15.人生はフルマラソン
開始数分で一周差をつけられた恵だったが、走るのがきつすぎて下を向いていたので一周差をつけられたことに気づいておらず、紫音も前を向いて談笑しながら走っていたので途中「めぐみくん少しペース上げた?」と思いはしたものの、何気なく追いつき一周差をつけたが当人は一周差をつけたと思っていない。
「はぁ、はぁちょっとペース落としてぇ~」
「え?早かったかな?」
――やばい、吐く、絶対吐く!――
――やっぱ最初無理してたのかな?めぐみくんもおっちょこちょいなとこあるんだ――
2人がほぼ同じタイミングでラインを通り過ぎる。
恵(二週目)
紫音(三週目)
「はぁ、はぁ、はぁ、あと、なん、、しゅう?」
「えーっと七周走らないとだから~」
――やばい、視界がぼやけて――
「―――――周?とかかなってめぐみくん?大丈夫?」
――紫音が何言ってるかもわかんなくなってきた――
「おーい?聞いてる?お――――」
――ていうか俺ってこんな体力なかったっけ――
――あれは、俺がまだブラック企業に勤める前の事――
――俺は自分の人生にはあまり興味がなく、ナーナーで生きて働いて、家族が死んだら死のうかなと考えていたんだ――
――そんなある日――
【あんた就職先決まったの?】
【んーんー?】
【あのねぇ】
当時19歳の恵
【母さんと父さんが死んじゃったらあんたどうやって生きていくの?】
【んー!】
――俺はこの話が大嫌いだった――
――多分将来の事を考えるのがめんどくさかったからってのもあるんだけど、一番は家族が死ぬかもということを考えるのが嫌だったからだ――
――だから、そんな話が聞きたくなくて家を出て適当に就職したんだ――
――多分母さんも俺がこの話を聞くのが嫌いだったのを薄々感づいてたんだと思う――
――その証拠にいつも会話をめんどくさがる俺に最後、必ず「ごめんね」と言ってきた――
――その謝罪もとにかく嫌だった――
――子供の頃は何も考えず、この日常が退屈に感じるほどずっと続くものだと思っていたんだ、この永遠が現実だと――
――だから大雨や嵐が来たら非日常を感じて少しテンションが上がったりもした――
――そんなガキだったから現実を見るのが怖くて考えるのを放棄したんだ――
それがいけなかったのかと、ずっと考えてた。
「めぐみくん!」
走っている最中に肩を強く叩かれて少しバランスを崩す。
「おぉお?」
「もー、話聞いてた?」
「へぇ?はなし?」
「そう!引き算がわけわかんなくてお父さんに聞いたらまだ子供だなって言われて」
「は、はぁ」
――どうしよう、凄くどうでもいい!――
ラインを通り過ぎる。
恵(六週目)
紫音(七週目)
「それでー、ちゃんと教えて!って言ったら、いやや!自分で考えないとしおんのためにならん。ってひどくない?」
「そ、ソダネー」
――くそぉ、今何週目だ?しっかり数えておけばよかった――
掠れる目であたりを見回し、周囲の走ってる人のあるところを見る。
「はぁ、はぁ、はぁ」
――今六週目か?――
マラソンしてる時に、体は疲弊し脳にめぐらせるほどの酸素は十分に吸引できない状態でどうやって自分が正確に何週目かを数えるには、一目でわかる手で何週目かを数えるという秘儀を使う必要がある。
――まぁたまにその数が何週目の数なのか何周走ったの数なのかでごっちゃになって一周走り忘れたって人が続出したんだけど――
20メートル先にラインがあるのを目視する。
そのラインの内側にゴールした人専用の通路もある。
そう、お気づきのように2人は――――
「あと一周!!」
「ごーーーる!」
「「え?」」
別れることになった。




