9
25
ドアを閉めて、箱っぽい機械に近付く。部屋の真ん中に持ってきた小物を適当に投げて、先に黒い方からだ。
倉庫とこの部屋を三往復して、やっとすべての荷物を移し終えた所。かえりの匂いは部屋から、まだ消えない。これは、僕の匂いなんだろか。九に僕はまだ会ってない。心臓を飛び上がらせながら、運び込んだのが、馬鹿みたいで、損した気分。
コードが二本、上面にある二つの突起から出てる。コードは両先に小さなわにばさみが付いてるタイプの導線で、その片方がそれぞれ突起を噛んでる。色は赤と黒。突起があるのは箱の端の反対側と、その反対側でかなり離れてる。
そんなものが部屋の右隅の方に置いてある。僕はその前にしゃがんでる。あともう一つ、青い箱型の機械は左の隅の方に置き、部屋のど真ん中に大きな黄色と灰のゴム布と、その他の雑多な小物が集めた。一つ一つが重くて、ここまで整えるのにもかなりの時間が掛かってる。
僕は目を戻す。これはなんの機械だろ。赤と黒のコードって、導線とか電気とかそういうイメージ。なにに使うものだろ。電池?
青い方の箱に目を移す。どかすと赤と黒の突起。こっちにも。今度は側面に。割に距離は近い。英語と数字の混ざった文字列が書いてある。突起の下の所に、大きいプラスチックのねじが横に六つねじ込まれてる。この向きで、この箱は合ってるのか、不安になるフォルム。置いてある向きが変なだけかな。正しい置き方があるのかな。かなり高い所から落としたけど、これ壊れたりしてないよね。
繋げてみよか。赤い所と黒い所。この黒い箱が電池なら、赤いコードと黒いコードをいきなり繋げちゃうとショートしちゃう? 箱の突起同士をコードで繋げよか。そうしよか。適当に赤い方から繋ぐ。次に黒い方を。雑に繋いじゃったけど危なかったかも。まあいいか。爆発することなんてきっとないよ。
黒い所の突起をつなげると、黒い箱の方のランプが緑色にぽかん、と光る。あれ、こっちが動く方? 機械の方か。青い方が電池だったって、そういうことだよね、これ?
次はどうしよ。黒い機械の方、緑のランプがついてる方に近付く。側面に、STARTとSTOPと書かれたボタンがある。やっぱりこっちが動く方か。それに側面に穴が二つ開いてる。貫通はしてないみたい。先がどうなってるか先が暗くて分からない。見づらくて、機械を傾けて光をうまい具合に入れて中を覗こうとしてると、穴の上にINFLATEとDEFLATEって文字がそれぞれ彫ってあるのに気付く。今さらだけど、これって空気を入れる機械でいいんだよね。多分。じゃあなんで穴が二つあるの。吹き込み口が一つだけでいいと思うけど。吸い込み口? きっとそれだよ。じゃあどっちが吹き込み口だろ。DEの方かな。INはなんとなく吸い込む口だと思う。その穴にこのホースを差し込んで、これでやっと舟に空気を入れられるってことか。
ホースを取り、DEの方に先を差し込んで機械と繋げる。もう一端は舟のどこに繋げればいいんだろ。
一旦、ホースと機械を手放して黄色と黒のゴム布を見る。どこかに空気を入れるためのノズルが付いてないだろか。探す。ゴム布は両側が内側へと畳まれてる。観音開きの扉を開けるときと同じよにそれをめくって広げてみる。手にずっしりと重量を感じて、あわててもう片方の手も使って支える。一度手を放し、呼吸して、それからも一度。ぺりりり、り。今度は上手くめくれる。灰色の部分が大きく見えるようになる。反対側も同じよに。
そうして広げると、ビニールの口に輪ゴムを入れて絞ったよな、ヘアキャップを大きくしたよな見た目になる。今は口をこっちに向けて地面にべちょっと張り付いてる。ノズルは見当たらない。裏にあるんだろか。
裏側をめくって覗いてみる。ここに注入口があるんだろか。探す。順に首の位置を動かして見る所を変えてく。空気を入れる所は一つしかないの。違うのかな。たくさんあるんだったらどれから入れたらいいかって分かんない。適当でいいんじゃない。視線を少しずつずらして、探る。
一回りして元の場所に戻って、結局空気を入れる所は二つあった。あとはここにホースを差し込んで、膨らむことを確認しなきゃ。手を伸ばして、ホースの先をノズルに押し込む。手を離すと、ホースはヘアキャップのゴムに巻き込まれてねじ曲がる。引っ張られて黒い箱が少しだけ引きずられるけど、緑のランプは光ったまんま。STARTと書かれたボタンを押す。しゅぅぅ、って音がし始める。ちょっと膨らんだらすぐ外して、下に持っていこう。
「あれ?」
膨らんでかない。音はしてる。逆かな。INの方? ゴムボートにつぶれたホースが、そもそも膨れてないよ。スイッチに手を伸ばし、一度止めて黒い機械からホースを外す。僕の前に、誰か使ったのか。
僕はINの方にホースの先を押し込む。これで、も一度。すぅぅ。音に手応えがあって、ゴムボートの前半分がそれに合わせて少し盛り上がる。やっぱりこれは空気入れで、ちゃんと作動するみたい。
「じゃあ一回全部外して、と」
ホースを抜き、電池を空気入れから外す。それぞれで、もともとあったよにまとめる。僕は部屋を見渡す。本棚に囲まれた空間に、倉庫から持ち込んだ荷物が広がってる。うん、足りないものはなさそう。それじゃあ。僕は荷物から引き出した白い板を片手にドアの方へ。板をドアの前に置いて、その上にしゃがみ込む。
九を待つ。茶色いドアの彫り込みに目を凝らして、その先の気配を探る。
26
どこへ行ったんだろ。座り込んで、もうずいぶん経つ。
もう出っても安全?
どうだろ。まだ下にいることは確かだけど。来ないと下には怖くて戻れない。でも火をほっぽり出してどこへ行くっていうんだろ。
「九は、」
九はなんで僕をかえりと呼んだ。かえりがそう手紙に書いたからって、それだけ? きっとそれだけなんだよ。でもなら、なんでそれを隠したんだろ。記憶喪失? 僕は記憶喪失だと思われてた。でも、それがどうしたんだろ。
それに、なんで九はバッグを拾ったんだろ。手紙が置いてあったからか。じゃあ、なんで僕をかえりと呼んだんだろ。手紙の文面はなんだっけ。今持ってる? 持ってる日記をぱららっと探すと中からくしゃくしゃになった便箋が出てくる。伸ばし、手のひらでしわを直す。を
『私が行く。待ってて。』
『それが新しいかえり。九へ。今度は。』
これはなんなんだろ。
はっと気付いて僕は気配をうかがう。目を閉じ黙り、耳をすます。九はいない? 分からない。通ったらすぐ分かる、と思うけど。
「かえりは、」
かえりは九と僕が仲たがいしたって知らなかった。
「九は、これでもない、九じゃない、大事なのは」
かえりは。僕は口にする。九のことはもういいの。
言葉にすれば思考はちゃんと像を結ぶ。きっちり形を取ってくれる。
この手紙は、きっと九があとで日記に挟んだんだよ。日記に手紙を挟んで、でも日記帳自体は僕のバッグの中に残した? そんなはずない。九は、僕に、かえりの記憶を思い出すな、って言った。そんなことをするはずないよ。
「九が挟んだわけじゃない、はず」
だからこれは九を引き寄せた手紙じゃない。ここに差し込んだのはかえり。ならきっとわざと。かえりなら、あの子なら。
「知ってたの、じゃあ」
僕が、はるが九から逃げ出したこと。狙って挟んだとしたらそのことに感づいてておかしくない。うん、知ってたはず。でも、九はどこ、ってかえりは一度も聞かなかった。僕が一人でいるのに、僕とかえりが一緒に行動してるのは知ってるのに。九はどこに行った? もうそのことはいいの。九は、ただ人を撃ちたいだけ。そう言葉にする。心の中にぽかり、と浮かぶ。上手く飲み込めないけど、それは一瞬の間だけですぐにその言葉の気持ちよさにどっぷりと浸かる。それで九を形容するいろんな、言葉になりきらない感情を僕は手放す。九は、人を撃ちたいだけ。トリガーハッピー。その単語が染みこんでく。だから、もう、気にしても仕方ない。
かえりは僕をどうにかしたいはず。僕から巻き上げたいはず。なにか。なにか。それからなんとか逃げなきゃ。意図に沿わない行動を取らなきゃ。どうすれば。
「僕は、誰にも、」
操られない。僕はもう操り人形じゃない。
でも、どうすればいい。
僕は日記を手に取る。バッグを手放して、僕の荷物はもう日記帳だけだ。どこまで読んだんだっけ。七月十何日かそこらだったはず。ざっと開くと、開き癖のあるページが、ぱらりと出る。
『七月十九日』
『試験湛水は八月中には始まるらしい。九に教えてもらった。「こっそり聞いたら教えてくれたよ?」このせいで職員に目を付けられてないといいけど。』
そうだ、ここまで読んで、この後しばらくなにも書いてないページが続いてて、それで読むのをやめちゃってたんだった。ここで終わりなんてことは、ないよね? まだなにも分かってない。
僕はページをめくってく。どこまでこの白紙が続いてるんだろか。今の所なにも掴めてないのに、大丈夫なんだろか。次々同じページを続いて、どんどん加速して、あっという間に全部めくり終わる。
「あれ」
どこにも書き込みがなかった? ううん、最後の方をよく見てない。今度は反対側からめくり直す。
最後のページにいきなり文字が並んでる。やっぱり。見落としてた。
『九月二十四日』
『私はかえりをやめるよ。振りはもう疲れた。こうじゃない。これは、ここまですることは、こんな風にすることはかえりの望んでたことじゃない。』
かえり?
その下にまた書き込みがある。
『私のせい。うまくやる。次は。でも私には無理。誰か。きっと生き返れる。名前を最後まで聞けなかったあの子。今書いてるのはかえり。』
なんでここでかえり? これはかえりの日記じゃないの。
日記の人って「自分はかえりだ」って言ってなかったっけ。
誰、この人。
次のページ。最後の方に固まって書いてあったみたいだ。でも消しゴムで消されてて、日付がかろうじて読み取れる、ぐらいだった。
『九月十六日』
何枚かめくってやっと読める所が登場する。消しゴムが当たってるけど、なんとか読める。
『日記帳を拾った。なにか書かないと。強迫観念がある。』
最初、の人じゃない?
戻ってケシゴムが掛けられてる所を細かく見るけどやっぱり読めない。あ、でもかすかに。
『動かなくなった。ぼそりぼそりってちょっとずつしゃべ』
『介抱。本物が死なないよに。私はかえり。かえりがあんなのにな』
そんなことが書いてある。なにかあったのかな。入れ替わり? 今までも誰かと入れ替わってたんだろか。筆跡は? む、と、似てると思うけど。開き癖のあるページ、七月十九日の所と見比べるけど、ああ、かすかに違うかも、ってくらいで気にならないし見分けられない。
次のページ。順にめくってく。
『九月十一日』
『最後は虚像が代わりに飾ってくれる。』
『九月九日』
『あの子の中の私は育ってく。きっとこれは間違い。』
何度目かのあの子。次のページに目を移す。
『九月四日』
『水が引いてく。あれ。』
『八月三十日』
『私そんなにすごくない。あの子の中の私に合わせるのは辛い。』
『八月二十九日』
『私よりあの子の中の私の方がずっといい。私もその方が楽。私は必要ないの。』
『八月二十五日』
『昨日犬がいた。逃げた。部屋であの子と話し込んだ。することない』
あの子って誰? 最初に戻れば書いてあるんだろか。
『八月二十三日』
『なにを期待してるの。どうしてほしいの。あの子には喜んでほしい。これも本当。犬には会わない。 八月二十四日 本当?』
それでまた次のページへ。
『八月二十二日』
『ついに。上まで逃げる。あの子に疲れてきた。食べ物回収しないと。犬も一緒?』
あの子しか出てこない。名前分からなかったみたいなことさっき書いてなかった? そうだっけ。
『八月十九日』
『九が来た。久しぶりだよ。でも追い出した。僕は自殺するつもり。いつか骨を握りに来て。そう言っておいた。九はいつか戻ってくるよ。覚えておいて。水はすぐ来るよ。 八月二十日 だって九まで死んじゃ駄目。地面近くに降りる。まだかなって待ってる。』
八月二十日の記述は濃く太く殴り書きされてる。僕はめくる。
『八月十六日』
『一緒にご飯探す。犬がいるって言ってるのに。自由に動き回ってた。あげるつもりない。あげる必要ない。』
『八月十五日』
『ストックがなくなったから、探しに行かなきゃ。あの子についでに聞いてみる。』
『七月三十日』
次のページ。
文字が一面敷き詰まってる。びっしり。珍しいこと。
『九が最近来ない。八月九日 女の子と会った。九かと思って話しかけた。変な人だと思われてるよ。ここに住むみたい。人が増えるのは。いい?わるい?なんだか複雑。八月十日 あの子はなんでここに来たんだろ。やたら絡んでくる。なんで私。八月十一日 食べ物どうしてるんだろ。ちゃんと自分の分は守らないと。死にたくない。』
それで上半分が埋まる。やっとそこで終わって、あとは今までと一緒のよに、下の半ページ使ってちっさな字が、ぱららら、とまばらに書いてあった。
『八月十三日』
『書き忘れてた。歌を歌った。一緒に。』
27
九の知ってるかえりと、僕の会ったかえりは別の人?
僕は本棚に囲まれた暗い部屋で、じっと立ったまま、つぶやく。
これはそういうことだよね。かえりが言いたいこと。本物じゃない。つい二か月前に偶然拾ったってだけ。それだけ。でもそれを僕に教えてなにがしたいの。本当のかえりは、自殺しようとしたけど出来なくて、九とさっき会った子に助けられて、でもここ最近死んだ人。今は狭い舟に押し込まれて水面の浮いてる死体。分かることは、それだけでしょ? 僕は日記をまた開く。九月二十四日の書き込み。うまくやる。次は。でも私には無理。誰か。きっと生き返れる。僕はこの一文に引っ掛かる。九は、さっきの偽物のかえりのことを知ってるんだろか。
九と、かえりって名前と、本物のかえりの日記帳を与えてそれでなにをしてほしいの。知ってほしい? 自分はかえりじゃないのにそんなこと思うもの?
でも、偽物のかえりは、あの匂いのきつい女は、それでどうしたいんだろ。
僕ははるだ。それにもう九から拒絶されてる。僕は九に近付いたら撃たれて死ぬ。ここまでかえりの予想通りなんだろか。ならなにがさせたいんだろ。僕に死んでほしいの。そうかもしれない。
九の中で僕は、関沢はるはまだかえりなんだろか。
ぱ、た。
かすかな音。後ろ。
僕は目を向ける。本棚。文庫本が倒れて、本の背にぶつかった音。部屋には、誰もいない。突然誰かが現れそうな、不気味な空間の空白があるけど。
僕の、真剣な言葉よりもかえりの手紙の方が重たいのだろか。そこまで洗脳は完璧なんだろか。なんで僕? ここにいたから?
どうすれば九を止められるんだろ。僕は部屋の中で、一層もやの濃い場所に、手を伸ばす。そこが、空間の空白。
止めるの?
止めないと。ここで止めないと、あとあとまで付きまとわれるかもしれないし。
へえ。
僕は腕を伸ばして身体を倒して、指に絨毯の感覚。なにもいない。
「あ」
外を警戒する。聞き耳を立てる。足音、なし。僕はドアの方へ寄る。耳をつける。うん、いない。
ゆっくりドアを開ける。きい。その隙間から少しだけ顔を出す。右、左ときょろきょろ。廊下は赤く、暗闇にもうすぐ完全に飲まれる。奥の方は、もう完全に飲まれてる。
だいぶ長い間意識から外してた。今の間に九は昇ってった? 分からない。もう上にいるかもしれない。観音開きの扉。この先に。背筋が冷たくなる。冷や汗がにじむ。ここは危ない。逃げなきゃ。
今にも、その扉が、重く内側に引かれるよな、
なんで突然不安になるの。九は屋上に着いたらどうすると思う? 火を囲んでじっとするのかな。それともこっちに来る? それならここは危ないけど。九が屋上に戻ってくる理由はなんだっけ。それは。心が冷えたまま、顔だけが火照ってる。九は、屋上が全部燃えて、そのままこの建物が全焼しても構わないんだよ? あのままたき火を放置してても、全然気にしない。いざとなれば泳げばいいって、九はそう言った。あのたき火の大きさなら、火が移るのも時間の問題だよ。
九はまだ僕を探してる。僕はまだ追われてる。あの子なら、すぐにここに来るよ。「そこだよね?」逃げた二回は二回ともあっという間に見つかってる。水の先に九。銃のきらめき。すぐここへ来る。銃をつきつけて「君はかえり」って脅してくるに決まってる。だから、同じ場所にいるのは、いやだ。ゴムボートを持ってすぐ下へ。無理だよ。運んでる途中で見つかる。失敗? なら、ひとまずは火を消そ。それで九が気付くかな。救助が来ないよに、ひとまず消すのは正解だと思うよ? ドアをそっと開けて外を覗く。九はどこ。廊下には誰もいない。
それに、他に出来ることもないし。たき火を崩して時間を稼いで、逃げるチャンスを窺お? 僕はもう一回左右を確かめる。
たたっ、と小走りで廊下を横切って、観音開きの扉に手を伸ばす。水面がこの階まで来れば、すぐにでも逃げれる。本当? 九に見つかりやすくなるだけじゃない? 逃げる道具を使うことは少なくとも出来る。今じゃ、本当に泳ぐしか手がない。それは、さすがにきっと無理。
僕は倉庫の中に入る。奇抜な色彩が出迎える。ねえ、火を消してそれからどうするの。九は追ってくる。たき火を消すなんてあからさまな証拠を残したら、きっとすぐに見つかるんじゃないかな? でも、残しておくのはもっと悪い選択。九が探し終わった部屋に入れ替わりで潜り込むつもり。逃げるにはそれが一番楽。でも、今、九はどこにいるんだろ。
灰色の棚の間を進む。棚に置いてある木箱は無視する。もう、舟を見つけてもなにか使えそうなものを見つけても、意味ないよ。Mの地を横目に階段を昇り、屋上に出る。
熱いっ。肌に刺激。僕はのけぞる。風。燃え盛るオレンジのたき火。ぱち、ぱち、って音が重なってひっきりなしに聞こえる。僕の身長を軽く越えてる。もう近付くのも怖い。息が、苦い。暑い。棒は。火の熱量から目と口を守りつつ、屋上に目をやる。奥にパイプ。HELPの文字。ついでに壊しておこうか。僕は一歩石張りの床に足を踏み入れて、そのまま左へ、白い壁に沿って進む。壁に不用意に手を触れて、あまりの熱さに僕は身もだえる。付けた左手をぶんぶんと振る。まじまじと見ると指先と掌底のあたりが赤くなってる。なめて冷やす。水がいる。たき火を崩してからだ。僕は歩を進める。空は晴れてる。オレンジの視界から、外が見える。まだ日は白いけど、たいぶ低くなってきてる。反対側の空は、もう雲が目立つ世になってきてるのだろか。上を向くけど、すすで汚れたひさしがあるだけで、空は見えない。
そのまま壁のすぐ横を足早に進む。
そのうち、フェンスに手がぶつかる。このあたりまで来れば、背中に風を感じて、冷たい空気が吸える。
フェンスに手を軽く引っ掛けたまま歩く。たき火は大きくなりすぎてて、まわりに散らばった角材たちも黒く焦げついてる。
九はこのことを狙って角材をばらまいたみたいに見える。
僕はパイプのEの縦棒を掴んで、たき火に向かって伸ばす。届かない。身体を少しだけ前に倒す。手首に当たるコートの裾が熱い。パイプを両の手の上で滑らせて、精いっぱい伸ばす。それでもパイプの端は空を切って、炎の前で揺れる。 重い。パイプを伸ばしてる手が震える。風がふわりと僕の方に吹いて、炎の舌が僕をなめとろうとする。僕は角度をつけて、たき火へと刺さるよに角度を調節してから、手を離す。ぐしゃりと音がして、火の粉と炭があたりにぶわっ、と広がる。とっさに目を覆う。熱い砂のよな粒が、風と一緒に通り抜ける。
目をそっと開けると、たき火は崩れてる。炎の中のキャンプファイヤーは倒れて高さを失ってる。
僕は、息を吐く。頬になんとはなしで伸ばした指が、すすで黒ずむ。
顔はひどいことになってそうだ。これで、大丈夫? 崩れた真っ赤になってる薪は、白い灰と一緒に屋上に散らばってた角材の上へと散らかる。次々、そこここで煙が上がる。新しい火の予感。これでよかったのだろか。延焼させただけじゃないだろか。でも、火自体は小さくなった。それじゃ、水を持ってきて、消火だ。じょうろ、が、どこかになかったっけ。屋上。
僕は、迷路の方へ首を向ける。白い空はかすかにオレンジに染まってってる。そのすぐ下で、細い葉が軽く揺れる。さびの浮いた。
でも、消えたのだった。あれを触ったのは、だれ? 天然水のペットボトルが元ねどこの部屋にあったはずだ。あれを持って来よ。僕はまた壁に近付いて、当たらないよにそっと進む。限界になった膝をかばいながら、開けっ放しになってるドアの中に滑り込む。そのまま階段を駆け降りる。待って。後ろから声が聞こえてくる。大きく息を吸う。幻聴。木箱の匂いが心地よい。冷たい。僕は進む速度をゆるめる。たき火に当たった顔が、膝が、コートが冷えてく。ここに九はいない。ここには来ない。そう信じて、足を一歩、また前へ。緑の床がきゅっ、と鳴る。僕の吐息くらいでは、部屋の空気は温度を変えないようだ。
倉庫を踏破し、ホールの赤に身を投じて、すぐに抜け出す。観音開きの扉を引き開け、廊下に身を躍らす。いつもの階段に向かおうか悩んで、やめる。他の階段を使お。廊下を反転する。こっちの先は暗闇でなにも見えないけど、もう視界が黒くても怖くない。懐中電灯なんて持ってたら九と会ったとき丸分かりだし。
ふう、と溜息をつく。もう、九とばったり会ってしまうんじゃないか、って胸のあたりがずうっと高鳴ってるのにも慣れた。進む。
でもどこだっけ階段。足に任せて探す。くるくる同じ所を回らないようにだけ気を付ける。
「どこだろ」
進む。開け放しになってるドアの横を通ると、オレンジ色の陽差しが目に刺さる。日が沈む。ああ。九の手がここにも来てる。
28
確か、こっち。あいまいな記憶を引っ張り出して、僕は廊下のつきあたりで左を選ぶ。見つけた階段を降りて、もともとねどこだった場所へ、もう木の粉で戦場のよに変わり果ててしまった部屋へと進んでる所。
ねえ、ここを脱出するとして、九は置いていくんだよね?
声。
うん。僕は返事を返す。
かえりも?
それしかないよ。
殺すんだ? このまま川に溺れさせて。
淡い苔色に廊下は満たされてる。
救助が来るし、死にはしないよ。
光が中途半端にしか届いていないからだよ。
生き残らせちゃって大丈夫なの? きっとずっと追ってくる。またそんな人を増やすつもり?
息に詰まる。口をつきそうになる言葉をひとつひとつ飲み込む。苔色をした空気をついでに吸い込む。
しょうがないでしょあれは。それだけ、吐き出す。
じゃあ今度は回避しないと。今度こそ殺さないと。
止めるって言ってるじゃん。どうやったら止まってくれるかを今考えてるの。
どうやったら止まるのよ。言ってみてよ。殺した方が確実。そうじゃない?
九の所へ向かえばきっとなんとかなるよ。そのためでもあるし。
撃たれて死んじゃうだけだと思うけど。
九は本当に僕を殺すの? 案外普通に接してくれたりしないかな。
甘ったるいこと考えるね。
声が、とげのある言葉で言う。
廊下を進む。暗くなってく。苔は、闇へと姿を変える。赤い絨毯だけが目立つ。
だって僕は一度も撃たれなかった。なにも言っても銃を向けてくるだけで、まずは脅すだけでいきなり引き金を引いたりはしなかった。突然キレてもそこでとどまってた。だから、きっと大丈夫。
なら九に会いに行ってみれば?
それはいやだけど。
「む」
なんでいやなんだろ? なにが僕は怖いの。
聞く。目はもう開けてても、閉じてても変わらない。吐いた息は、見えるのだろか。
心のどこかで、僕は撃たれるかもって思ってる。九の前に出たら撃たれるって直感がそう告げてる。なにを見てそう感じたんだろ。なにが。思い出そうとする。
廊下を進めてた足を止め、目を閉じる。耳は外へ意識を向けたまま。犬のうなり声も、九の足音も、かえりの息遣いも、なにも聞こえない。過去へさかのぼり、記憶の中を一つ一つめくり探る。犬のうなり声。オレンジ色の陽、日記のかすれた文字。名前の分からないあの子。「こんな人をかえりだなんて僕は認めない」笑い声。かえりの顔。そこで連想が止まる。これ? 増幅してく。頭の中に流れる。流れる。大きくなる。耳障りだ。止めろ。あれを。銃で。そんなもの僕持ってない。なんでもいい。ここは空想だ。撃って黙らせろ。僕の中にいつの間にか重たい銃。僕はいつの間にか踊り場にいて、九が片手を上げて、下の踊り場でにやりとしてる。今手の中にあるのは、九がくれた銃。このあと水の中に捨てられる可哀想な。笑い声はまだ続いてる。響いてる。音の元に目をやると、かえりがすぐ横にいる。九は私のもの。あなたには見向きもしてない。見せつけてる。僕は混乱する。九に助けてって視線を送る。九は微笑んだままだ。撃ってって。そう言ってるよな表情。ここはどこ? 最初に九と会ったとき? じゃあなんでかえりがいるの?これが思い出すべき記憶? こんなこと体験した覚えないよ。
銃だ。僕は思い出す。かえりの笑い声は霧散する。九のしたり顔もイメージから消える。世界が戻ってくる。そう。水没しかけてた階で銃を見た。九はあれを握って僕を探してた。あのきらめき。僕を必死に探す目。あれは本物。視線がこっちを向きかけて僕は隠れる。身をぶるりと震わせる。首をぶるぶると振って、廊下に目を戻す。多分こっち。そうして道を選びながら、そんな九との記憶をしま、おうとする手をぐん、と掴む。違う。これは違う。僕はここで直感したわけじゃない。九を見つめる。逃げなきゃ。ここで改めて見せつけられただけ。初めて実在する形で再認識しただけ。僕は、なぜ九と別れた? 僕はなんでここにいる?
かなり忘れてるみたいだねえ。
違う。記憶に蓋をしてただけ。これもきっと押し込めただけ。思い出す。忘れてることを認識できれば僕の記憶はすぐ取り戻せる。今までずっとそうだったから。きっと、今回も大丈夫。また目を閉じる。どこ。別れたのはいつ。下で九を見つける前。僕は逃げてあそこに行った。そのすぐ前。なにがあった。煙が黒い雲みたい。手紙。新しいかえりが来る。そんなに君が『はる』だってことが大事?僕はかえりじゃない。
その台詞に手を伸ばす。「僕は、はる」って声に出す。
「僕は、はるだ」
操られるなんて、誰かの真似をさせられるなんて。それはいやだ。僕にかえりを重ねないで、それだけはやめて。
九はなんでこんなことをしようと思ったんだろ。僕をかえりだって思いながら接してたなら、本物のかえりの死体のことはどう思ってたのかな。
かえり。僕は、はるだ。かえり。僕は。
手紙。偽物のかえりからの手紙。新しいかえり。生まれ変わり。そういう風に考えたのかな。きっと九の心はそこにあるの。かえりのために生きること。彼女の言葉を、疑わず、そのまま飲み込むこと。それが生きがい。見初めた人のために動きたいだけ。当人が死んでも続くこと。そして、あの子はそれを一生やめないよ。だから僕はこれ以上あの子と一緒にいたくない。元の関係でも僕にはもう必要ない。
このまま見殺しにしてもいいんじゃない?
それでも、いいかもしれない。僕はただ僕のいるべきどこかを見つけて、そこで質素に優雅に暮らしたいだけ。そういう生活にたどり着いたのに、ある日突然過去に後ろから首をずんと掴まれて、暗く湿った吹き溜まりへ連れてかれる、ってのだけはごめん。きっとこれを野放しにしたらここを脱出してもどこまでも追ってくるよ。
怖がりすぎじゃない?
ドアの前で立ち止まる。確か、ねどこはここだったはずだ。ドアはしっかりと閉じてる。
これくらい警戒してないと危ないって、僕は学んだの。もう増やさない。
そう。なら。
でも、殺さない。
じゃあどう止めるの。
僕はドアノブに手を伸ばす。端に寄せられたままの机と、ふかふかの白い椅子。部屋の中には誰もいない。木の粉が部屋の中にこべりついてるよな。僕はゆっくりと中に入る。ペットボトルの入った段ボールはどこ。机を大胆に動かし過ぎたせいで、どこになにがあるかなんて全然わからない。
ほら、殺すしかないじゃない。しびれを切らしたよに言う。
殺さない。
僕は、大きな机の下に詰められたごみの中に左手を突っ込む。ここにあるはずだ。僕は腕を引き、手にしたごみを後ろに投げる。それに合わせて、頭の中でいちいち響く声を一緒に意識から飛ばす。
火を消したら、どこへ行こ。
そんな言葉が、代わりに頭の中に浮かぶ。
***
真っ暗な場所に目が慣れて、うっすら水面と廊下が見える。
部屋のドアを開けて僕は部屋の中を窺う。ここにもいない。廊下を進む。じゃぶ、じゃぶ、とその音だけでここは満ちてる。どこまでも暗闇が乗っ取ってる。赤い絨毯が消えた廊下は、気配を探れない。足の使ってる水はほのかに暖かい。スカートへ跳ねた水滴が、乾いて体温を奪ってく。息が白くならないのが、ほんの少しだけ不思議。もうすぐ夜だ。
また、ドアを開ける。内部に水がごうっ、と吸い込まれてく。僕はドアの横の壁に貼り付いて、流れに押し込まれないよに逃げる。廊下のろうそくみたいな照明は水没したみたいで、光をともさない。波が安定するのを待って、それからドアのすき間から中にある家具にざっと目を通す。ドアをそっと閉じ、次の部屋へ向かう。その繰り返し。ずうっと進んでく。
2Lペットボトルを五本ぶちまけてもたき火はくすぶったままだった。片手で持った段ボールは重くて、階段を昇ってるあいだじゅう九の手が借りたかった。今は水没した廊下を進んでる所。夕日が僕の目を染めて、視界は黄色と赤で満たされた。少しだけ見とれて、それからここまで降りてきた。かえりはここにいる。日記について聞かなきゃ。僕は手を前にぴんと伸ばしたまま、ゆっくりとすり足で進む。腰が引けてるままなのにも疲れてきた。
次のドアの前に着く。僕はいつもの通り、ドアを開けて、そのままドアの横に貼り付く。
「あれ」
水の声がしなくて、代わりに高い声。顔を上げる。よく見るとドアの前にごみが溜まってない。かえり。部屋の中を覗く。中に水が入ったまま?ちょうどドアを開けた所。その先に人影。
「また会った」
そう続ける。部屋の中の机の上に、頬杖をついて座ってる。顎が動いて、僕に話しかけてくる。この声。かえり。やっと見つけた。
「かえりは、僕に死んでほしかったの?」
「は?」
言葉が上滑りする。僕は、かえりと離れてくよな感覚に陥る。待って。まだ聞きたいことが。僕はなんとか体勢を立て直そうって台詞を繋ぐ。
「九に、かえりを殺して欲しかったの」
「なにいまそんな話になってるの」
「どうなの」
ねえ、かえりはここでなにをしてるの。
「あなたは九に殺されそう、ってこと?」
「あなたが仕込んだことでしょ」
「仲直りは出来そうなの?」
仲直り?
「それは許してあげなきゃいけない」
なに言ってるの。僕は僕だ。僕の感情だけに忠実だ。
「いやだ」
「なんとかより戻してね」
「よりって、」
「違わないでしょ」
「話を勝手に変えないで」
なに言ってるんだろこの人。
「も一度聞くよ。この状況はあなたが仕組んだことでしょ?」
「私なにもしてないよ」
またそれか。
「日記を僕のバッグに入れたのを、九に手紙で嘘吹き込んだのを、なにもしてないって?」
「でもそこから勝手なことをしたのはあなた」
「僕ははるだ。かえりじゃない」
こんなもの押し付けられたらたまったものじゃない。
「そうね。あなたはまだかえりじゃない」
まだ?
「ごまかさないで。かえりを九に殺して欲しかったんでしょ」
「だとしたらどうするの」
「認めたの」
「そういうわけじゃないけど。あなたはそれでどうするのかなって」
「あなたを九の前に引きずりだす」
やるなら勝手に二人で気持ちよくなってろ。恋人に殺してもらうプレイに僕を巻き込むな。
「私を、自分の代わりに殺してもらうの?」
「死ぬべきなのはかえり」
殺されるべきなのはあなたで、僕じゃない。
「僕じゃない」
「なんであなたはここにいるの?」
唐突に話を振ってくる。
「関沢はるは、どうしてここにいるの」
「話をずらさないで。あなたの狙いはそれ?」
僕を九に殺させるのが狙い?
「だから勝手なことをしたのはあなただって。そんなわけないじゃない」
「狙ってこの状況を作ったわけじゃないの?」
そうだとしてもやることは変わらない。かえりは黙ったまま。どうやって目の前のかえりを捕まえようか。あれは肯定。かえりの目的は新しい自分を九に殺してもらうこと。だからこの人を九の前に持ってけば、生き残れるはずだ。九はなにが狙いかは分かんないけど、それでどちらも黙るはず。
「日記は読んだ?」
また別の話だ。
「読んだけど、どうしたの」
「そう」
かえりは目を見開いて、それから黙る。
「そう…」
ぽつり呟く。
足元に視線を。にらむ。僕の手元に武器はない。手錠もない。どうやったら。紐? それもないよ。殴って気絶させたら。そんな力ないよ。
かえりはまだぶつぶつ言ってる。
閉じ込める? そうするしかないね。どこか、この部屋でいいか。窓あるけど。そこから逃げるかな。泳げば出られるね。駄目かも。自殺するかもしれない。死ぬのは怖いのかな。どっちにしろ鍵がないよ。無理か。
かえりが手を叩く。僕はちょっぴり驚いて視線を戻す。
「ねえ、本当に日記を全部読んだんだよね?」
どうしたんだろ。
「そうだけど…」
かえりは、笑顔になってく。ふわあ、って口からなにか漏れ出してくよな。とろけて舌を伸ばしたらなめとれそうな。かえりはこんな変な笑い方がいつもなんだろか。
「なら、私は逃げなきゃいけないよ」
かえりがなにかが漏れ出た口からそう発する。
「捕まる気はあったの」
「それでもいいかな、とは思ってた」
そう言って身をひるがえす。
「待って」
ドアの前へ回りこむ、ばじゃ、って大きな水しぶきあげて。両手を横に広げる。止まれ。かえりが近い。すぐ下げる。両手を臨戦態勢。今お腹を殴られたらおしまいだった。九の目を見る。少しだけ下を向いてうつむいた顔が、陰に埋まる。
「このまま、僕についてきて。九に会って」
ゆっくり、一言一言切りながら、言い含めるよに言葉を飛ばす。
かえりは咀嚼するよにゆったり頷いて。笑顔のまま、
「あなたみたいな人種になりたかった。きれいな人に。名前はなんて言うんだっけ? 忘れちゃった。でももうあなたはかえり。だって私の記憶を持ってる。私はあなたの中で生き続ける。生き続けられる。私は、やっときれいになれたの」
目が笑ったまま、口が人間じゃないみたいな速さで動く。平坦に言葉を飛び立たせる。ふらりと、僕はよろめく。
「これは、この身体は、私はもう抜け殻」
続けてぽつりぽつり。風が吹いて、僕の背後の、閉めかけだったドアがきいっ、と水をはけながら開く。目は確かにこっちを向いてるのに。君のことなんて一つも見てない、ってそんな身のこなしと口調。
「ねえ! 九に殺してほしかったわけじゃないの!」
でもせめて叫べば届くよな、そんな気がして声を張る。
意外そな目でかえりは首をこちらに向ける。
「なにそれ。違うよ」
にべもなく否定する。そういうことじゃないの?
「ならじゃあね、もう会わないよ」
そう言って僕の横をすり抜ける。ばしゃ、ってかすかに音。
「あ、」
ぴん、と伸びた背中。強い人。この人の説得は無理だ。なら力と暴力で。
狙うのは頭。きっと上手く行く。遠心力で勢いをつける。
止まれ。
廊下をまっすぐ歩いてくかえりに。こめかみ。九が振り向く。目がこっちを。そのまま振る。
かえりがその勢いにふっとばされて倒れる。ぼじゃ、ん。
一撃じゃ死なないはず。ごぼ、ぼ。かえりの口から空気が漏れてく。泥水の向こう、咳き込む顔が見えた気がする。
確証はないけど、僕の力なんてそんなものだ、きっと。死んではないはず。




