冒険者ギルドや商人ギルド、乗合馬車の発着場なんかはこの南西区に固まっているわ。
ギルドで報奨金を受け取ったら、どこかでお茶でも飲みましょう」
案内は任せて、とジャニーンはきょろきょろする姫さんを引っ張っていく。
ダンスクよりずっと大きな建物にかけられた、冒険者ギルドの看板。
だが建物は古びてちょっとすすけた感じだ。
ギルドに向かうと、前の広場に座っていた若者が、こちらに歩いてくる。
「ノール牧場のお嬢さん」
あ、護衛で一緒に来た騎士の、いちばん若い奴。
「こ、ここでまた会うなんて、すごい偶然ですね。
僕たちは今日一日、休暇が出たんです。
どうでしょう、三人で一緒に王都を回りませんか」
しかし無情にも遮る声が。
「よぉ、若いの、待ち人に会えてよかったなぁ。
半日もぼんやり座って待ってたかいがあったじゃねぇか」
偶然じゃないとばらされて、真っ赤になった若者は、それでも気丈に続けた。
「旅の間、お話しすることもできませんでしたから。
騎士見習のジャン・トリストと言います」
マリアンが驚いたことに、ジャニーンは大胆ににっこりした。
「ノール牧場のジャニーンよ。こっちは冒険者のマリアン」




