第97話 反省会
決闘のイベントが全て終わって俺達魔法師団は打ち上げの会場へと向かう。
今日予約している酒場は酒も料理も美味しいと評判の良い店だ。
街を魔法師団の面々で歩いているとすれ違った人たちは驚く。
「魔法師団だ……」「かっけえ……」「グレース様ー!」
騎士団は闇ギルド討伐以降、街の人気者である。
「ドレイクー!! かっこよかったぞー!」
「ありがとう!!」
手を振って答える。
「ディアスー! 半額にしてやるから後で飲みに来いよ!!」
「……ああ、後でな」
力なく手を振るディアス先輩はずっとシュンとしている。
刀刃は割りと平気そうだ、何か良いことでもあったのか?
今もナーシャと楽しそうに話している。
腹減ったな―とか今日は何が食べれるのかを考えていたら、あっという間に酒場へ着いた。
「……冒険者の飯屋? 凄いシンプルな名前だな……」
「今日ここか! 魚料理が美味いんだよな! 食いまくるぞ!!」
ジノは来たことがあるらしい。
「腹減ったぜ……良い店っぽいな、入ろうぜ? 今日はお前が主役だ」
バアルが早く入りたそうにしている。
「そうだな、入るか」
先輩達は既に店へと入ってる、続いて俺とジノとバアルも店へと入った。
「広いな!」
俺が抱いた第一印象は広いだった。
確かに冒険者が好みそうな酒場だ。
席へと着いて店内を見渡す。
「変にお洒落じゃないからいいな」
「分かるな、王都はキラキラしすぎているからな……」
バアルもお洒落な所は苦手らしい。
「注目!」
ジークさんが皆の視線を集める。
「まずはディアス、ドレイク、刀刃、お疲れ様。三人のおかげでイベントは大成功だ。皆! 今日戦ってくれた三人に拍手を!」
パチパチパチと拍手の音が店内に響く。
「続いて新しい仲間の紹介だ! 今日から鍛冶師兼騎士として魔法師団に入る事となった! メイル・ランドロックだ!」
「ど、どーも! メイル・ランドロックです! 今日からお世話になります!!」
何も聞かされてなかったが、メイルが今日から魔法師団に……時期が早まったのは良いことだ。
皆の拍手で迎えられる。
「そして! 今日は飲み放題に食べ放題! 全てグレース様の奢りである!!」
「「「おおお!!!」」」
「では、グラスを持ってくれ!」
皆がグラスを持って立ち上がる。
「我らドラゴニア魔法師団の栄光に! 乾杯だ!!!」
「「「乾杯ー!!!」」」
席に座りビールを一口飲む。
「カァーッ! 冷えてて美味いな!!」
「おっさんかよ」
ジノはビールが大好物だ、そして酒に強いから何杯でもいけるらしい。
「くそっ! 負けてしまいました……」
ジョッキをテーブルに打ち付けて悔しがっている刀刃。
「ハイルさんは俺でも無理だ、あの場で戦えて、片腕で済んだだけでもいい方だ」
「それでも! 勝ちたかった!!」
少しだけ場が静まる。
「分かるぜ、刀刃よ。俺もそこの生意気な後輩に勝ちたかったぜ」
隣の席で飲んでいるディアス先輩が背中越しに声をかけてくる。
「ただ、勝敗は決して付いてないという事だ、この先いくらでもリベンジのチャンスはある」
「……ディアス先輩!!」
「次は負けねえぜ、覚えとけよ」
振り返って俺の眼を真っすぐに見てくる。
「明日にでもやりましょうか? 結果は同じですが」
「いいや、来年の御前試合だ、俺はそこでリベンジを果たす」
御前試合か……またあの闘技場で。
「グレース様! 今から予約しといてください!!」
「やる気は買うが、今日みたいな無様を晒すようなら来年は無しだ」
空気が凍った。
何もそこまで言わなくてもいいのにと誰もが思っていたが……。
「俺は勝つまで諦めませんよ……!! ここで逃げるくらいなら死んだ方がマシだ……!!」
フラム副団長はじっとディアス先輩を見ている。
「お前の力試しの為に団員がいるわけでは無い」
「!!」
「守ると決めたものを守り抜くための騎士団だ。それを忘れているようじゃ、ドレイクにはいつまで経っても勝てないだろうな……」
「俺は……!」
「馬鹿者! 外で一回頭を冷やしてこい」
「……はい」
ディアス先輩はビールを飲み干してから店の外へと去っていった。
「珍しいな、ディアスさんが真面目に感情的になるなんて」
ジノは肉を頬張りながら魚も口に入れようとしている。
「おいおい、順番に食えよ……」
バアルは若干引いている。
「だが、グレース様のいう事はもっともだな、守りたいものを見失ってただ闇雲に剣を振るうのは、騎士の在り方じゃねえ」
「同感だ、まああの先輩の事だ、すぐにケロッとして帰ってくるだろ」
俺は少し心配になった。
「俺、ちょっと行ってくるわ」
「ああ、外で喧嘩すんなよ?」
「分かってるよ」
俺はディアス先輩と話しをしに外へと出る。




