30.わっつ
窓や扉が全開だが蒸し暑く、汗が滴り落ちる。
蝉の甲高い音が余計な暑さを加えてくる。
「はい、休憩!」
柏木の休憩の合図とともにまるで光に群がる羽虫の如く部室に駆け寄り扇風機の前に集まる一同。
「どけボケ!俺は先輩やぞ!」
「こんな非常事態に上下関係気にしてられません!命にかかわります!」
「そーだそーだ!もっと言っちゃえ!田中君!」
「てめっ恵ふざけんなよ!?」
部室で言い争っているところに柏木が入ってくる。
「そうですよ恵君、君はこれから予習が待っているんですからね」
「へ?」
蒸されてる室内での予習はガチで命にかかわると恵が柏木を説得し、何とか空き教室で行うことに。
――温度感ににぶい火星人どもめ――
「ではここの答えは?」
「あー、x=8?」
「x=-8です」
「わっつ」
――まぁでも、あの暑さに耐えながら部活するより冷房の効いた室内でぼーっとしてる方がマシか――
「ではここは?」
「21!」
「21分の1です」
「わっつ!?」
それから一時間ぐらいした後に練習が再開される。
「先生、僕お昼食べてないのですが」
「あぁそうか、恵君は予習してたんだね」
――忘れるか?普通――
「ちゃっちゃと食べてきなさい」
「はーーい」
――鬼なのか?――
みんなが暑い中練習してるところを扇風機の横でおにぎりを食いながら眺めている。
――背徳感――
「ッサ!」
靴の裏の滑り止めと体育館の床が汗を含んでいるせいで余計に擦れる音がよく響く。
――青春って感じだね~――
卓球台にピンポン玉が一定のリズムで当たっていく音。
まれに響く何かが破裂した音。
「いってぇ!」
「ざまぁ!」
――青春だなぁ~――
外が一瞬白く光った後にに三秒、遅れてなる轟音。
――せいしゅん…ん?――
先ほどまで感じていた蒸し暑さとは一変し一気に肌寒い温度まで下がっていく。
「雨か」
「珍しいーー」
――寒い寒い寒いって待てよ?雨ってことは――
「皆部活はいったん中止!」
――まさか――
火星での雨は一年に三回あるかどうかの頻度で、現代では科学的証明が曖昧な火星版積乱雲が突如空全体を覆い太陽の光を遮ってしまうので温度は真夏日でもマイナスを超え雨は一晩中振り続けている。
つまり――――
「ロッカーからお泊りセット持ってきてもう一度体育館集合ね」
――わっつ――




