32.因果その2
――なんでこんなとこに猫?――
「可愛いぃぃ!」
獅子が自転車置き場まで駆け寄ろうとするのを部長が止める。
「流石に風邪ひくって」
「平気平気、ほらほぼ小雨だから実質晴れてる!」
謎理論を展開しながら部長の停める手をほどき猫に近づいていく。
「あ、コラ!」
「よーしよしよし、おいでー」
「そんな急に近づいたら逃げるぞ、、逃げますよー」
一般的野良猫は人間が見えたらまず凝視し、その人間が一歩でも動こうものなら目にもとまらぬ速さで逃げてしまうそんな生き物。
例外としてその野良猫が地域猫あるいはその野良猫が出会ってしまった人間の近づき方が以上にうまいか。
獅子は後者だった。
「ほらーおいでー権兵衛ー」
「ニャー」
「なんかうまくね?」
「あいつ生き物好きだからな、この前の帰り道だってな」
【犬派?猫派?】
【俺は犬だね】
【確かになんか竹って犬派の顔してる】
【褒めてるんだよね?】
【俺猫だね】
【ねぇ、褒めてるんだよね?】
【獅子は?】
【どうして】
【ねぇほめ、ん?】
【どうして人は争うんだい?同じ生き物じゃないかそこに善悪上下左右なんて関係ない】
【ん?】
【犬も猫も、豚も牛も羊も皆同じ生き物じゃないか】
【全部哺乳類じゃねぇか】
【私は生き物を無駄に殺し、そこに上下左右つける輩は決して許せません!イェスビーガン!!】
【今日のから揚げいの一番にお替りしに行った奴がビーガン名乗んな失礼だろ】
【生物は皆平等!ラブアンドピース!】
【虫嫌いがなんか言ってんぞ】
「てな会話があって」
「頭悪そう」
「にしてもお前敬語は?」
「あ!部長見てください獅子先輩が猫をお連れになられましたよー!」
「変」
「神田ー見て!権兵衛」
「ニャー」
「変!」
猫の体に着いた水を獅子の来ているジャージで拭ったあと、一旦保健室に連れて行く。
「失礼しまーす」
「あらどうしたの?転んだ?」
「いえ、猫を拾って」
「猫を拾って?」
獅子が自分の来ているジャージのジッパーを下げると中から猫が顔話出してくる。
「ニャー」
「「変!!!」」
保健室に先ほど美術室からパクってきたダンボールにタオルと水の入った紙コップを置いて簡易猫ゲージを作る。
「この段ボールどっから持ってきたんだ?」
「借りて来た」
「今日美術部休みだけど本当?」
「ホントダヨ」
「よっぽど喉乾いてたんでしょうね」
猫の見た目は毛並みも毛の色も特に可愛くも無い普通の虎柄で大人猫にしてはなつき過ぎているのでおそらくは子供だろう。
だがそんなことが気にならないほどに痩せていた。
「水は会っても猫のエサはここには無いし困ったわね」
「コンビニで買ってくる?」
「あり」
「誰が行くの?」
「そりゃ後輩が」
「いやいや、ここはじゃんけんでしょ」
近場にあるコンビニとは言え、極寒の大雨の中子供が外に出ようとする行為は大人ましては教員なら絶対止めるべき行為なのだが、このやり取りを見ている教員は
――青春だわね――
青春に弱いおばさんだった!
「行くぞー!」
「「「じゃんけん!」」」
「ありがとうございましたー」
「なぜ俺が」
恵敗北。
豪雨の中買い物から帰宅。
「買ってきました、、はっくしょん!」
「ドライヤーで乾かしてね」
「あざっす」
「食うかな?」
恵の買ってきた缶詰を開けお皿に出して猫の前に置く。
「ニャ、ニャニャ」
「食った?食ってる」
「可愛いわね」
「権兵衛いっぱい食えよー」
「権兵衛?」
「名無しの権兵衛から権兵衛っす!」
「「「変!!!!!」」」
外は雲一つないほど晴れていた。
「ニャーーー!」




