12.悪天候
熱中症で倒れた恵だったが、三十分ほどで目を覚まし、開会式が終わるのを冷房の効いた保健室のソファーに腰を掛けながら眺めていた。
――ふーん、絶景かな絶景かな――
「どう?具合悪くない?」
「あ、大丈夫です!」
保健室にいる佐藤先生(女性)が誰かに電話をしながら恵の体調を気に掛ける。
「それじゃあ運動会出る?」
――!?――
「あ、マダアタマガイタイカモ」
「そっか、じゃお昼くらいまで安静にしとこうねそれともお母さん来てるから帰る?」
――ラッキー!今日は家でごろ寝だ!――
「は―――――」
「はい!」と元気よく返事をしようとするも窓の外でエール交換をしている応援団の中にいる紫音が目に入る。
「それじゃあ帰る支度しようか」
「あ、先生」
――あんなに頑張ってる顔見たら、気持ちよくごろ寝が出来ないや――
「ふー疲れた」
「お疲れ」
エール交換を終えて日差しがカンカンと降り注ぐもとに置かれた椅子に戻る紫音に水筒とタオルを渡す恵。
「あれ?もう大丈夫なの?」
「おかげさまでな、むしろ寒すぎて風邪ひきそうだった」
「はははっ、そうなんだ」
――あんな顔見たら――
「次のプログラム何?」
「えーッと次は」
――頑張ってるのに自分だけずる休みしたら一生後悔しそうだったから――
「玉入れだって」
「げっ!まだ腰痛くなるんだけどー」
「ガンバ!」
『次は一年生による、玉入れ競争です!一年生は準備してください。』
「呼ばれたから行こ!」
「仕方ない、いっちょ!大人の本気を見せますか」
「まだ子供でしょー」
その後、先ほどまで熱中症だったのに炎天下の中激しい運動をしたせいでまた熱中症で倒れたのであった。
「知り過ぎてる天井だ」
「恵くん!無理していくからだよ!」
――そうか、また熱中症で倒れたのか――
佐藤先生がアクエリと塩が降ってあるスイカを隣においてくれた。
「食べれたらでいいからね」
「あ、ありがとうございます」
――あれー?本当に大丈夫だったんだけどなんでまた倒れたんだろう――
そして蘇る以前の記憶。
【頭痛てぇぇ、熱計ろ】
ピピピッピピピッ
【三十七度七分、行けるな!】
ブラック企業に勤めて半年にして恵の常識が崩れたのであった。
――さすがに体がまだ幼いからか――
「今お母さんが荷物持ってくるからそれまで安静にね」
「はーい」
――ま!成長したら熱中症なんてへでもねえか!――
スイカを食べながら母を待つことに十分後。
「失礼します。恵起きました?」
「あ!お父さん起きましたよ、今スイカ食べてます」
「そうですか、ありがとうございます。恵―!」
――あら?母さんじゃなくてお父さんが来たか――
「ぱぱ!」
「帰るからスイカさっさと食べちゃいなさい」
「はーい...」
――なんだか複雑な気分だな――
しょんぼりとした顔をする恵の気持ちを理解し、今の現状を伝える。
「運動会中止になったから帰るんだぞ」
「はーー、い?」
――中止?なんで?――
「なんで?」
「外見て観ろ」
――外?――
窓の外を見ると先ほどまで色鮮やかな景色だったが一面真っ赤になっていた。
――砂嵐か――
「唐突の突風で皆一時間前に帰ったんだよ」
「一時間前?」
――今何時だ?――
時計を探し、壁に掛けられた秒針を見るとすでに午後二時だった。
「あれっ!?」
――まだ九時だったよな?――
「こんなに寝てたんだ…」
「分かったらさっさと帰るぞ!今ちょうど弱まってきたんだから」
――なら仕方ないか――
スイカを口いっぱいに頬張り、ランドセルを背負って佐藤先生に挨拶し、靴を履いて地下にある駐車場まで屋内を歩く。
「そういえばママは?」
「お母さん砂嵐に弱いから先帰ったよ」
――そうか、母さんって放射線アレルギーか――
――っていうより地球の血が濃いんだっけ――




