第64話
巡回役の報告が無かったなとクシナは、気づいた。
「あなた。業務による報告が無かったのだが・・・」
鈴谷も気づいて、秘書官のアシラを呼んだ。
「アシラ。本日から10日間の日誌を持ってきたまえ。」
「畏まりました。」
それを持ってきて、鈴谷は、気になる部分を読み通した。
エルナは、飛翔しながら、桜花のいる港に着いた。
見張りの土藁氏は、空中からエルナが現われた。
「土藁氏。久しぶり。桜花はいる?」
庭園から桜花の声がした。
「私は、ここよ」
庭園に着地し、鈴谷の伝言を伝えた。
「本当ですか。ありがとうございます」
「兵士が変な騒ぎを起こしてしまい、ごめんなさい」
「誤解が解けたなら、何よりです。私達は、明日、出航します」
「わかったわ。ゆっくりとお休みください」
そう言いつつ、庭園から離脱し、飛翔していった。
エルナも元気だなと思っていた。
巡回中の兵士達は、選ばれし代行者は、特別なのかと思っていた。
“この俺が、代行者に選ばれて・・・”
それぞれの兵士も悔やんでいた。
桜花達の船は、どうなっていたか?
「みんなは、今すぐに出航しますか?」
みんなは、首を横に振った。
「そうね。私も分かっているわ。今からの出航では、無理があるわ」
仲間達も同意見で、夜間の船旅は、困難となっていた。
当然だよな。
話し合っていたら、すでに夕方となっていた。
本当に早いよな。
気が付けば、漆黒の魔王のほんのわずかな漆黒の魔力を利用していたのかもしれなかった。
まさかかと思うが、どこかの属性世界に潜んで、混乱している場所を狙っている可能性があるのだからだ。
桜花も気づいたら、漆黒の魔王の姿が無かったことだ。
「そう言えば、漆黒の魔王が現われないわね」
ふと思えば、方角の球を開けて、漆黒の魔王の在りかを探した。
集まっていた世界が、風の属性世界に集まっていた。
(この状況だと、明日にならないと難しいわね。)
先程の様に仕方がなく、休むしかないようだ。
シーホープ号のメンバーもすぐにお休みだ。
桜花も仲間達の状況を確認し、みんなが眠っていることだ。
桜花も思っていた。
(もう、しょうがないんだから)
本当にしょうがないよね・・・。
エルナも鈴谷に報告したが、音信普通のようだ。
一日が過ぎてしまい、朝になった。
鳥の鳴き声に気づいた桜花は、慌てて声を掛けた。
「みんな、起きてっ!!出航の準備よっ!!!」
やはり、こうしないと行動に移せれないのだからだ。
「桜花。船を離すぞっ!」
「出航の準備よ。風の属性世界へ」
「よし。出航の準備だ」
スバルは、ナイトに向けた。
「ナイトっ!!取り舵で頼むっ!!」
「おうよっ!!」
機械室もどきに入り、ギアを切り替え、ペダルを漕いだ。
ナイトの合図で鐘が鳴り、前進に切り替えた。
再び鐘が鳴り、港から離れて、出航した。
いつもの様に土藁氏は、柱のてっぺんに着き、海の周りを確認し、空の状況も同じことだ。
帆を張るスバルは、風の吹き具合も良いだろうと思った。
「スバル。今すぐ休んでくれたまえ。夜間の舵を握るのがおまえだ」
「ああ。そうだな」
ナイトの指示で、スバルは、休んだ。
風の属性世界に到着するまでは、2日間かかるだろう。
Dr.ガイは、Dr.タニック号の修理と燃料の補給も完了し、エンジンを起動させた。
「うむ。うまくいったな。すぐに出発だ」
「「「ガイガイッサーッ!」」」
エンジンの音が響いて、海中から浮上した。
(これで、計画通りだ)
Dr.ガイは、風の属性世界に向かうこととなった。
漆黒の魔王の様子では・・・。
風の属性世界に向かった。
心の闇を嗅ぎつけた。
その為、人類を陥れることで、漆黒の魔王のエネルギーとしている。
精霊世界では、漆黒の魔王の動きを気にしていた。
光の精霊は、漆黒の魔王が復活することを考えていた。
「みな、気になると思いますが、漆黒の魔王が復活する可能性があります」
闇の精霊も当たり前のことだと考えていた。
「当たり前だわ。復活したら、誰が倒してくれるのかしら」
精霊世界が別の世界で離れる訳にはいかなかった。
当然のことで、代行者が倒さねばならなかった。
風の精霊は、不安を抱えていた。
「風の属性世界に危害を加えることになるのでしょ」
火の精霊が入ってきた。
「甘ったれるな。あんただって、わかっているでしょっ!」
「言っていることは、正論だわ」
水の精霊は、冷静だ。
それぞれの精霊も異論もなく、頷いた。
代行者が、倒してくれることを願うことだ。
竜の地下講義堂で会議を始めていた。
光の竜は、気づいていた。
「みな、揃ったな。漆黒の魔王が復活するようだ。」
闇の竜も分かっていた。
「ああ。奴の動きが気になっていた。狙いは、風の属性世界で混乱を招くことだ」
風の竜は、揺るがなかった。
「可能性としては、あり得るな。風の代行者がいるから大丈夫だろう」
水の竜は、安心できなかった。
「漆黒の魔王は、恐ろしいと思わないのか?」
雷の竜は、一部の属性世界が無くなることも恐れた。
「そうだな。奴が好き勝手にされたら、支えられなくなるからな」
木の竜は、一度、木の属性世界が無くなる寸前だった。
「今の世界で、汚染されたら、人類が終わっていた。」
土の竜も終わらせる訳が無いだろと。
「終わらせて、たまるか。わかっているとは思うが、我々は、動けないからな。我々の役目を忘れているわけではないな」
火の竜も当然だ。
「ああ。選ばれた代行者の役目を背負わせるしかないからな」
結論も出ていたようで、漆黒の魔王を倒すには、それぞれの代行者にしか、倒せないからだ。
光の竜は、決断した。
「諸君。漆黒の魔王が確実に覚醒してしまったら、我々も動くとしよう」
全ての竜は、こくりと頷いた。
すでに夜となり、スバルがラリットを握っていた。
しかし、スバルも眠気を襲い、やむを得ず、近くの陸で休むことにした。
陸が近づいてきたので、碇を落とした。
「そろそろ、俺も限界だ」
立ちっぱなしの状態とラリットを握り続けたことで、身体的に負担を背負っていた。
(みんなには、すまないと思うが、俺も休むとするか)
扉の開く音に気付いたスバルは、振り向いた。
「スバル。大丈夫」
「土藁氏」
「船の動きが止まったのを気づいたんだ。それに帆を張ったままだよ」
「すまない。そろそろ限界だったんだ」
「後は、オラに任せて」
土石器に変わり、飛翔し、帆をたたんだ。
(すまなかったな、土石器)
寝室に入ったスバルは、専用のベッドに寝込んだ。
帆をたたみ終わった土藁氏は、自室に戻り、就寝した。
夜間の移動も負担がかかるのも当然だ。
Dr.ガイは、太陽が出てくる前に風の属性世界に移動していた。
「おっ、もうすぐで風の属性世界が見えて来たぞ」
風の属性世界の巡回兵士に見つからずに潜み始めた。
到着し、Dr.ガイが作戦を実行した。
風の属性世界で騒ぎを起こそうとし、Dr.タニック号の船内から機械を取り出した。
Dr.ガイのお手製の漆黒の魔力を振りまいた。
つまり、漆黒の魔王が現れやすくするためだ。
飛翔しているペガサスと巡回兵士が、異変に気付いた。
「おい。何か寒気がしてきたぞ」
「そうだな。一刻も早く、桃真様に向かわねば」
兵士とペガサスも慌てて、避難した。
まさかと思っていたが、漆黒の魔力の可能性があると・・・。
Dr.タニック号の庭園で、双眼鏡をのぞき込んで巡回兵の様子を確認していた。
「ふむ、立ち去っているようだ。このまま漆黒の魔力をばらまくぞっ!」
出力を上げて、風の属性世界を広範囲に広げた。
見る見るうちに植物も枯れていった。
巡回兵士は、風の城に到着し、桃真に報告をあげていた。
「桃真様。漆黒の気配が感じ取りまして、離れの隠れにいるのだと思われます」
「何っ!」
桃真は、席から立ち上がって、窓を開け、外の様子を確認した。
「なんだあれは・・・」
信じられない光景を目の当たりにした。
(まさか、Dr.ガイの仕業か・・・)
座椅子に座り、桃真は、巡回兵に指示を出した。
「お前たちは、緊急の指示を出したまえ。隊長達に風の結界を展開するんだ。良いなっ!!」
「「はっ!!」」
巡回兵は、王室を退出し、それぞれの全兵士に桃真の指示を実行した。
それを聞きつけた隊長も慌てて、持ち場に着き、風の結界を展開した。
桃真の魔力を利用し、街中に結界を展開した。
ペガセイバーは、慌てて風の結界を展開していることに気づいて、状況を把握した。
「街中の塀の外側は、一体どうなっているんだ」
展望を登って、先の様子を確認した。
「これは・・・」
つまり、漆黒の魔力の霧が散布されていた。
(桜花達に早く知らせないと・・・)
ペガセイバーは、最終手段として、風の魔鉱石をかざして、桜花達に助けを求めた。
(桜花、魔鉱石の反応に気づいてくれ)
そう願うのである。




