8
まったく、何なのよ、この子。
まだ十二歳だっていうのに、しっかりヨルカと口論できて、言い負かせるだなんて。
読み書きも出来て、言葉も丁寧、動作もきれい。
それでもって、生活魔法まで使える、冒険者だって。
粗野で汚くて無教養なのが冒険者でしょ!
これじゃ制服を着て杖を持たせたら、魔法学院の生徒だって言ったって、信じるわ。
あの・・・ごほっ・・・
「あのヨルカって人と仲が悪いの?」
マリアンの心配そうな声に、ジャニーンははっと我に返った。
「ふん、あいつ、あわよくばこの旅で私をものにしようと狙ってるのよ」
「えっ?」
「ノール牧場のじいちゃんの跡継ぎは私と弟だけでね。
弟は体が弱いから、私と既成事実をつくっちまえば、堂々と婿入りして牧場を手に入れられるわけ。
じいちゃんもそのつもりで、私を同行させたんだわ」
狭いテントに女の子二人。
ほんとは寝なきゃならないんだけど、ぽつぽつと話を始めたら、愚痴が止まらなくなっちゃったみたい。
「だからさっきは助かったわ。
平地に出てしまえば人目があるから、危ないのは野宿するこの三日間だと思ってた。
夜這いなんかかけに来たら、蹴っ飛ばしてやっていいからね」
「そんなこと思ってる奴は、『ねこさん』の前を通れないわ」
マリアンはテント外に陣取ってる大きな影に向かってほほ笑む。
「ほんとに凄い相棒ねぇ。ヨルカが繋いでおきたかったわけだわ」
羊たちにも大もてだし。
と、ジャニーンは笑う。
笑うとかわいい子だなー、とマリアンもにっこり。
王都と魔法の話をしなければ、大丈夫か。
「無理やり結婚しようとしてるの?
あなたの気持ちは無視なの?ひどいじゃない」
ジャニーンはほっと溜息をつく。
「この土地は古臭いのよ、何もかも男衆が決めるの。
こんなとこに縛られるのが嫌だから、王都で成功しようと思ったけど、うまくいかなくてね。
弟を置いて逃げ出すわけにもいかないし、結局逆戻りよ」




