3.入学式
「キタァァァァァ!」
「ん?君どうかしたかな」
「あ、いや、キタに行きたい」
「ん、行けると良いね」
――しまった、つい嬉しくて声に出てしまった――
――この子ちょっと怖いな――
中断されていた先生の自己紹介が終わったあと、全員で体育館に行くために廊下に整列していた。
「では親御さん方は先に」
――あぁ、行ってしまった――
「ママー!」
「しゅんちゃん泣かないの!もう恥ずかしい」
――まぁ子供だもんな、親と離れると反射的に泣くもんさ――
親たちが先に体育館に行った後におちせんが皆に指示を出していく。
「それでは出席番号順で並びましょう」
――懐かしいなー、確かあいうえお順だっけ――
「って紫音じゃん!」
「君、だれ?」
――あ、そうだったまだあってなかったんだな――
「ひさし、、、初めまして、俺吉田めぐみって言うんだよろしく」
「よろしく、、、」
――あれ、第一印象が悪かったかな――
出席番号順に並べた三組は目の前の二組が移動を開始したタイミングで移動する。
そして体育館のパイプ椅子に座って先生たちの話を聞いていたころ。
「校長先生、ありがとうございました。続いては学級主任の原先生お願いします。」
と、おちせんが呼ばれて教団に上がるタイミングで一人の女の子が突然大声で泣き出してしまった。
それを見て慌てて女性教員が駆け寄るがどうやらお漏らしをしてしまったらしい。
――分かる分かる、校長の話ってくっそ長いもんな――
女性職員と校長と女の子で体育館を後にして、おちせんが話をしだすが先ほどの小騒動が気になる一年生たちで一人を除いておちせんの話を聞いてる人はいなかった。
――どうしてわしばかり――
――可哀そうなおちせん、分かるよ俺もプレゼンの発表聞いてくれないと傷つくもん――
――あ、さっきの変な子だけがわしの話を真剣に聞いてくれている――
恵、齢6歳にしておちせんからの好感度急上昇。
そして入学式が終わってみんなで教室に戻った後、軽いレクリエーションをすることになった。
「では皆さんで外に出て、だるまさんが転んだをしましょう」
「やったー!」「わーい」「楽しみー」
――ふっ、ガキどもめこんな子供ゲームではしゃぐとは――
「親御さんも参加しても大丈夫ですし写真を撮るために参加しなくても大丈夫です」
そして外に出てだるまさんが転んだがスタートするも開始3分で大勢が脱落して残り子供が二人だけになってしまった。
――ぐぬぬ、教員歴30になるわしが本気を出してもアウトにならんとは――←鬼
――なんという奴らじゃ、確か一人は八木紫音でもう一人は――
「頑張れ!恵ちゃん!!」
「だるまさんがーーーーーーコロンダ」
「はいしおんくんアウトー!」
――くそ、流石は吉田君いや吉田ならばここからは本気を出させてもらおうか――
――おちせん相手が悪かったんだ、そのフェイクはもう知っている――
――いざ、――
――勝負!!!――
この後、普通にチャイムが鳴って引き分けとなった。
「「あ、」」
帰りの会が終わったあと、父の車に乗ってドラックストアへと向かっていた。
「着いたぞー」
「ありがとう」
「ところでなんでドラックストアによるんだ?何か買い忘れか?」
「恵ちゃんが虫に刺されたっぽくて」
「なるほどな、でも本人寝てるんですけど」
「あら?まぁ疲れたのね、私が買ってくるからお父さん待ってて」
「あいよ」
「はい、えぇ、えぇ、はい、分かりました」
――これは、夢?――
「えぇ、サン、、はい、、分かりました、はい、失礼します。」
「ん?」
声を出すと父が慌てた様子でこちらに振り向く。
「なんだ、起こしちゃったか」
「うんうん」
「そうか、そういやドラックストア着いたけどほしいものあるか?」
「とくにはーーーー」
脳裏によみがえる恵がまだブラック企業じゃなく普通のお店のバイトをしていたころ。
【店長、このポスターなんすか】
【なんか巷で人気なカードゲームらしいぞ】
【へー調べてみようって紙切れ一枚100万円!???】
――そうだ!なんちゃらカードがあの頃(恵が19歳の時)は何故か高騰してて昔(恵が19歳の頃に思った小学生の頃)に買っとけばよかったって後悔したんだった、なら今(今)なら――
「や、やっぱほしいのあったー」
「お、そ、そうかなら一緒に買いに行くか」
――投資だ、うんうん未来への投資――
「ところで何買うんだ?」
「なんちゃらカード」
「カード!??」
車を降りて父と一緒にドラックストアに入るも何か困った様子でうろうろしている母がいた。
「あれ?まだ見つけてなかったのか」
「お父さん、それがどこにあるか分からなくて」
「除菌コーナーじゃないか?」
「探したけど無かったの」
――虫さされ用の薬か、今虫多くなった季節だしイベントコーナーとかかな――
「こっちじゃない?」
「どこ?」
母が恵に誘導されるまま付いて行くとそこにはお目当ての塗り薬があった。
「ムヒ!あったー!!」
「へへ」
実はこのドラックストアは昔(恵が19歳の頃)にバイトをしていた店だった。
「恵が見つけたのか、凄いなぁ」
「もしかしたらこの子」
薬を買って車に乗り帰路についている最中、助手席に座っていた母が突然「してみた」と言い始めた。
――え?――
「なにが?」
――なにが?――
「初めてのお使いに応募してみたって言ったの!」
――は?――
「そうか、受かると良いな」
――ま、まぁそんなん受かるわけないか、あはははははは――
翌日、母のメールに「当選おめでとうございます。」というメッセージが来ることを、今の恵はまだ知らない。




