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冬日向に舞う風花~夏と冬の狭間に揺れる夕陽の物語~  作者: 翠月
2章 冬と孤独と雪解け水の雨【冬香と篠田 出会いの物語】
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9話 移りゆく紫陽花の桜色Ⅰ

待ち合わせ時間の10分前に到着した。


目的地の最寄り駅、改札口前にあるコンビニで微糖のホットコーヒーを買う。


コーヒーで手を温め、マフラーで口周りが外気で冷えないように隠す。


駅前のバスターミナルを眺めながら、彼の到着を待つ。


見上げると、澄んだ青空が一面を覆っていた。断片的な雲が散りばめられていて、うっすらとした白色が青色のアクセントとして、とても映える。


メッセージアプリを開いて、彼から連絡が来ていないかを確認する。


数分前に同じタイミングで、篠田くんと宮貴さんから立て続けに連絡が来ていたようだ。


宮貴さんは、教室で私のことを心配してくれた人だ。篠田くんの評価が低いせいか、私のことをとても気にかけてくれている。


複数のメッセージが一度に届いたものだから、何か大変なことでもあったのではないかと思い、少し焦りながら確認をする。


だが、取り越し苦労だったようだ。


メッセージを全て読むと、要するに篠田くんの遅刻が確定している、という内容が謝罪文と共に書かれていた。


宮貴さんのメッセージを見る限り、どうやら彼女が篠田くんのだらしなさを心配して、冷やかしも兼ねて連絡していたようだ。


そこで遅刻しているのに、私へメッセージを送れていないことを聞いて……という流れらしい。


そのときの情景が手に取るように想像がつく。きっと篠田くんはパニックになりながら、この断片的なメッセージを送ったんだろうな。


遅刻されている立場なのに、とても愉快な気分で、思わず一人で笑ってしまう。


到着したら、イジるついでに答え合わせをしよう。初デートで私を待たせているのだから、きっと許されるはずだ。


私がメッセージを既読にしてから5分くらい経つ。そろそろ篠田くんから電話が来てもおかしくない。


案の定、着信がかかってきた。一瞬だけ電話に出ず、彼に焦ってもらうイタズラをしようかと思ったけど、さすがに可哀想なので出てあげようか。


「もしもし。おはようございます、篠田くん」


『あ……!おはよう……!八木坂さんっ!』


息が荒い。カバンが揺れ、服が擦れる音が聞こえる。


遅刻を取り戻そうと必死に走っているのだろう。


「メッセージは見ました。あと何分くらいで到着しそうですか?」


『あっ……えっと……!今、から……だとっ、あと……!』


走りながら喋っているせいか、言葉が断片的で聞き取りづらい。


「わかりました。まずは落ち着いてください。走らなくていいですから。呼吸を整えて、飲み物でも飲んでから話をしてください」


騒がしい電話口の音が落ち着く。カバンから何かを取り出すような、ゴクゴクと飲み物を一気に飲み干す音が聞こえる。


「落ち着きましたか?」


『あぁっ……うん、落ち着いた。えっと、あと15分くらいかかるかも……』


ごめん、と落ち込みながら話す彼をなだめる。


「構いませんよ。むしろ中途半端に早く来ると時間を潰す方法がなくなるので。遅れるなら……そうですね、今から30分以上は遅刻してください」


『あ、うん……わかった。本当にごめん』


「それよりもケガをしたり、トラブルに巻き込まれたら元も子もないですから。ゆっくり落ち着いて来てください。私は近くのカフェで休んでますから。駅に到着したら連絡ください」


『マジでごめんなさい!』


「急がなくていいですから。待っていますね」


私は通話を切る。


少しぬるくなったコーヒーを口に含みながら、スマホで時間を確認する。


たぶん、初デートで遅刻されたら普通は怒るものなんだろう。だけど私は今、怒るどころか、それを楽しんでいる。


自分でも不思議な気分だけど……彼とのトラブルさえ、私にとってはデートの一部なんだと実感した。


どうやって遅刻をイジってあげようかと、あれこれ考えながら、軽い足取りでカフェに向かう。

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